ビールのかすを飲み物に。“価値のないもの”を、「最先端エナジードリンク」へと昇華させたスタートアップ


アルコール飲料と聞いて、真っ先に思いつくのはビールではないだろうか。居酒屋に行って「とりあえずビールで」なんて注文する人も珍しくないように。

あまり注目する人はいないだろうが、ビールは麦芽を発酵させて作られているため炭水化物やタンパク質、ビタミンB群、ミネラルが含まれている。それと同様にビールを絞ったあとの粕も栄養価が高いが、残念なことにその多くが廃棄されているのが現実だ。だが、そんなもったいない現実に着目した若者たちがニューヨークにいた。

Photo by CANVAS

余ったビールの麦芽から「クールなもの」を作る若者たちのスタートアップ

 食物繊維やタンパク質が豊富に含まれ、腸内環境を整えたり、心臓疾患の予防やコレステロールを下げたりするなど、さまざまな効果を持っている麦芽。だがこれらは通常、ビールを絞ったあとに捨てられてしまう。

 そんな麦芽の粕を廃棄せず、“何かクールなこと”ができないかという考えが若者たちを動かした。そうして麦芽の粕をスムージーの材料にしようと思いついたのが、ニューヨークのスタートアップCANVAS(キャンバス)の始まりだ。

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 彼らが作ったのは麦芽の粕にココナッツやカシューナッツ、スパイスやハーブを加え、濃いナッツミルクと完全栄養食品のソイレントの中間くらいのスムージー状の飲み物。

 フレーバーは抹茶やチャイ、カフェラテ、ココアなどがあり、普段の生活でも気軽に飲める。このように栄養が簡単にとれるだけでなく、若者ならではのセンスを活かしてパッケージもスタイリッシュなデザインにし、ブランドとしての価値を付け加えた。(参照元:CANVAS, KICKSTARTER, Munchies

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 また、彼らは事業を始めるにあたってクラウドファンディングを使って資金調達に成功し、既に賛同者のコミュニティを持っている。したがって、捨てられてしまう麦芽の粕を「栄養価が高くておしゃれなスムージー」にした「アップサイクル」の考え方は決して少数派のものではない。

「社会をよくする」が現代的なクールの概念

 先ほど紹介したキャンバスの事業の始まりにあったのは「何か“クールなこと”をしたい」という考え。そして事業の内容は、捨てられてしまう素材を使って人に新しい価値を生み出す、アップサイクルの考え方に基づくもの。つまり、彼らのような若者にとって「人や環境にとっていいことをする」のが、“クール”の定義だといえる。

 この傾向は、アメリカやヨーロッパのミレニアルズが人権問題や地球温暖化などの問題への関心が高いという研究結果に裏付けられる。彼らの多くは、「社会的な責任」を重んじる組織で働きたいと感じており、人や環境に対する配慮や持続性を重視した商品選びをするという。(参照元:Stanford GSB Working Paper No. 1805, the guardian

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 見かけだけよくても、環境を壊したりムダを出したりするものはかっこよくないし、いつかは信頼を失いかねない。

 よって若者たちは、商品を作ることで世界に与えるポジティヴ・ネガティヴの両面のインパクトまでを当たり前のように考慮に入れている。それには、事業の透明化を求められる社会のなかで、自分たちの事業をなるべく嘘のないものにしたいとの思いもあるだろう。

限りある食料資源をアップサイクルして、ムダを出さない若者たち

 世界にある食料資源が無限にあるわけではないのは周知の事実だ。そんな状況に対応すべく、余ったものをムダにしないアップサイクルの食品が次々と生み出されている。

 キャンバスと同様でビールに関連したものもあり、カリフォルニアの大学生がビジネスとして始めたビールの粕から作ったシリアルバーや、イギリスやベルギー、アメリカで作られている廃棄されたパンから作ったビールがその例だ。その他にも、汚水尿などを使ったビールが作られている。

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 また、果物のゴミをアップサイクルしてファッションアイテムを作る例もあった。オレンジの皮から作った生地でファッションブランドのフェラガモとのコラボレーションを実現させた大学生たちだ。このように「食品廃棄問題」から生まれた、ムダを活用するアイデアは数多く存在する。アップサイクルの考え方なら、食品廃棄を減らし、残存する食料資源を有効に使うことができるのだ。

ビールスムージーから考える新時代の「価値あるもの」の探し方

 自分がお金を出して買った食べ物をムダにせず食べきりたいと思ったことのある人は少なくないだろう。そのような思いを事業へと変換する、若者たちによるスタートアップは、当然のようにムダになっていたものから価値を生むことに成功している。

 例えば栄養豊富であるのに「価値がないのと同然のように捨てられていたビールを絞った残りのビール麦芽の粕」。そのようなものを利用すれば、有限な食料を有効に活用するという意味だけでなく、人にとっても気軽に栄養の高いものがとれて便利だ。

 このような発想で、誰も目に留めてこなかったムダになっているものを「アップサイクル」して社会をできるだけ持続可能にしていくのが、今の時代に必要な事業の構想ではないだろうか。

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CANVAS

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All photos by CANVAS
Text by Shiori Kirigaya
ーBe inspired!

 

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