#005 「ファンの一言で、服への意識が変わった」。昔は服をたくさん捨てていた“読モ”が、服を捨てなくなった理由|赤澤えると『記憶の一着』


こんにちは。赤澤 えるです。
思い出の服を持ち寄る連載『記憶の一着』、第5回です。
たくさんの服が捨てられる世の中で、残る服って何だろう。それはどうして残るのだろう。それを手放す時ってどんな時…?

服の価値、服の未来、
ゲストのお話をヒントに考えていく連載
です。

▶︎赤澤えるのインタビュー記事はこちら

本日のゲストは読者モデル・荒井愛花さん。151cmという小柄なスタイルを活かし、青文字系雑誌「mer」のモデルとして活躍する彼女は、インスタグラムで約14万フォロワーを抱えるインフルエンサー。私にとって大切な数年来の友人でもあります。「普段話さないような真面目な話がしたい」「包み隠さず正直なインタビューにしよう」と約束を交わして迎えた今日、彼女が選ぶ「記憶の一着」とは?

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赤澤えると荒井さん

“こだわり”がないモデルの「記憶の一着」とは

赤澤 える(以下、える):『記憶の一着』について聞かせてください。

荒井 愛花(以下、愛花):この今日着ているワンピースです。記念すべき人生初のコラボ服。LEBECCA boutiqueとのコラボレーションでデザインさせていただいたもの。

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える:私にとっても人生初のコラボとなった服。記憶の一着に選んでもらえて嬉しい。

愛花:コラボをしようって話が決まった時、本当にデザインに悩んだ。えるはすごくこだわりがある人だけど、えると私はタイプが違うというか割と正反対の人間だと思う。えると違って私はどっちかというと強いこだわりがないタイプの人間。やるって決まったことに対してはこだわりを持つけど、生活する上での強いこだわりとかそういうのはあまりない。だからどうしようって。

える:私からすると別にこだわりがない風には感じなかったかな。自分のしたいこと、自分が届けたいお客様、そこに対する自分のモノづくりっていうところにはこだわりがしっかりあるように見えたよ。この色は嫌だ!この形は違う!とか、はっきりしてた。

愛花:つくるなら絶対にみんなが喜んでくれるものを作りたいと思ったし、初のコラボでとても緊張しているけど私がデザインした洋服がみんなの大切な1枚になったらなって思った。そこにはとてもこだわりました。

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モデルという職業だからこそ、自分の求めている服がわからない

愛花:モデルという職業をやらせてもらっていると、同じ服を雑誌やインスタに載せるってことがあまりできないの。例えば雑誌で私物を使う企画が5つあるとして、「5つ全部かぶらないように持ってきて」って編集さんやマネージャーに言われる。言われなくてもそれが当たり前。一回出したものは次の月も出せないのは普通のこと。

える:仕事で一度出した服はもう出せない、これを読んでる人は「じゃあオフで着れば良いじゃん」って思うかもしれない。でも愛花は、オフの服装を載せることも“仕事”だよね。雑誌の撮影があろうが無かろうが、SNSがある限り毎日どの瞬間でも仕事になる。だから「かぶらないように」って話だと、一度出番が訪れた服、出番が終わった服にはもう次の機会は無いってことになるし、毎日が仕事ということになると一回しか着ないような服だって出てくるよね。

愛花:うん。だから私含め他のモデルさんはフリマで応援してくれてる方に渡したりするし、そういう機会はたくさんある。でも自分が1つの服をずっと持つっていうことは少ない。というか、ほぼ無い気がします。持ち続けてる人もいるかもしれないけど少なくとも私は無い。だから、コラボ服をつくらせていただくっていう機会をもらった時すごく悩んだ。1つの服をこだわって長年持ち続けたことが少ないから、自分はどんな服をつくりたいのかって、よく分からなかった。自分が本当に欲しい服はどんな服か、そしてそれがみんなも喜んでくれるものなのか…とじっくり悩みました。

える:それって初めて気付いた?

愛花:うん。でも他のモデルさんがコラボをするというのを今までたくさん見てきたからこそ、みんなが着たいと思うものをつくりたいと思ってた。それで自分なりにすごい考えて案を出したんだ。実際に出来上がってみたら本当にすごく可愛くて…。これだけは一生誰にも渡さず自分が持っていようって、そんなこと初めて思った。

える:自分の思いが詰まった服になったんだね。

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える:この服をもし手放すとしたらどんな時?

愛花:これは手放さないよ。えるはいつも「レベッカの服は飽きたら売っていいよ」って言ってくれるけど。それ本当に嫌じゃないの?

える:私は、自分のブランドの服を売られるっていうことは決して嫌じゃない。転売行為は別としてね。私は1つの服に飽きちゃうのは仕方がないことだと思ってるの。でも、飽きたらゴミにするっていうのは絶対に違うと思ってる。

愛花:それいつも言ってるよね。「飽きたら自分の名前が出るところで売ってね」って何回も言ってくれてる。ブランド始めた時からぶれないね。

える:友達のブランドのものって、なかなか売りづらいと思うんだよね。フリマの機会があったとしても、周りから「え、友達の服を売ってお小遣いにするの?」って思われたくないだろうし、どうしても売りづらい。売りづらいから売れないってなると、匿名でフリマアプリに出す。それすら面倒くさいと、ゴミ箱に捨てる。私はそんなの悲しいから、飽きてしまったら堂々と売ってほしいんだ。

