16店目:「日本人の魚の食べ方には偏りがある」。食べても地球を傷つけない、千歳烏山のサステナブルシーフードレストラン、BLUE。| フーディーなBi編集部オススメ『TOKYO GOOD FOOD』


 

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フェアトレード、ダイレクトトレード、オーガニック、ベジタリアン、ビーガン、ゼロウェイスト、昆虫食、未来食…。東京の街に日々増えていく、お腹をただ満たすだけではない「思想の詰まった飲食店」。

「ビーガンの友達と、ビーガンメニューのあるレストランにいきたい」、「サードウェーブの先を行くコーヒーが飲みたい」、「フードロスがないレストランに行きたい」、「無農薬野菜が食べたい」、「友達や恋人と健康な食事をしたい」、「ストーリーのある食材で作られたものを食べたい」「地元の食材を食べたい」などなど。そんなニーズに答える連載。

「食べることはお腹を満たすだけじゃない。思想も一緒にいただきます」、その名も『TOKYO GOOD FOOD』。フーディーなBe inspired!編集部が東京で出会える、社会に、環境に、健康に、あなたに、兎に角「GOODなFOOD」を気まぐれでお届け!

第15回目の『TOKYO GOOD FOOD』は、ファッション業界から、飲食業界へ転身した若きオーナーが開けた“サステナブルシーフード”のレストラン。

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WHERE IN TOKYO

 今回は、東京都心から少し西に離れた京王線千歳烏山駅から徒歩10分程度の場所にある「BLUE」。今年9月に東京にオープンしたばかりのサステナブルシーフードレストランです。サステナブルシーフードとは、漁法や漁獲量等において、持続可能性に配慮して獲られた魚のこと。

 なぜサステナブルシーフードにこだわりをもっているのか、代表の松井 大輔さんにお話をお聞きしました。

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BLUE代表の松井さん

WHAT’S GOOD

ーオススメの一品を教えてください。

フィッシュ&チップスです。

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オススメの一品、フィッシュ&チップス

ーなぜですか?

MSC(海洋管理協議会)というイギリスに本部のある国際認証を取っているアラスカ産のスケソウダラを使っているからです。

また、衣にはトルコ料理のカダイフという、小麦粉ととうもろこしの粉を混ぜた糸状のものを巻いて揚げています。だから、皆さんが想像するフィッシュ&チップスとは異なる見た目で、インパクトがあると思います。

このお店は「サステナブルシーフードレストラン」としてやっているのですが、サステナブルシーフードのムーブメントが世界でも早く起きたのがイギリスです。

海外って食べる魚種が少ないんですが、限られた魚種を大量に採っていたら、まずスケソウダラがなくなりそうになって、フィッシュ&チップスを作れなくなる危機が生じたんです。そこから魚を守る動きが始まったので、フィッシュ&チップスはある意味サステナブルシーフードの原点みたいなものなんです。

一方で、お店で「サステナブル」というコンセプトをあまり前面に押し出すと頭でっかちになってしまう。それは嫌なんです。フィッシュ&チップスはボリュームもあって、The魚料理感が強くないし、まず見た目のインパクトで楽しんでもらえる。おいしく味わってもらったうえで、店内にちりばめている認証マークから関心を持ってもらえたら、「さっき出した魚はこうこうで…」と伝えたいと思っています。

CONCEPT & PHILOSOPHY

ーBLUEでは、MSCとASCという認証マークがついている魚を扱っていらっしゃるんですよね。そもそもMSCやASCとは何ですか?

簡単にいうと、MSCは「天然魚に対する認証」で、ASCは「養殖魚に対する認証」です。

たとえば天然魚だと、必要量以上を漁獲することで特定の魚種が絶滅の危機に陥ったり、あるいは漁法や労働環境に問題がある場合もあります。養殖魚のほうでは、養殖場を建設する際に自然環境が壊されることや、設備が整っていないと、養殖場から魚が逃げ出して周辺の生態系を壊したり、病害虫を外に広げてしまうこともあります。そういった問題がおきないように、きちんと配慮し管理しているものに対して、認証が与えられます。

こうした認証ラベル、実は世界的に乱立していて、中には認証条件がゆるいものもあります。そんななかで、GSSI(グローバルサステナブルシーフードイニシアチブ)という機関が正しい認証マークを選ぶ活動をしていて、MSCとASCもこのGSSIに選ばれています。また、昨年のリオデジャネイロオリンピックでは、選手村等で提供するシーフードはほとんどMSCかASCの認証がついているものとされていました。

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ーもともとは出身地の福井でお店をやっていらっしゃったんですよね?

