“女性の顔”を奪う 「アシッド・アタック」という卑劣な行為

Text: Jun Hirayama

2015.9.13

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「求愛」、「結婚」、「性行為」を断られた。そんな理由で、男性が理不尽に女性を恨み、「女性の一生」を台無しにしようとする事件がアジアや、アフリカで多発しているのをご存知だろうか。女性の顔や体に硫酸・塩酸・硝酸など劇物としての『酸(アシッド)』をかけ、火傷を負わせる行為。『アシッド・アタック』(酸攻撃)だ。

たとえ「アシッド・アタック」から生き延びたとしても、女性たちは「一生残る傷」を背負って生きていかなければならないのだ。日本ではあまり耳にしないかもしれないが、実は、この痛ましい事件がインド、バングラデシュ、アフガニスタン、パキスタン、カンボジアなどで多発している。この国々のなかでも、特に多いのが「インド」だと言われている。

インドにはびこる「男尊女卑」。18歳の少女に起きた悲劇

「片方の目は見えなくなってしまった。けれど助けは来ない」

そう語るのは、インドの北部ウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh) 州に住むの18歳の少女 レシュマさんだ。AFPによると、2014年の10月、レシュマさんは、義理の兄とその友人たちに押し倒され、「酸」を浴びせられて顔を失ったそうだ。

「警察は何も言わないし、何の捜査しない」とレシュマさんは訴える。北部の州では 「警察はあまり協力的でなく、警察が家族に告訴内容を変更するよう働きかけた事例も複数聞いている」そう「アシッド・アタック」の被害者を支援するNPO団体「メイク・ラブ・ノット・スカーズ」のアイヤルさんは語る。

機能していない、インド政府の“悪”対応

レシュマさんの事件ように、インドに長らくはびこる「アシッド・アタック」。しかし、インドの政府は、「アシッド・アタック」に対して、まったく機能をしていないそうだ。インドの最高裁判所は、酸攻撃の被害者には襲われた日から15日以内に10万ルピー(約18万円)の補償金を受け取る権利があるとする決定を下しているにもかかわらず、迅速に補償金を受け取った被害者はひとりもいないのだとか。また、全額補償を受けた人は100事例のうちわずか「2人」。レシュマさんの場合は5か月が過ぎても、一銭の支払いも受けれなかった。

2013年にインド政府は「アシッド・アタック」を一掃し、被害者への金銭的支援を改善するために対策を講じたのだが、インドの活動家らによると、状況はほとんど何も変わっていないのだとか。

クラウドファウンディングで「顔を取り戻す」

政府の機能のしなさに見兼ねたNPO団体「メイク・ラブ・ノット・スカーズ」は、2014年に、クラウドファンディングサイト「インディーゴーゴー(Indiegogo)」と通したレシュマさんの支援金を募るためのウェブサイトを立ち上げた。治療費の金額には届かないが、当初の目標は2200ドル(約24万円)に設定。同NPOは、「アシッド・アタック」という社会問題への関心が広まるようにと、ツイッターでインドの有名人たちにメッセージを送るなどSNSを活用しているが、先日はyoutubeに“ある動画”を配信した!

傷でなく、愛を作ろう。MAKE LOVE NOT SCARS

※動画が見られない方はこちら

「口紅はどこの店にも置いてあります。濃酸類もそうです」

「それが、女性が毎日、アシッドアタックの被害に遭っている理由なんです」

動画でそう語る、レシュマさん。彼女はこの動画を通し、硫酸や塩酸は、口紅やアイシャドウと同じくらい簡単に店で手に入ってしまうことを注意喚起している。

世界の女性を救うには?

「アシッド・アタック」という痛ましい事件が世界中で起こっていることを知らなかった人が多かったのではないか。実は、今年、日本でも、数件「アシッド・アタック」が起きているのだ。日本では数件かもしれないが、世界で合計すると、なんと『毎年1500人』もの女性が「アシッドアタック」の被害にあっていると、ウォールストリート・ジャーナルは述べている。この「アシッド・アタック」の問題の背景には、女性の差別や、人権問題が隠されているのは言わずもがなだ。

「男性は女性の人生を台無しにしてもいい。」

そんなことは決してあってはならないが、“男尊女卑”がいまだに根付く国が多く存在し、「アシッド・アタック」だけでなく、「レイプ」などの事件も多く起こっているのが現実だ。その現実を知った今。私たちは「募金」や「署名」など、何か行動に移せることがあるのではないだろうか。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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