「地元の未来は市民が決める」。原風景を後世に残すために立ち上がった若者が明かした「横浜市の矛盾」。


小さい頃によく遊んでいた空き地にマンションが建ったり、母校が廃校になり取り壊されたり、近所の緑地が商業施設になることが決定したり…。

あなたは愛着のある“思い出の場所”を失ったことがあるだろうか?

「地元の思い出の場所が失われてしまうかもしれない」

今、そんな問題に直面している人々が神奈川県横浜市に存在する。

“横浜のチベット”という異名を持つほど、自然が豊かな横浜市最大の緑地、“瀬上沢(せがみさわ)”。多くのハマっ子(横浜の子ども)たちにとって、思い出の場所でもあるこの場所が、現在「横浜市政」と「(株)東急建設」によって大規模な開発が企てられているというのだ。

その計画を知り、少しでも多くの自然を未来に残すため、横浜市民から6万人の署名を集める緊急活動「Live Green Yokohama(横浜みどりみらい実行委員会が運営)」を立ち上げ、奮闘する鶴巻さん(28)と田中さん(36)に今回Be inspired!は出会った。

Photo by 撮影者
横浜みどりみらい実行委員会の田中さんと鶴巻さん

普段生活していて、社会に変だと感じることに「変だ!」と声を上げる若き二人のハマっ子に、「原風景を残す意義」について聞いた。

“横浜のチベット”。満天のホタルが臨める「瀬上沢」とは?

width="100%"
Photo by Live Green Yokohama

横浜市南部の栄区って“横浜のチベット”って言われるくらい市内の中でも自然が豊かな地域で、その地域にある里山「瀬上沢」は、夏になると地元以外の人も足を運ぶくらい蛍が綺麗に見られるところなんです。

 そう瀬上沢のことを教えてくれた田中さん。彼女にとって瀬上沢は、「栗を拾ったり、夜まで友達と遊んだり…。私にとって親から離れて大人の階段を昇る場所だった」と語る。

 “横浜のチベット”。そう呼ばれる瀬上沢は、夏になると満天の星ならぬ、満天のホタルが空に広がるほど、綺麗な緑と水が残っており、地元民にはもちろん、地元民以外の人にも愛される里山なのだという。

width="100%"
Photo by Live Green Yokohama

「毎年夏になると、父親とクヌギの木にカブトムシやクワガタを捕まえに行った」。そう子どもの頃のエピソードを教えてくれた、瀬上沢のある横浜市の港南区が地元の鶴巻さん。

 彼らが署名活動「Live Green Yokohama」をする理由は「子どもの頃の思い出の詰まった原風景を守りたい」だけではない。

width="100%"

「横浜市の矛盾」が詰まった横浜みどり税。

 ほかの理由。それは横浜市に存在するユニークな税金「横浜みどり税」の使い道。

「横浜みどり税は、前の市長が3年前から始めたため、新しく横浜市に移り住んできた人は、知らずに支払っている人も多い」と田中さんは語る。それほど広く認知はされていない税金だというが、「樹林地を守る」「農地を守る」「緑をつくる」という3つを目指し、市内の緑の減少に歯止めをかけ、緑豊かな街を次世代に継承するために徴収している意義のある税金でもあるのだ。

 筆者はそんな素晴らしい税金が存在することにも驚いたが、「横浜市民全員がみどり税を支払ってるのに、横浜から緑地の面積が減っているって変だと思う」という鶴巻さんの的確な指摘が浮き彫りにした横浜市の抱える矛盾の存在にはもっと驚いた。

width="100%"
Photo by Live Green Yokohama

空き家も増えてるし、人口も減っている。時代が変わっているんだから、土地があれば住宅や商業施設などの建物を建てればいいってもんじゃないと思う。

 現在横浜市は、緑の減少のほかにも、少子高齢化、空き家の増加(1割越え)、人口の急激な減少がささやかれているのだ。「自然を守りたい」だけでなく、「みどり税の矛盾」を知った彼らがとった行動は「諦めて黙ること」でも、「怒りに任せて反対活動する」わけでもない。「市長と対話する場がほしい。そして市民の声を届けたいから、署名を集める」ということだった。

width="100%"