はい。2年前の12月から1年ほど、福井県敦賀市で『TOTALLY SEAROLL CLUB』という名前の、サステナブルシーフードのサンドイッチ屋さんをやっていました。

もともと東京で洋服の仕事をやっていたのですが、自分で会社をやりたいなと思って地元に帰ったんです。実家が漁協から徒歩3分ほどの海の目の前にあって、ある日、漁師さんも交えた町内会の集まりで飲むことがあったんです。

その時、漁師さんから僕が小さい頃にした地引網の体験授業の衝撃的な事実を聞かされたんです。実は当時、地引網では魚がほとんど取れなくなっていたため、当日の朝、沿岸の方に出て置き網や定置網で採った魚を、体験の前に網の中に入れていたそうなんです。ニュースでマグロやウナギが減っている話は聞いていたけど、まさか地元の魚も同じような危機にあるとは知らなかったので。敦賀は日本海沿いで、魚市場をはじめ、魚にまつわるものが観光資源としても大きいのに、地元が生き残るキーになるものが減っているのはすごく問題だと思いました。

何かできないかと考えるなかで思い浮かんだ仮説が、「食べ方に偏りがあるんじゃないか」ということでした。観光資源となるとお寿司や海鮮丼がメインなのですが、海鮮丼のネタって結構限られているじゃないですか。同じ魚ばかり食べていると全体のバランスが崩れるんじゃないかと思ったんです。

それで他の魚の活用法を考えたときに、よく海外の港町では魚をパンではさんで食べているのを思い出して、まずはパンとシーフードの組み合わせでやってみようと思いました。テイクアウトのサンドイッチだったら、パッケージで魚が減っている現状を何か伝えられないかなとも思って、探していくなかで見つけたのがMSCやASCの認証ラベルでした。

当時扱ったのはカニ、海老、カレイ、ホタテ、サーモンの5種類です。ただ、認証マークがついているものは、トレーサビリティが厳しいので、流通面で結構苦労しました。一般的なシーフードを飲食店で使うとなると、ひとつの○○水産に、「海老をください、カニをください」って注文したら、まとめて揃えてくれます。でも認証マークの場合はそうはいかなくて、○○水産は認証のカニだけもっていて、△△水産は認証の海老だけもっている…みたいな感じで、仕入先がすごく多くなってしまうんです。その分、配送のコストもかかりますし、まだ認証のシーフードが日本にほとんど流通していなかったので、小ロットに対応してくれなかったり、小分けにしてもらうとその分費用がかかったり、いろんな問題に直面しました。

あと、福井でサステナブルシーフードを広めていくことの限界も感じました。周囲の人には、ただの近所にできた新しいサンドイッチ屋さんとしか見られていないことが多かったですし、「あそこは地元の魚を使っていない」と逆に非難されることもありました。

そういうことの積み重ねのなかでやはり東京に出て行かねばと決意したんです。東京だとサステナブルシーフードの流通をやっている”同志”のような方もいますし、配送のコストもおさえられます。社会問題に対して興味関心をもっている人も多いですし。流通の面とお客さんにメッセージを伝える面の両方から、上京を決めました。

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ーお店を通して、どんな風に社会を変えたいと思っていますか?

日本人の舌の感覚って、シーフードに対してレベルが高いと思うんです。一方でオーガニックやエコを謳っているものは、高いとか、美味しくなくても仕方がないという認識も少なからずあるような気がしています。そんな固定観念を崩したいので、とにかくまずは「おいしい」と思ってもらいたいですね。

海外ではNGOの力が強いので、マイナスのプロモーションというか、「やらなきゃやらなきゃ」って煽る形でサステナブルシーフードが広まっていったのですが、毎日普通にスーパーに魚が並ぶ日本では、危機感をもてなくてうまくいかないと僕は思っているんです。だから逆においしいものを食べた後に、この素晴らしい魚食文化を子どもや孫の世代にも伝えたいですよねって、ポジティブな形で、お客さんに理解してもらいたいと思っています。

