#001 「ファストファッションでも大事にすればいい」。エシカルファッションプランナー鎌田安里紗の『記憶の一着』|赤澤えると『記憶の一着』


 

こんにちは。赤澤 えるです。思い出の服を持ち寄る連載『記憶の一着』、スタートです。たくさんの服が捨てられる世の中で、残る服って何だろう。それはどうして残るのだろう。それを手放す時ってどんな時…?服の価値、服の未来、ゲストのお話をヒントに考えていく連載です。

ちなみに、私のクローゼットは『記憶の一着』だらけ。自分なら何を紹介するか、この連載が終わるまでにじっくり考えてみることにします。

Photo by 撮影者
▶︎赤澤えるのインタビュー記事はこちらから。

さて、記念すべき第一回目のゲストは、エシカルファッションプランナー・鎌田 安里紗さん。

ギャル雑誌のトップモデルだった経歴を持つ彼女は、今やエシカルファッション界で唯一無二の存在。私にとっては「エシカルファッション」を最初に教えてくれた人物です。仲が良いのでファッションへの本音は日頃から聞く機会がありますが、だからこそ嘘がつけない正直なインタビューになるのではとオファー。服を捨てない印象の強い彼女が選ぶ、『記憶の一着』とは?

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赤澤 える本人と鎌田 安里紗さん

10時間悩んで決めた、鎌田 安里紗の『記憶の一着』とは

赤澤 える(以下、える):『記憶の一着』について聞かせてください。

鎌田 安里紗(以下、鎌田): PeopleTree*1のワンピースです。でもね、今回めちゃくちゃ迷ったんですよ。『記憶の一着』がありすぎて選べなかった。合計10時間は悩みました。服を捨てないしあまり買わないから、どうでも良い服が無い。この考え方になる前、高校生くらいの時に買ったものはどうでも良い服だったこともありますが、それも“かつてどうでも良い服だった”もので。そこに思い出が積み重なっているから、結局全てが『記憶の一着』なんです。おばあちゃんにゆずってもらった服もあるし、自分でデザインした服もあるし、色々あってとにかく選べなかった。

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『記憶の一着』である PeopleTreeのワンピースを着た鎌田 安里紗さん

このワンピースを選んだきっかけは、PeopleTreeのバングラデシュの工場に行った時のことを思い出したからです。『記憶の一着』を考えていると、そこから服についてめちゃくちゃ考え始めて、それが合計10時間ずっと。それで、服についての考え方が一番変わったのがPeopleTreeの工場に行った時だなって思って。

これは2年ほど前かな、自由が丘にあるPeopleTreeのお店で選びました。それから、この服を着て人前で喋ることがすごく多いんです。エシカルファッションの話をする時にこの服を着てイベントに出たり、登壇したり、服に対しての自分の思いを話したりすることが本当に多い。共に闘っているというか、一緒に思いを伝えにいっているかんじですね。

える:『記憶の一着』を手放す時が来たとしたら、それはどんな時?

鎌田:この服はずっと着れそうだな。今手放したいと思える服って、無意識に服を買ってた時のものばかりで。自分が意識的にクローゼットに迎え入れた服たちだけに徐々にしていきたいなって思ってるんです。この服はそのフェーズになってから我が家に来た服だし、ボロボロになりにくそうだしなぁ。服として機能しなくなったら何かに作り変えてもいいな。鞄とか?色々なところに一緒に行ってきた服だし、近くにいてほしい。

(*1)PeopleTree(ピープルツリー):オーガニックコットンのレディースファッション、ベビー服や生活雑貨などフェアトレードを通じて途上国支援をするフェアトレードブランド。

納得度=幸福度。納得感なしのギャルモデル時代

える:ありちゃん(鎌田 安里紗のこと)はいつも何を大切にして買い物してるの?

鎌田:一番は“納得感”ですね。自分が一番「よし」と思える納得感を探る。だから割合は毎回変わります。例えばPeopleTreeでお買い物をするときに、いつも100%かわいいデザインのものに出会えるかと言われるとそうとも限らない。でもやっぱり生産背景まで見せてもらえていて、ブランドを立ち上げた人の思いも普段働いている人たちの様子も知っていて、背景の部分に納得度が高いから買った時に「よし」が強い。他のお店で買う時はデザインから入って調べることが多いですね。この前もかわいいと思う商品を見つけたからそのブランドや大もとの会社について調べていったのですが、色々納得できないポイントがあったので、買うのをやめました。こういうことはよくある。もちろん着心地もあるし、デザイン、生産背景、自分の気持ちの高揚感、誰とどんなシチュエーションで買い物に出かけているか、接客も関係する。色々な要素が相まって「よし」ってなった納得度が深ければ深いほど買った時の幸福度が高いです。

える:ありちゃんって本当に服を手放していないの?