平和でクリエイティブに。若者がまちづくりに参画すべき理由。

 横浜市に長く住む人たちによって、瀬上沢を守るための活動が始まったのは今から10年前。

瀬上沢を保全をするために、2007年から開発の“反対活動”が始まったが、現在の活動「Live Green Yokohama」は、長く住む人たちに協力してもらいながら、10年前とは少し違ったアプローチで取り組んでいます。

 そう口を開いたのは鶴巻さん。瀬上沢の開発やみどり税の矛盾に対して、「おかしい!」「反対だ!」とただ声を上げるのではなく、住民投票条例制定のための署名活動という地道にみえて、最も建設的な方法で横浜市の未来を切り開いているという。なぜそんなにも署名が建設的なのだろうか?

横浜市長と直接対話ができる機会がもらえるからです。横浜みどりみらい実行委員会は横浜市民として、まず市長と対話の場をもち、横浜市の未来を市政、事業者((株)東急建設)、市民と一緒につくりたいと考えています。現在「上郷・瀬上沢地区」における開発可否の決定権は市長にありますが、市民有権者の1/50以上(約6万人以上)の法定署名を集める事で、住民投票条例の制定を横浜市に求めることができるんです。

僕たちは決して市政、事業者とバトルしたいわけではないんです。街宣の時も若い人が話したり、声のトーンを怖くないようにしたり、あくまでも僕たちは「平和的なアプローチ」を心がけています。

width="100%"
Photo by Live Green Yokohama

 若い世代がこういった自分の街を守る活動に参加することのメリットを聞くと、田中さんからこう返ってきた。

世代を超えて共感している「地元の自然を残したい」という思いに基づいた活動をしっかり後世に受け継いでいけること。そして、私自身も元デザイナーなので制作物をデザインをしたり、若いクリエイターさんとコラボしたり。アウトプットをカッコよくできることも、若者が参画するメリットとしてあげられるかな。

 現在、世代を超えて「約8,000人」の横浜市民が、瀬上沢を残すための署名をしている。さらに約4,200人の受任者(署名を集める人)が署名簿を持ち、署名収集をしている。彼らの目標は12月10日までに6万人の署名を集めること。多くの市民の署名がまだまだ必要だが、鶴巻さんも田中さんも「署名期間が終わっても今の活動はライフワークとして続けていきたい」と口を揃えた。

width="100%"
Photo by 横浜のみどりを未来につなぐ実行委員会

忙しいかもしれないけど、若い世代がもっと声を上げてほしい。

今回の署名の結果はどうあれ、僕たちの活動を20~30代の同世代の人たちに知ってもらえたら嬉しい。社会に対して変だと感じることに、「変だ!」と声をあげれば、世代や職業関係なく共感する人が集まって協力してくれる。普段の生活で忙しいかもしれないけど、自分の街は、若い世代が残していかないといけないってことが伝わったらいいな。

 最後に彼らは同世代に向けてこうメッセージを残した。若い人は、仕事にバイト、学校、遊びなどで普段の生活が忙しいし、行政や企業に対して声を上げるなんて「自分には無理」とか「めんどくさいよ」って思う人も多いだろう。

 でも、彼らのようにもしあなたが後世に残したい「思い出の場所」があるのなら、今「残したい」と主張しないと、自然は減り、どこにでもあるようなお店で溢れ、どんどん原風景は失われてしまうばかりだ。手遅れになる前に「誰かがやってくれる」という考えを捨てるべきなのかもしれない。

***

Live Green Yokohama

WebsiteFacebook問い合わせ

width="100%"

All photos by Jun Hirayama unless otherwise stated.
Text by Jun Hirayama
ーBe inspired!

 

この記事を読んでいる人はこの記事も読んでいます!
「日本の銀行が環境破壊に加担する事実」を知らない日本人へ。25歳のアクティビストが提案する解決策とは
  「クライメート・ジャスティス」という概念を知っているだろうか。 先進国に住む日本人なら知っていてほしい「気候の公平性」と訳されるこの言葉は、先進国に暮らす私たちが、...

Untitled design(86)
この記事が気にいったら
いいね!しよう
Be inspired!の最新情報をお届けします