タトゥーに対して“理不尽な偏見”が根付く日本で、若者3人に「それでもタトゥーを入れる理由」を聞いた。


 

中学に入ったばっかの頃、校則が厳しい学校に通っている友達が数多くのルールのひとつに「黒と茶色以外の髪ゴムを使っちゃいけない」というのがあると言っていた。意味が分からない、と混乱したのを覚えている。なんのためのルールなのだろう、どうして青やピンクではいけないの?、といくら考えても納得のできる理由が思いつかなかった。

現代の日本社会のタトゥーへの視線はそれと似たような「中身のないルール」なのではないだろうか。もちろん、歴史のなかで刺青が罪人やヤクザと関連されてきたのは事実だ。でもタトゥーを入れている人たちが全員そういったことと関係があるわけではないことは、誰もが分かっていると思う。それでもタトゥーを入れている人たちは、彼らがどんな人間か、何をしているのかは関係なく「タトゥーを入れているという事実」だけで偏見を持たれることがある。

今回Be inspired!はタトゥーを入れている日本人の若者3人に日本社会のタトゥーに対するネガティブな視線に関してどう思っているのか、それでもどうしてタトゥーを入れるのか、聞いてみた。

あこたこ(25歳)イラストレーター/映像編集者/グラフィックデザイナー

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ー初めてのタトゥーは何歳のときですか?今何個ありますか?

18歳のとき、当時住んでいたニュージーランドで。小さいのも含めて20個くらい。

ータトゥーがあるのが理由で、嫌な思いをしたことはありますか?

嫌な思いというか、驚いたことがあります。高校時代を過ごし、初めてのタトゥーを入れた場所でもあるニュージーランドから日本に帰国して以来初めて大きいプール施設にいくことになったときのことです。その当時はまだ腰に2cmくらいのワンポイントタトゥーしか入っていなかったのですが、入場していざ水に入るというときに、数名の警備員さんが大声で怒鳴りながら迫ってきて、私は何が起こっているか分からず呆然としていると「今すぐ退場しないと警察よびますよ!」とかなり大人数の前で言われたので困っちゃいました(笑)もちろん決まりを知らなかった私が悪いのですが、水着をずらせば隠せる程度のものだったのもあり、見た目がどうのこうのの問題ではなく、タトゥーが入ってるという事実がダメなのだと実感しました。ワンポイントタトゥーだけでこのような体験をし、その後にタトゥーを入れ続けた身なので、ある程度は承知の上で、嫌な思いはしていないですが、「なぜ!?」とはよく思います。タトゥーへの賛否でヒステリックになる方は多いですが、タトゥーなんて勝手に彫ればいい(放置的な意味ではなく)だけだと思います。

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ー仕事をする上で、タトゥーがあって不利だなと感じることはありますか?

仕事はオフィスにこもって制作することがほとんどなので、特に不利だと感じることはないです。でも働き始めた頃はタトゥーに対してどう思われるか確信がなかったので、どんなに暑くても長袖を着て過ごしていました。私の会社は海外のクライアントがメインだったり、海外に住んでいたという同僚が多く、更に他にもタトゥーを入れている先輩がいるようなリベラルな空気のオフィスです。なので今は積極的に見せることはありませんが、タトゥーを隠す必要性は感じていませんし、みんなは私が働き始めた頃から明らかに暑い時でも長袖を着ていたため気づいていたそうです(笑)

ーそれでもどうしてタトゥーに対してネガティブな印象を持つ人がいるんだと思いますか?

ネガティブな意見として1番聞くのは、ヤクザや昔の罪人のシンボルだから、というのが多く、日本で持たれてきた昔のイメージが上書きされないまま、根拠のない偏見として残ってしまっているのだと思います。今の時代で「ヤクザ=刺青」が入っているとステレオタイプに縛られていることにもっと危機感を持つべきだと思います。タトゥーがタブーとされているのは日本だけではないですし、日本の常識を他国の常識に合わせる必要もないのかもしれないですが、自分と違った文化やバックグラウンドを持つ人々と出会うなか、違う価値観を持つ人に対して、理解しようとせずに攻撃する態度をとることは自分の視野を広げる機会を失うことになってしまうと思います。

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ーそれでもどうしてタトゥーをいれるのですか?タトゥーの魅力とは?

タトゥーにはビジュアル的な魅力だけではなく、言葉にできない不思議な魅力があると思います。昔から漠然とタトゥーに関心がありましたが、大学のときにその魅力の理由を知りたくて、民族タトゥーをテーマにした課題に取り組み、何千年も前から施されていたタトゥーが持つスピリチュアルな世界観に魅了されました。私はタトゥーが好きなのでタトゥーを入れています。

Instagram:@akotakotako

大野雄介(26歳)シンガソングライター

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ー初めてのタトゥーは何歳のときですか?今何個ありますか?

20歳。20個弱くらい?

ータトゥーがあるのが理由で、嫌な思いをしたことはありますか?

嫌な思いは一度もないです。後悔や後ろめたさを感じたこともないです。

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ー仕事をする上で、タトゥーがあって不利だなと感じることはありますか?

あんまり感じたことはないですが、仕事する上でというか仕事を決めるときにはやはり難しいですね。タトゥーNGが多かったり、隠せと言われたり。

ーどうしてタトゥーに対してネガティブな印象を持つ人がいるんだと思いますか?

