「子どもにはものではなく体験を与える」。ある母親が提唱し、世界的ムーブメントとなった“ゴミゼロ生活”


 

「理想的だけど、日本だと難しいかな。そこに労力をかける時間もないし」
 
世界10各国以上で翻訳されたベストセラー、『ゼロ・ウェイスト・ホーム ーゴミを出さないシンプルな暮らし』のタイトルを見た時の筆者の正直な気持ちだ。

アメリカのカリフォルニア州で家族4人と暮らしている本書の著者ベア・ジョンソンさんは、1年間で片手で持てる中瓶ひとつ分のゴミしか出さない(!)という。商品のほとんどがプラスチックに包まれている日本で生活をしていると、とても不可能に思える。

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「ゼロ・ウェイスト・ホーム ーゴミを出さないシンプルな暮らし」の著者、ベア・ションソンさん

しかし、ベアさんのゴミを出さない生活スタイルは、世界各地で積極的に取り入れられつつある。個人にとどまらず、市や自治体ベースでだ。多くの人を惹きつける「ゼロ・ウェイスト」生活とはどのようなものなのだろうか?

5つのRで、シンプルな生活を

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ミニマムかつ、シンプルに整えられた、ベアさん一家の一室

 ゼロウェイスト生活のベースとなるのは、5つのR(アール)。以前は大邸宅に住み、いくつもの家具を所有していたというベアさん一家だが、この5Rのルールに従い、劇的にゴミの量を減らしていったという。

①Refuse(不必要なのを断る)

買い物のときのビニール袋や連絡先を知っている人からの名刺など、ベアさんは不必要なものを受け取らない。学校の社会見学などで配られるノベルティに対しても子どもたちに受け取らないように伝えているそうだ。「ありがとう、でも大丈夫」の一言で、ゴミは減らせるのだ。

② Reduce(必要なものを減らす)

たとえば、掃除用洗剤。ベアさんも以前は、窓拭き用、床拭き用、風呂掃除用など、環境にも有害なさまざまな洗剤を、洗面台の下に溜めていたという。しかし、「必要」なものを減らすと決めると、ホワイトビネガーとカスティール石鹸のみで、すべての場所が清潔に保てることに気づいた。掃除する場所によってそれぞれ専用の洗剤が必要だという思い込みは広告会社の策略だとベアさんは強調する。

③ Reuse(繰り返し使う)

プラスチック包装を避けるため、ベアさんが買い物に出向くのは、食料品が裸のまま売っているファーマーズマーケットや、量り売りショップ(BULK)。パンは布の袋へ、お肉はガラス容器へ、シャンプーやワインは専用のガラスビンへ詰めてもらう。再利用できる容器を使用すれば購入から使用されるまで、ゴミは出ない。

④ Recycle(リサイクルする)

1、2、3番の方法が適用できず、たい肥化もできないものは、リサイクルへ出す。しかしベアさんは、リサイクルは「最終手段」だと強調する。1〜3番を意識し、リサイクルに出す必要のあるもの自体を減らすことが重要なのだ。

⑤ Rot(たい肥化)

たい肥化できるものは、ディスポーザーに入れ、土に還す。生ゴミや、髪の毛のみならず、キッチン用具や容器なども、たい肥化が可能かどうか購入の際にチェックするという。

不要なパッケージやものの消費に奪われる、お金と時間

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ベアさんは、自身が使う化粧品も手作りしている

 ルールはシンプルでも、慣れきった生活に変化を起こすことは、多くの人は「負担」と感じるかもしれない。しかし逆に、その「当たりまえ」の生活が、自身や家族に与える負担を意識したことがあっただろうか?