鎌田:実は今“服をクローゼットから減らそう月間”で。初めてです、服をこんなに手放そうと思うのなんて。本当にこれからも着ていきたい服だけを残そうと思ってクローゼットを見ているんですけど、もう古い服しか無いということに気が付いたんです。新しい服が無いんですよ。ここ3、4年で買ったものは本当に少ない。それ以外は全て昔から着ているものだけ。それに気付いて衝撃を受けました。一番古いものだと、小学生から着ているGジャン。笑

える:えー!昔から服を捨てないって考え方だったんだ!

鎌田:意識していたわけじゃなかったけど、そうだったのかもしれない。雑誌のモデルをやっている時も、109のショップ店員をやっている時も、沢山の服を扱う仕事だからどんどんクローゼットがいっぱいになって… 「はぁ…」ってなったり。私服撮影が毎月あって毎回違う新しい服を買わなきゃいけなくて、すごいうんざりしてたなって。当時はそれを認識していなかったし、あまり言語化できていなかったけど、今思うと全然しっくり来ていなかった。納得感なし! 変な話、モデルはいっぱい服を貰ったりするし、どんどん与えられてそれを着て、来月にはそれじゃないのを着なきゃいけなくて。ショップ店員として店頭に立っていたって毎週違う服を着なきゃいけないし、本当に服地獄みたいなかんじだった。そういえば、あまり服を買わなくなったのは雑誌の専属がなくなってからですね。

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「お前全然エシカルじゃないな」って色々な人に怒られてます

える:ありちゃんが新しい鞄を買った時、ありちゃんが買ったということはそれってエシカルファッションブランドなんだ!って思い込んでいた私に「調べても全然分からなかったし今も知らないけど、どうしてもデザインが可愛くて、大切にできるって思ったから買った!」って言ったことがあったよね。私その時“あ、それで良いんだ、完璧じゃないんだ”って気持ちが楽になったの。

鎌田:3年間ずっと黒い小さな鞄を探して続けていて「いた…!」みたいなかんじだったから。それはね、買うしかないですよ。エシカルは考える時の1つの切り口なんです。やっぱり自分の納得感をいつも探ってるけど、それに縛られて何も出来なかったら本末転倒。ありえないくらい納得したかどうかが重要で、今回はずっと探していたデザインが見つかったからそこに納得感があった。ブランドの哲学がめちゃくちゃかっこいいとかが理想だけど、必要なアイテムを探している時は考えに考え抜いてその総合点で選ぶ時もある。なんとなく可愛いしこの値段だし…ってことではもう全然買い物できない。

える:エシカルファッションの仕事をしていると、さっきの私みたいな目で見る人は少なくないよね?ありちゃんが選ぶものは絶対にエシカルに違いないだろうっていう偏見というか。

鎌田:はい、色々な人に怒られてますよ。「お前全然エシカルじゃないな」とか言われます。でも、そうですよって思う。100%エシカルなんて私には無理。でも私だけじゃなく、0か100かにしたら誰も何もできなくなるでしょう?エシカルブランドに可愛いものを見つけた時だけ買うでも良いし、気に入った服を大切にするでも良いし、究極を言うとファストファッションブランドでも「今手持ちのお金で買えるのはこれで、最大限それを大事にする」っていうのでも別に良いと思うし、それぞれの人が出来る範囲・出来る形でやらないと。そういうことを許容していかないと変わらないし意味が無い。私自身が100%じゃないってことを常に正直に出しておかないと「私がエシカルとか無理だな」って人をいっぱい生み出すだけ。だから私は、怒られても良いから正直に言う。

あとはね、みんなでごはんを食べてる写真をSNSにあげてそれにお肉が写ってると「エシカルとか言ってるのにお肉食べるんですね」とか言われたりもします。その人の気持ちも、食肉産業の問題も解るんですけど。そんなに人の生活のスタイルに踏み込んで駄目なところを探すより、それぞれの人が自分の一番心地良い食べ物の選び方とか、服の選び方とか、何が自分にとって気持ち良いのか考えるのが大事であって。客観的に正しい生活をしろって私は言ってるわけじゃない。エシカルは思考の入り口の言葉として使ってるぐらいで、こういう考え方もあるんですよってかんじです。そしたら色々考えるきっかけになって、それぞれの人のスタイルができていくんじゃないかな。一つの正しいスタイルがあるわけじゃない。

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える:ありちゃんがそういう考えって、もっと知られてほしいな。ありちゃんのお買い物の仕方、服の選び方も、1つのスタイルだってことだよね。

