3作目:「未成年で親に売られる少女たち」を救うため、“違法ラップ”で「古きしきたり」と闘う16歳の少女。|GOOD CINEMA PICKS


 

兄が結婚するための資金を稼ぐために、母親が自分を“売ろう”としていると知ってしまったらあなたはどうするだろうか?

映画には人を変える力がある。これまで知らなかった世界に連れて行ってくれる。ストーリーを通してこれまで出会ったことのない価値観に感化される。今まで見たことのない美しい景色に心動かされる。映画には無限の可能性がある。

社会問題に焦点を当てた映画を紹介する『GOOD CINEMA PICKS』で今回は、母親に100万円ぐらいで売られるところをやっとの思いで逃げ、ラッパーになる夢を追い続けているある少女を追ったドキュメンタリー『ソニータ』をPICK。

実の母親によって売り出された花嫁、ソニータ。

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 2003年以降タリバンによるテロや攻撃が増加するアフガニスタンから、イランへと逃れた少女ソニータ。彼女は郊外の貧困地域に拠点を置く、滞在許可なく不法滞在する難民の子どもたちに教育を施す支援団体で勉強しながら、“ラッパー”になることを夢見ている。しかし、アフガニスタンに残った母は、兄の結婚資金を調達するために、16歳になったソニータを無理やり知らない男性と結婚させようとする。親に言われるがままに結婚することがアフガニスタンの古くからのしきたりとなっているのだ。保護施設の友達は次々と両親に強制結婚を強いられるなか、どうしても知らないおじさんなんかと結婚したくないソニータは、耐えきれずドキュメンタリーの一線を越えソニータを手助ける監督の支援を受けながら、自分の運命から逃げ出し、ラッパーとしての夢を実現しようと奮闘する。それだけが彼女の現実を変えてくれると信じて。

 彼女が自身や友達の「強制結婚」に対する気持ちを代弁するように歌った『brides for sale(売り出し中の花嫁)』は世界中に大きなショックを与えた。欧米のメディアからも注目され、順調に見えた彼女のキャリアにもすぐ影が差す。イランは、女性が公共の場で歌うことが法律で禁止されているため信頼していた人までもが彼女から離れてったのだ…。

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命をかけたラップ。

 ソニータの壮絶な人生が現実に起こっていることだと信じるのには時間がかかるかもしれない。テロリストに目の前で家族が殺され、実の母親に売られそうになり、それでも平等を訴えるために国が禁止するラッパーとしての活動を貫き通す彼女の勇気と正義感は並大抵のものではない。

 アフガニスタン独立人権委員会によると、正確な統計を取ることは難しいものの18未満の約半数の女性が結婚すると言われ、60〜80%が親が決めた相手と強制的に結婚させられている。

 映画のなかで、支援施設にいた女の子の一人が強制的に結婚させられた男性がまだ19歳だから「幸運」だと他の女の子たちが羨ましがっているのが印象的だった。「私たちの相手は40歳なのに」。まだ18歳にもならない少女たちが日常的な問題としてにそんな不満をこぼしている姿を見るのは簡単ではなかった。

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 「文化やしきたりは他文化の人間が口出すべきではない」という意見も多い。確かに繊細な問題ではある。しかしソニータたちのように「親に売られそうになる子どもたち」を生むようなしきたりは「伝統ですから」の一言では、すまされない。

 そんな単純な話ではないかもしれないが、根本的な共通理解として世界に既存のしきたりを続けるかどうかは、「人権」に基準を置くべきだとだけははっきりと言えるだろう。

 2017年10月21日(土)から、アップリンク渋谷他にて『ソニータ』ロードショー 。詳しくはこちらから。

『ソニータ』

監督:ロクサレ・ガエム・マガミ

出演:ソニータ・アリザデ、ロクサレ・ガエム・マガミ

製作総指揮:ゲルト・ハーク

音楽:ソニータ・アリザデ、セパンダマズ・エラヒ・シラジ

制作:TAG/TRAUM

共同製作:INTERMEZZO FILM、ロクサレ・ガエム・マガミ、NDR、RTS、SRG SSR、DR

原題:Sonita

配給:ユナイテッドピープル

2015年 / 91分 / スイス・ドイツ・イラン

後援:国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所、Girl Power

http://www.unitedpeople.jp/sonita/

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All photos © Behrouz Badrouj
Text by Noemi Minami
ーBe inspired!

 

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