やっぱり純粋にヤクザのイメージがあって、「タトゥーが入っている人=怖い」ってものが代々受け継がれているから、みんな知ろうとしないというか、受け入れようとしないのかも。聞いた話だと各地方の昔の漁師は溺死しても、身内に自分が自分だと分かるように、全身にタトゥーを彫っていたそう。そのような風潮があった地域は今でも温泉などにも普通に入れるし、まずタトゥーを邪険に扱ってはいない、ごく自然なものとして受け入れている。イメージって怖いですね。(笑) だからこそ、強面の方がすっごいたくさんタトゥーを彫って、オラオラしてるのはやめて欲しいなあ。(笑) 確かにタトゥーは強さの証明であったりするけど、自分らで首を絞めてると思うね。日本の刺青は歌舞伎とかとも深く関わりがあるし、ヤクザが彫っている理由も当時の政策が関わっていたり。ちゃんと歴史があるから、そういうものを知れば印象も変わるんじゃないかな。

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ーそれでもどうしてタトゥーをいれるのですか?タトゥーの魅力とは?

寂しいから。って言うのは冗談で…(笑)それこそ俺がタトゥーの魅力だと思っている見えないもの(想いとかことばとか)に形を与えてくれるから彫ってます。口に出したり、考えたりするだけじゃなくて、やっぱり形があるだけで、目に見えるだけで存在感も説得力も生まれる。タトゥーとして彫ると何だか色々なものとちゃんと向き合える気がするんです。だから忘れたくないことだったり、自分らしさのシンボルだったり、悲しいこと嬉しいこと喜び怒り全部。なんというか己の生き様です。

HP:https://www.onoyusuke.info/
Instagram:@y0uy0u

Misa(28歳)フォトグラファー

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ー初めてのタトゥーは何歳のときですか?今何個ありますか?

ファーストタトゥーは24歳のときで、現在は8個あります。

ータトゥーがあるのが理由で、嫌な思いをしたことはありますか?

先日道を歩いていると、私の後ろを歩いている年配の女性に、「なぜ大金を払って痛い思いをしてまでもタトゥーをいれるのか理解できない」などと罵られたことです。タトゥーに関して人それぞれの見解はあると思いますが、タトゥーを入れている人はloser(負け犬)だというようなものの言いようをされたことに、落胆しました。
 
また、まだ小さいワンポイントタトゥーしかなかったときに、温泉に行きました。もちろん温泉でタトゥーは受け入れられていませんが、他のお客さんに私を冷たい目で見ながらこそこそ話をされた時にはいい思いはしませんでした。

ー仕事をする上で、タトゥーがあって不利だなと感じることはありますか?

私の仕事上、タトゥーがあることで不便に感じることは全くありません。むしろ、タトゥーを褒めてくれたり、タトゥーが話のきっかけになって、その話題で話が弾むことの方が多いです。仕事でクリエイティブな人と会うことが多いので、タトゥーを入れている人も多いですし、タトゥーに関して偏見を持っている人は少ないと感じます。

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ーどうしてタトゥーに対してネガティブな印象を持つ人がいるんだと思いますか?

やはり日本では、「刺青=ヤクザ」という先入観が根強く植えつけられていると思います。そこから、「恐い」「危ない」というネガティブな印象を持つ人は少なからずいると思います。また、タトゥーの自傷行為性、日本においてタトゥーがメインストリームではないことからも上記のような印象を与えると思います。

さらに、日本では温泉やプールで刺青タトゥーは禁止されていて、保守的でルールを守る日本人からすると、「禁止されているもの=ネガティブなもの」というイメージを受け取るのではないしょうか。

ーそれでもどうしてタトゥーをいれるのですか?タトゥーの魅力とは?

私がタトゥーを入れることに大きな意味はありません。意味を持ってタトゥーを入れるというよりは、ファッションの一環という意識が強いです。大抵の場合、好きなデザインが最初にあって、体の「この部分にこのデザインがあればかわいいな」という考えでタトゥーを入れます。

タトゥーの魅力は沢山ありますが、そのひとつとして、一生消えないこと。今現在の私が好きだと思ったデザインを、体に彫って残しておく。思い出を写真に撮って残すような感じです。

Instagram :@misa_kusakabe
 
 

 今回お話を聞いた3人は、比較的に外見に自由が許されるクリエイティブな業種に就ているというところは共通していた。タトゥーの有無が就職に影響するという事実も関係しているのかもしれない。それ以外は、それぞれ違う理由で、違う思いを持ってタトゥーを入れている。一つひとつのタトゥーに意味を持って入れている人もいれば、そうでない人もいる。

 もしあなたがタトゥーに対してネガティブなイメージを持っているのならば、それも個人の自由だ。「一生入れない」と決めているのならばそれでもいい。筆者も興味はあるが恐らく一生入れないと思う。問題は、違う考えを持っている人たちに対してどんな態度をとるか、なのだと思う。その人の考えによって傷つく人がいない限り、「自分が好きではないから」「賛同できないから」といって、彼らに攻撃的な態度を示したり、ルールを押し付けるのは間違っている。これは、人種、性的趣向、宗教、なんにでも言えることである。全ての人が平等で生きやすい社会を実現するのためには「たとえ理解はできなくても受け入れる」という考えがとても重要になってくるのではないだろうか。

All photos and text by Noemi Minami
ーBe inspired!

 

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