たとえば今は日本でMSC認証の魚を扱っているスーパーはかなり限られています。でもこういうマークがあると知ったお客さんが、スーパーの人に「MSC認証の魚はありますか?」って聞くようになったら、そこの責任者の人も、おそらく2~3回聞かれたら、定例会であげなくちゃって思うと思うんですよ(笑)。そういう消費行動から変えられることは結構あるんじゃないかと思っています。

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オススメのランチメニュー「シーフードの濃厚アメリケーヌソースドリア」
MSC認証のついている海産物を使っています

ー今後さらにやっていきたいことはありますか?

サステナブルシーフードを扱う飲食店は、海外ではすでに結構あって、これから日本でも増えていくと思います。そのときに自分たちが味わった苦労は絶対してほしくないんです。たとえば調達先が分からなかったり、マークの打ち出し方も、結構難しい話になってきます。一部の担当者しか理解できていなくて、お客さんにちゃんと伝えられなかったりすると勿体無いし、逆に間違った形で伝えてしまっては怖いとも思っています。そういう困難をなるべく減らせるように、僕らのノウハウを伝えていきたいです。「あそこができているなら、自分のところでもできるかもしれない、やってみよう」って思ってくれる人が現れて、横の繋がりが広がっていけばうれしいですね。

あと、僕個人としては、BLUE以外に株式会社シーフードレガシーという会社にも所属していて、そちらでもサステナブルシーフードに関する取り組みをしています。たとえば今だと企業の社員食堂もサステナブルにしようという動きがあって、その認証取得やマニュアルづくりのサポートをしたり、今後オリンピックに向けて海外のお客さんが増えていくなかで、ホテルでもサステナブルなシーフードを提供できるようにしようと、調達方針や調達ルートのコンサルティングやネットワーキングもしています。

その時に気をつけているのが、「絶対にサステナブルシーフードじゃないとダメ」と一気に切り替えようとはしないことです。それでは今漁業をやっている人たちの生活がサステナブルでなくなってしまう。海のそばで育っているから、彼らの苦しみも結構分かっているんです。だから、そのあたりの折り合いをつけながら「2020年までに何%ずつサステナブルシーフードの割合を増やしていきましょう」とか、「この魚はこちらに代替していきましょう」といった形で進めています。

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ー今ではすっかり「魚の人」ですね。(笑)

昔からの知り合いはひいていますね。(笑)もともとストリートやヒップホップ、パンクのカルチャーが好きで、大学時代は髪の毛をピンクにしたり、モヒカンで片側だけ長くしたり、結構アバンギャルドだったんです。ストリートの、小さいところからムーブメントを起こすようなのがすごく好きなんです。だから今もそういう感覚でやっている部分はありますね。

今の世の中、飽和状態になってきていて、0から新しい1を生み出すのは結構難しい。新しく見せるには何かと何かの組み合わせが必要だと思っています。たとえば洋服の色味使いとか、ファッション性を料理に持ってきて、新しいものを生み出したいと思っていたり。周りから見たら別物に見えるかもしれないですが、自分のなかでは繋がっていますし、これからも繋げて組み合わせて新しいものをつくっていきたいと思います。

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 なんとなく「国産の魚であればいいのではないか…」と思ってしまいがちでしたが、地球全体の海の状況や資源量のバランスは、個人レベルではとても測り知れず…。第三者的機関が調べてくれていて、「食べても資源や環境を傷つけないよ」と教えてくれるのであれば、罪悪感少なく、安心して、おいしく食べられそうですよね。

 ちなみに店内の内装も端材や廃材を活用していたり、メニューの紙は木の資源に関する認証マークがついているものを使っていたり、チョークボードは松井さんの手書きだったり…こだわりとDIYさが詰まった、ストリート精神いっぱいのお店です。ぜひすべてを”味わい”に訪れてみてください!

 来週の『TOKYO GOOD FOOD』もお楽しみに!

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BLUE

WebsiteFacebookInstagram

Address:東京都世田谷区北烏山9-2-4
Tell:03-5969-8558
営業日:11:30-14:00、18:00-24:00(月曜定休)

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All photos by Jun Hirayama
Text by Ai Ayah
ーBe inspired!

 

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