男の子か女の子か、どちらかじゃないとダメって誰が決めたの?21歳の「性別のない」アーティスト|GOOD ART GALLERY #009

Text: Noemi Minami

Artwork: ©Akina Arakaki unless otherwise stated.

2017.12.15

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男と女。長い歴史において、性別はその二つで語られることがほとんどだった。

それも今変わろうとしている。

社会派なアーティストを紹介するBe inspired!の連載GOOD ART GALLERYでは今回、男でも女でもないagender(エイジェンダー)のアーティスト、akina arakakiを紹介。

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Photo by Carolina Martinez

まず最初に確認しておきたい「性別」というコンセプト。社会のなかでは一般的に生まれてきた体と心の性別は一致していることが前提で話されることが多かったが、それは間違い。

男性の体に生まれてきても、女性の心を持つ人や、女性の体に生まれてきても、男性の心を持つ人たちがいる。体とのギャップに違和感を感じ、身体的治療を望む人が「性同一障害」と呼ばれたりするが、体と心の性別が一致していない人が必ずしも手術をしたいわけではない。手術を必要とする人、しない人を総称してトランスジェンダーと呼んだりする。

「ジェンダー」という言葉は日本語でいうところの性別を意味するが、日本語の「性別」にはないニュアンスが含まれる。「社会的・文化的に形成された性別」を意味するからだ。つまり、ジェンダーについて話すときに体の性別は関係ない。

今回紹介するAkinaのジェンダーは、男性・女性どちらにも当てはまらないエイジェンダー(ジェンダーがないというような意味合いを持つ)と呼ばれる。日系アルゼンチン人であり、このエイジェンダーであるAkinaは言葉では表せない思いや自身のアイデンティティをアートを介して表現する。

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ーまずはじめにあなたについて少し教えてくれますか?

本名はakina matayoshi。でもSNSでは母方の苗字からとってarakakiって名乗ってる。アルゼンチンのブエノスアイレス出身。母方の親戚がブラジルのサンパウロ出身だからそこを拠点にしたりもする。先祖は沖縄の人で、つまり日系。三代目だよ。前はビジュアルアートを勉強してたけど、今はグラフィックデザインを勉強してる。

ーあなたのアートについて教えてくれますか?

写真(デジタルと35mm)、デジタルコラージュ、絵、ポエムが基本。ポートレート写真をデジタルで加工したり、インターネットで見つけた面白い画像のコラージュを加えたりもする。もしくは、全く手を加えない写真。作品のほとんどが自分について、自分がどう感じているか、考えているかについてで、あとは自分が好きな場所とかなんでも。写真は他のビジュアルアートの形では表せないような自己表現をさせてくれると思ってる。テーマは時間の流れについてとか、性別について、人が自分をどう見るか、彼らが何を考えているか、どれだけの人が性別の多様性に対して寛容ではないかについて。または、自分の家族、日系であることについて。日本とアルゼンチンのアーティストにとても影響を受けていて、たとえば川内倫子(かわうちりんこ)とか、アレハンドラ・ピサルニク、パウラ・アパリシオ、荒木経惟(あらきのぶよし)、浅野いにおとか。

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ーエイジェンダーの意味をあなたの言葉で教えてもらえますか?

まず言いたいのは、女性と男性という二極を超えてジェンダーにはたくさんあるってこと。恋愛や性的趣向はまた別の話ね。好む色や、服、髪型もジェンダーと関係ない。そのなかでもエイジェンダーは既存のどのジェンダーにも属していないということ。自分の名前(自分の名前が自分の名前だとは思えないけど)や日系だということ、沖縄に先祖がいるけれど違う国に生きているということと自分のアイデンティの繋がりについても特別な感情を持ってる。

ーエイジェンダーであることとはどんな感じですか?

1年前に大学のためにジョン・ピーター・バージャーの視覚とメディアという本を読んだ。美術史についての本だけど、そのなかの文章が心に突き刺さった。「裸はドレスの一部である」。確か、こんな感じだった。これは自分についてうまく説明できてるフレーズだと思ったんだよね。社会やメディアや人々は個人が「どんな見た目じゃないといけないか」「どんな風に感じるべきか」「付き合いのなかでどんな人でいるべきか」を見た目で判断する。誰も裸になることはできない。それはドレスの一部だから(自分の性別を理由に人から期待されることが必ずある)。このフレーズがあった章に(記憶力悪いからたぶんだけど)、女性がどう社会に見られるかによって、時代ごとに絵が異なるって話もあった。

でも最初はエイジェンダーでいることは辛くて混乱した。人に「彼女は」って女性の三人称を使われるたびに精神的にも身体的にも荒らされたような気持ちになった。家族がサポートしてくれないのも、苦痛。でも自分について知らなかったことを知れたから幸せと言えるかもしれない。社会に押し付けられることなく、自分らしくいられていると思うし。

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ー日本ではエイジェンダーっていうコンセプトは広がってないけれど、これから認識が増えていくことを願ってます。新しい概念に抵抗を示してしまう人もいるかもしれないけど、そういう人たちにメッセージはありますか?

オープンな心を持つことは重要だよ。でも一番大切なのは尊敬の心を持つこと。

akina arakaki

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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