男も一本眉メイクに、女装。26歳の写真家が、6000人を「悲劇の天才画家」の格好にさせた理由。


 

フリーダ・カーロというアーティストを知っているだろうか?鮮やかな色合いとトレードマークの一本眉が印象に残る彼女の肖像写真を見たことがある人は多いだろう。

Photo by Viaggio Routard
Photo by Viaggio Routard

 フリーダ・カーロは世界中の人に多大な影響を与えてきた。ブラジルの26歳のフォトグラファー、Camila Fontenele(カミーラ・フォンテネーレ)も例外ではない。カミーラは6000人以上の男性、女性、子どもをフリーダ・カーロに生まれ変わらせるという大規模なプロジェクト「Everyone Can Be Frida(みんなフリーダになれる)」を行ったのだ。一体、このプロジェクトにはどんな意味が込められていたのだろうか?

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 まずは、「顔は知っているけどどうしてフリーダ・カーロが有名なのか知らない」という人のために(筆者も実はこのプロジェクトを知るまでそうだった)簡単に彼女の説明をしたい。

 フリーダ・カーロは20世紀前半のメキシコを生きた女性画家で、本人の顔と鹿の融合など、超現実的世界観を持つ色鮮やかな自画像がトレードマーク。私生活もユニークで、その当時の女性としては異例にもときには男性の服装を着こなし、恋愛や性に対してもオープンな姿が現在にいたるまでフェミニストのアイコンとして賞賛される理由のひとつだろう。また、夫とオープンな関係にあったフリーダ・カーロは証明こそされていないものの、特定の女性と親密な関係にあったと言われており、そういった面でクィア(性的マイノリティ)の人々の共感を得ているのかもしれない。さらに、若い頃の交通事故をきっかけに生涯痛みと闘い続けた彼女の姿は映画や本などで幾度となく語り継がれ、多くの人々に勇気を与えている。

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 このフリーダ・カーロを題材にプロジェクトを行ったブラジル人フォトグラファー、カミーラが彼女のことを知ったのは学校の授業だったという。鮮やかな色に魅了されたカミーラはフリーダ・カーロの生涯について学び、説明できない精神的なコネクションを感じたそうだ。

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 晩年、ベッドに寝たきりになっても創作活動を止めなかったフリーダ・カーロの姿は「夢を追いかける大切さと強さ」を象徴しているとカミーラは思い、なぜだか分からないけれど、フリーダ・カーロについてのプロジェクトをすることが、私生活の一部としても仕事としても自分の使命だと感じたそう。

たくさんの痛みに苦しみながらも彼女(フリーダ・カーロ)は鮮やかな色を使って描き続け、カラフルな服を着続けた。まるでそれは「希望」を表していると思ったの。でも、私がフリーダから受けたインスピレーションは深すぎて言葉にすることができなかったから、写真で表現することにした。

 そして実現されたのが、「Everyone Can Be Frida(みんなフリーダになれる)」だった。たくさんのリサーチを重ね、フリーダ・カーロの人生をカミーラは自分なりに解釈しようとした。そして男性の服を着たり、バイセクシュアルの噂があったと知った彼女は、男性にフリーダ・カーロの格好をさせて撮影することをまず思いついたそうだ。そこから広がり、「みんなフリーダになれる」というコンセプトが生まる。

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 このプロジェクトがどう進展していくか分からなかったカミーラだが、制作をはじめて1年が過ぎた頃、勇気をだしてその時就ていた仕事を辞め、カメラ一本で生きていく決意をしたそうだ。

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 プロジェクトは二段階で行われた。一段階目は写真の展示。そして二段階目はその展示に用意したスタジオで、来客した人の中の希望者にその場でフリーダ・カーロ風の服を着せ撮影をするソーシャルエクスペリメント(社会実験)。

写真を撮る前に、被写体が自己を再認識する瞬間があって、それが私にとって特別な時間なんです。プロジェクトは「みんなフリーダになれる」と名付けたけれど、本当の目的は誰もが「自分のなりたい自分になれる」ということを気付かせること。そして人に思いやりの心を持ち、他人と親密な関係になることを恐れなくてもいいって気付かせること。

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 保守的な時代にも自分の信念を変えず自分らしく生きたフリーダ・カーロという、痛みにも自分の情熱を止めさせなかった強い女性の姿を通して、現代の人々にエールを送っているのが「みんなフリーダになれる」というプロジェクトなのだ。もしかしたら、カミーラがプロジェクトを続ける過程でそれまでの仕事を辞め、カメラ一本で生きていくことを決意したのもその影響なのかもしれない。

 「自分らしく生きる」、「情熱をどんな状況でも追い続ける」、これらのメッセージはフリーダ・カーロ死後60年以上たつ現在でも、多くの人々の心を動かすだろう。

All photos by Camila Fontenele unless otherwise stated.
Text by Noemi Minami
ーBe inspired!

 

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