 ベアさん自身、フルタイムで働きながらこの生活スタイルを実践しているが「ゼロ・ウェイスト」生活は、人生を大変にするどころかより豊かにしたと断言する。

そもそも必要なものが減ったため、買う量が減り、物を買うときも一般的に安価な、リサイクル用品を選ぶようになりました。量り売りで購入するため、無駄な量やパッケージにお金を費やしません。この生活を始めてから、私たち家族の1年間の生活費は40%も削減されたのです

 豊かになったのは、経済面だけではない。買い物や、ものの管理、ゴミ出しなどに費やされていた時間が、本当に大切なことに使えるようになったとベアさんは言う。

本当に必要としないものを買っては捨てるの繰り返しは、文字通り、あなたのお金や時間を捨てていることと一緒です。あなたが夢見ている旅行や、休暇を捨てるのと同じなのです

 一例としてベアさんは、子どもたちへのプレゼントは使わなくなるおもちゃなどの「もの」ではなく、「体験」を贈るようになったという。アメリカ横断のサイクリングや、スカイダイビングなど、家族でさまざまなことに挑戦しているそうだ。

 そして、このゼロ・ウェイスト生活がベアさん一家にとってだけでなく、地球環境にも優しいのはいうまでもない。

世界に広がるゼロウェイスト

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再利用できる布袋や、瓶にはいって調達されたベアさん一家の食料

 ベアさんの取り組みは個人にとどまらず、アメリカやニュージーランドで多くの自治体が「ゼロ・ウェイスト宣言」を行うなど、世界的な広がりを見せた。読者が量り売り店を開く例も多くみられ、2017年には、南アフリカのケープタウンで、Colleen Black(コリーン・ブラック)さんがゼロウェイストの量り売り店「Life Lived Simply」を開店。こうした店は、各地でゼロウェイストの暮らしを住民に伝える拠点となっている。ベアさんの公式ホームページには、近くの量り売り店をみつけられる「BULK LOCATOR」(バルク・ロケーター)機能が開設され、ゼロウェイストを広める活動は、加速しているようだ。

 日本も例外ではない。日本で始めてゼロ・ウェイスト宣言をした徳島県上勝町は「上勝ゼロ・ウェイストアカデミー」を開き、2009年には、熊本県水俣市が市として初めて同宣言をするなど、ゼロ・ウェイスト宣言は、年々広がりをみせている。(参照元:上勝ゼロ・ウェイストアカデミーくるくるWEB

1人で始められる、ささやかで、楽しい革命。

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フライドポテトも布袋に入れてもらえば、ゴミが出ない。

 だれもが、ゴミを出したくて出しているわけではないにも関わらず、ペットボトルや、お菓子の袋、レシート、調理後に散らばる豆腐パックや、野菜の包装紙など…「常に捨てている」といっても過言ではない生活が続いていくのはなぜだろうか?

 著書のなかで、ベアさんはこう述べている。

ゼロ・ウェイストは「考えかた」ではなく、ものの「見かた」そのものを変えることでもあります。(中略)私が見ているのは、「パッケージづくしの世界」ではなく、「パッケージのない世界」です。みなさんもそういった視点で、世界を眺めるようになれば、どこにいても量り売りが見つかりますよ

 筆者の場合、住んでいるところの近くに野菜が裸で売っている八百屋があることを思い出し、量り売りでビールやワインを売っている店があることをインターネットで検索して知った。そして嬉しいことに、どちらも美味しそうである。

 ゼロ・ウェイストな暮らしは、きっと誰もが楽しめる「小さな革命」だ。それが世界中でおこり、大きな革命となる日もそう遠くないのかもしれない。

 

著書詳細

ゼロ・ウェイスト・ホームーごみを出さないシンプルな暮らし

著:ベア・ジョンソン

訳:服部雄一郎

本体価格1700円(税別)

「台所と買い物」「仕事部屋」「子育てと学校」「外食・旅行」など生活のシーンごとに紹介される実践的なアイデアには、様々な角度から暮らしを変えていくヒントが満載。リフューズ(断る)、リデュース(減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(資源化)、ロット(堆肥化)という5つの基本ステップをもとに、生活のシーンごとに実践的な取り組みが紹介されているので、身近なところから少しずつ始めることができます。

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Cover photo by Bruno Colaço4SEE
All photos by ZeroWasteHome.com
Text by Miroku Hina
ーBe inspired!

 

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