「エロい自撮り」をSNSにあえてアップ。自分を愛しネットで共有する“自分に夢中なアーティスト”の哲学|GOOD ART GALLERY #003

Text: Noemi Minami

Artwork: ©Kitty Chrystal

2017.9.18

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SNSの普及と共に、とにかくインターネットでよく目にするようになったのが自撮り。筆者が中学生の頃(2000年代前半)は、自撮りをしている子がいると「うわ、ナルシスト…」と批判の的だったような気がするから、時代が変わったのを感じる。

とはいえ、自撮り、そのなかでも自分のセクシーな自撮りをSNSを頻繁にあげる子に対しては今でも批判的な目は存在しているのではないだろうか。

社会に問題提示をしたり、意識を変えてくれるような作品を作る社会派アーティストを毎月紹介するBe inspired!の新シリーズGOOD ART GALLERY。

今回は、煙たがれることもある「セクシーな自撮り」で普遍的で重要なメッセージを送る、メルボルンのアーティストを紹介したい。

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オーストラリアのメルボルンを拠点とするイラストレーター、Kitty Chrystal(キティ・クリスタル)。キティは自身を男性とも女性ともカテゴライズしないジェンダー・クィアである。

そんなキティの作品は、体やセクシュアリティを題材としたものが多く、SNSには「セクシーな自撮り」が数多くあげられている。どうしてアートを使って「自分の姿」をインターネットで他人と共有するのか、作品や自撮りの裏にはどんな思いが込められているのか伺ってみた。

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ーあなたは誰?

キティ・クリスタル。オーストラリア、メルボルン出身の24歳のノンバイナリー(どの性別にも自身をカテゴライズしない人)のビジュアルアーティストであり、ライター。今はアーティストビザでベルリンに住んでる!

ーどんなアートを作っているの?

もともとは大学で勉強していた詩とショートフィクションの作家活動がメインだった。でも昔から絵を描くのは好きで、大学時代も手書きとデジタルを融合させてイラスト制作をしていたよ。最近は絵画にも挑戦しはじめて、自分でもこれはエキサイティングな変化だと思ってる。ほとんどの作品は体や自分のポートレート、友達、夢の中にでてきた人の姿。

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ーアートを通してどんなことを世界に伝えたい?

自分にとってアートとは自分の体やセクシュアリティ、ジェンダーや人間関係そして悲しみを理解するための方法。そういったものが自分を混乱させたり、苦しめるときにアートを作ることが逃げ道となって、居心地の良い場所を生み出してくれる。この居心地のいい場所を自分のアートを見てくれる人にも与えられるようになりたい。自分が自分らしくいられる場所にアートを通して招待してあげたいの。

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ー社会のなかのアートの役割ってなんだと思う?

アートは他者と繋がる方法。自分のストーリーを、歴史を伝える方法。“現実世界”で相手にされない、無視されてしまうことにスポットライトを当てるもの。いいアートには人の考え方を変える力があると思う。

ーアーティストになっていなかったら何をしていたと思う?

困っている人を助ける仕事に就いていたと思う。社会福祉系か、カウンセラーか教育者かな。自分にインスピレーションを与えてくれた生涯の憧れの人は学校の先生たちだから。

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ー同世代の子に今一番伝えたいことは?

自分らしく生きて。「自分らしい」とはどういう意味か、まず自分で見つけること。そしてその通り生きること。他人にどう思われてもね。自分が納得のいかない制度に対しては、自分の声を見つけて、反抗して!(ありきたりかもしれないけど、本当にこれが重要だと思ってる!)

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ーあなたの人生のモットーは?

日本語で上手く訳せるのかな…友達といつも「You do you, babe(自分の思う通りやって、ベイブ)」って言ってる。他人のことは気にせず、自分が信じることを続けるのがモットーだよ。

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性やジェンダーの多様化がやっと認められつつあるとはいえ、テレビや広告でみるのは昔ながらの異性カップルばかり。「SNSのせいで自分のことで頭がいっぱいの現代の若者」というシナリオの裏には、SNSの「社会的マイノリティの比較的安全な表現の場」、という側面がある。自撮りは賛否両論かもしれないが、自分を認め、愛し、オープンに他人とSNSで共有すると考えたら、ポジティブなことだとは思えてこないだろうか。

Kitty Chrystal(キティ・クリスタル)

WebsiteInstagram

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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