「キズは醜いものじゃない」。なぜ24歳の写真家が「傷跡は人の人生を物語るロードマップだ」と断言するのか。


 

人にはさまざまな傷がある。目に見える傷、心の中にある傷。人に見せてきたものもあれば、一度も見せたことがないものもあるだろう。

その1つ1つの傷を見ると、辛い経験を思い出してしまうかもしれないし、その傷を負ってしまったときのことを懐かしく思うかもしれない。

そんな「傷」をテーマに写真を撮るプロジェクトを行なった24歳のフォトグラファーがいた。

Photo by Sophie Mayanne

Ashleigh(アシュリー)

私は8歳から自傷と闘ってきた。覚えているのは、とても自分ではコントロールのできない感情を抱いて、自傷でそれを乗り越えようとしていたこと。そして天気にかかわらず長袖を着ないではいられなくなってた。腕は私の大きな秘密の一つ。でも傷を自分の一部だと認められたのは重要な一歩で、隠し続けることで傷を罪や恥だと思い続けてしまうのだと思うようになった

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Frances(フランシス)

8歳のとき病院に行って額にあった母斑(ぼはん)を除去したのは、学校で人気の男の子にからかわれたから。だけど、結局そのままにしておくと危険だったかもしれないとわかったし、残った傷は結構好きなんだ

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Andrea (アンドレア)

私が初めて傷を負ったのは14歳で、友達と追いかけっこをしていたときだった。壁を飛び越えたんだけど、その壁が動いて両足に傷ができてしまった。それから何年もそれらを見せないようにズボンしか履かないでいた。

左腕と顔にある傷は、狂った人に腹いせとしてやられたもの。最悪なのは、わざとですらなかったということ。ケンカに巻き込まれて、グラスを手に持った人に殴られた。そのときは、自分の顔から血が出てるってことぐらいしかわからなかった…。見下ろして、2枚開きのチキンのようにぱっくり切られた腕を見るまでは。でも究極の自分を追求している今では、自分のために自分を愛せるようになった

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Isabella(イサベラ)

2015年の夏、私は家で火事にあった。着ていた洋服が焼失したのと同時に、当たり前だった日常生活も消え、私はその夏をフルハム・ロード(ロンドン)にある病院の治療室で過ごした。今でも傷とかさぶたは変化し続けているけど、私はこれ以上自分を美しいと思ったことはない

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Matt(マット)

私が傷を作ったのは数年前、15歳か16歳のときで、全部自傷によるものだった。当時ホモフォビア(同性愛嫌悪)の人が多いポーランドにいて、人生のなかでも辛い時期だった。そんな環境でゲイとして生きて行くのは簡単じゃなかった

 傷とそれにまつわるストーリーを記録する写真プロジェクト「Behind The Scars(ビハインド・ザ・スカーズ)」を撮影しているのは、イングランド中央部に位置する古くからの美しい田園風景が残るコッツウォルズを拠点にファッションやポートレートのフォトグラファーとして活躍する、24歳のSophie Mayanne (ソフィー・マヤンヌ)。彼女は、私たちの肌は「人生のロードマップ」で、傷はそれぞれの「ストーリーを物語るもの」であり、美や弱点を表現したり、闘いや困難に勝ったことを証明したりするようなものだと考えている。

 困難を思い起こさせ、人に“醜い”と思われてしまう恐れのある傷と向き合うことは簡単ではなく、勇気がいるし、時間もかかる。だが、自分の傷を受け入れることでその人が自分に自信を持てるだけでなく、その傷を他人にも堂々と見せることで、社会に対してもポジティブな影響を与えられるとソフィーは感じているようだ。彼女によると、これらの写真とストーリーを通して人々が「傷に対する見方を変えること」ができれば、同プロジェクトは成功だ。

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Luca(ルカ)

手にあるこの傷は、夜遅くに近道を通ろうと、フェンスを登って越えようとしたときにできたもの。暗くて誰も気づけなかったけど、尖った針金がフェンスから突き出していて、それが私の手をぱっくりと切った

 自分の身体にある傷を見て、消してしまいたいと思うこともあるかもしれない。だが、それらはソフィーの言う通り、「人の人生を物語るロードマップ」だと考えることもできる。辛い経験を思い出してしまうような傷を消すという選択はもちろん尊重されるべきだが、傷を“醜いもの”だと決めつけるのではなく、自分の人生のストーリーを刻んだ美しいものだと肯定的に考えてみてもいいのではないだろうか。

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Sophie Mayanne

Instagram:@sophiemayanne

「Behind The Scars」プロジェクトへの援助や参加はこちら

All photos by Sophie Mayanne
Text by Shiori Kirigaya
ーBe inspired!

 

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