鎌田:はい。私は超考える。ありえないぐらい。モノを買うのにめっちゃ時間かかる。ニットを探しているうちに冬が終わりそう(笑)それくらい本当に買えない。でも今持っている服を着て数年間生きてきたから、今年は新しい出会いを探す年にしたいです。積極的に服に出会いに行きたいから、楽しい手放し方も考えたいですね。フリマかもしれないし、スワップパーティーみたいな交換会かもしれないし、そういうのを価値観の近い人同士でやればもっと良いかもしれない。

私はファッションが好きだし、元々服が大好き。それこそ渋谷109で働き、ファッション雑誌のモデルもしてたし。新しい服を手に入れてウキウキするあのかんじもすごい好きだし大事だと思っています。それぞれ心地良い形って絶対違うから、正解を私が示すことはできない。

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109店員の頃のモヤモヤが一気に解消された

鎌田:そういえばね、絵本展に行ったんですよ。インドの“タラブックス”っていう手刷りで絵本を作る出版社の。それを見て、PeopleTreeのバングラデシュの工場に行った時のことを思い出したんです。その時はまだ今日持ってくる服を悩んでて。でもその絵本の手刷りの様子を見た時に感動して、『記憶の一着』はやっぱりPeopleTreeだなって思って今日この服を連れてきたんです。でも、なんであれに感動するのかはもうちょっとちゃんと考えたい。別に私はファストファッションブランドが潰れろとかそういうメッセージで今の仕事をやってるんじゃないし、エシカルファッションブランド神です…みたいなテンションでもなくて。だけど自分があぁいうモノづくりに感動しているっていうのは事実だから、そのワクワク感をもっとみんなとシェアしたい。あの良さは一体何なのだろうかっていうのにもうちょっと向き合いたい。

える:分かる… あの感動って他に置き換えられないよね。

鎌田:アパレルで働いていた時に自分のラインを持たせてもらっていたことがあって、その時は中国や韓国に素材を探しに行くこともやらせてもらっていました。生地市場に行くとバーっと生地が並んでいて、この布はどこから来たんだろうって漠然と思ってた。あと、シーズンごとに型数が決まってるから、ハイペースでデザインを決めて中国の工場にお願いして、2週間後にはポンっと服になって届く。なんか不思議な感覚だった。その時感じていたモヤモヤ感が、PeopleTreeの工場に行った時に一気に解消された。プロセスが見えることがその嬉しさの全要因なのかは分からないけど、目の前でモノができていくのは感動する。

える:確かにね。料理が徐々に完成していくところを見ても、コンサート会場の設営や運営を見ても、出来上がる何かを見るのってどうしてあんなに感動してしまうんだろう…。あぁいう部分を知ることこそ、モノを大切にすることに直結する気がする。

鎌田:そうですね。あのワクワク感やときめきは何なのかもっとちゃんと考えたいと思います。えるちゃん、一緒に考えましょう。

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福島県のオーガニックコットン畑にて

 エシカルファッションは世間的にはまだまだ新しく、“100%じゃないと関われない”と暗に感じさせてしまいがちな分野。エシカルファッションプランナーという肩書きを持つありちゃんが「100%エシカルは無理」と言い切ってくれる姿勢こそ、浪費社会を変えていけるきっかけになると思います。

 目の前でモノができていく感動、背景や込められた思いを知ることで湧く愛着、そういうものが結びついた『記憶の一着』は本当に素敵。でもそれを纏って語るありちゃんはもっと素敵。この“素敵”を持つ人に積極的に出会っていきたいです。

Arisa Kamada(鎌田 安里紗)

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1992年、徳島県生まれ。モデル、エシカルファッションプランナー。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科前期博士課程修了。高校在学時に雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。エシカルな取り組みに関心が高く、フェアトレード製品の制作やスタディ・ツアーの企画などを行っている。著書に『enjoy the little things』(宝島社)。環境省「森里川海プロジェクト」アンバサダー、慶應義塾大学SFC研究所上席所員。

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Eru Akazawa(赤澤 える)

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LEBECCA boutiqueブランド総合ディレクターをはじめ、様々な分野でマルチに活動。
特にエシカルファッションに強い興味・関心を寄せ、自分なりの解釈を織り交ぜたアプローチを続けている。

また、参加者全員が「思い出の服」をドレスコードとして身につけ、新しいファッションカルチャーを発信する、世界初の服フェス『instant GALA(インスタント・ガラ)』のクリエイティブディレクターに就任。
イベントの公式ウェブサイトは2月中旬にオープン予定。最新情報は赤澤えるのSNSをチェック。

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Interview photos by by Ulysses Aoki
Text by Eru Akazawa
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