愛花:ブランドの人がそんなこと言うのって、新しいと思う。

える:自分の名前が出る時に売れば、受け継いだ人もお互いに顔が見えて喜びが増えるよね。どういう時に着ていたものかストーリーが伝えられれば尚更だし、その相手がファンの方ならもう言うこと無い。捨てたらただのゴミ。でも次の人に渡せば、その人の宝物にもなり得る。

ファンの一言で、服への意識が変わった

愛花:最初にモデルをやったのは大学3年生の時で、その時は本当に意識が薄くてまだ“仕事”という感覚ではなかった。「呼ばれるから行く」って感じ。それが楽しい時期でもあったし。でも、その時に洋服を整理してて「これ処分する〜 こんなにいっぱい〜」みたいなのをSNSに何の気なしに載せたら、「服の仕事をしている人がそういうことを言わないでください」って一般の方からリプライが来たの。その時が初めてちゃんと洋服のことを考えた瞬間だった。自分のやってることが仕事だって自覚もした。

える:ドキッとしたんだね。

愛花:この仕事をせずに普通に生活してたとして、要る服・要らない服って出てくるし捨てる機会だって多いと思うの。でも、自分はこういう仕事をしてるしちゃんと考えて行動しなきゃなって思った。だからフリマとか、後輩や友達にあげるとか、そういう機会を大切にしてる。

える:叩かれるからもちろん載せないけど実は大量に捨ててるとか、断捨離ってタイトルをつけて正当化するとか、そういう人が多い中で“見えていなくてもちゃんとしよう”って姿勢は本当に素敵だなって思う。それでもやっぱり、持っている服って多いの?

愛花:職業柄ある程度の量はあるし、普通よりは持っていると思う。「私服コーデ企画」とかあるし、自分の特集になるとそれが1ヶ月分とかだから。そういうのは服を持っていないとできない。フリマのために保管したりもしてるよ。

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もっともっと親近感のある存在になりたい

愛花:最初にモデルやるってなった時は、私RayとかCanCamを読んでたの。赤文字系だったけどサロンモデルやってたらZipperに呼ばれて、出始めてから青文字系の服を買うようになった。でも何を買ったら良いか分からなくて。ブランド名も全然わからないし、ドクターマーチンすら知らなかった。それで、とりあえずコンバースのスニーカーを買った。

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える:意外だよね。びっくり。

愛花:私は現場で1人だけOLさんのような格好をしてた。人見知りだから誰にも話しかけられないし、本当に孤独って感じ。それで自分で着なきゃいつまでもわからないなって思って、いつも撮影の時にあったコンバースを買ったの。

える:今の姿からじゃ想像できない。じゃあ、その靴も“記憶の一着”だね。

愛花:うん。雑誌で青文字モデルをたくさん見て勉強したから、今は参考にしてもらえるのが嬉しい。身長が小さいことしか武器がなかったけど、同じ低身長の方が応援してくれたりしてるし「読モをやってて良かったな」って思う。

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える:愛花はいつも自分のことをモデルじゃなくて読モって呼ぶよね。

愛花:モデルでも読モでも呼び方は何でも良いけど、自分では自分のことを読モだと思ってる。

える:読モって呼ばれるのが嫌って言う人もいる中で、愛花はそのスタンスがずっと変わらないね。

愛花:私は読モって呼ばれることが全然恥ずかしくない。読モ出身で知名度を上げていった子をからかう感じで「どうせ読モだろ」とかテレビとかでも言われてて、そういうのを見ると「まだ世間的には認められてないんだな」って思うけどね。でも、私はそこで生かされてるから。読モって立場は昔より認められてるって思うし、うちらの先輩が作り上げてくれたと思ってる。そういう方々と一緒に青文字系って1つに括られることは全然嫌じゃない。

える:愛花のそういうところ好きだな。

愛花:嬉しい。何というか、読モって呼ばれる人って親近感があると思うの。私が出させていただいてる雑誌も、コーディネートとか真似しやすいと思うし、頑張れば私もなれるかもって思ってもらえる存在というかそう思ってほしい。だから直接会えるイベントも多い。私はそれが嬉しい。

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【編集後記】
 人生の中心となっている仕事をお互いに活かして挑んだ、人生初のコラボレーション企画。彼女はいつもSNSや雑誌で人気者な上に私の8倍もフォロワーがいるから、商品を作ることに対してこんなに悩んでいたとは正直思っていませんでした。今そして今までの“読モである自分”と向き合って出したデザインなんだと思うと、私も一層愛おしく感じます。

 ちなみに今日私が着ているのは、愛花と初めて出会った時に着ていたワンピース。二人で行った海外旅行にも着ていきました。さらに思い出が重なって“記憶の一着”として愛おしさが強まります。愛花にとってあのワンピースもそういう存在になると良いな。

MANAKA ARAI(荒井 愛花)

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雑誌『mer』のモデル、さらには女優として活躍の場を広げる。
身長151cmと小柄でもバランスの良いファッションに定評あり。

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Eru Akazawa(赤澤 える)

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LEBECCA boutiqueブランド総合ディレクターをはじめ、様々な分野でマルチに活動。
特にエシカルファッションに強い興味・関心を寄せ、自分なりの解釈を織り交ぜたアプローチを続けている。
また、参加者全員が「思い出の服」をドレスコードとして身につけ、新しいファッションカルチャーを発信する、世界初の服フェス『instant GALA(インスタント・ガラ)』のクリエイティブディレクターに就任。

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instant GALA

クラウドファンディング

あの日、あの時、あの場所で、あなたは何を着ていましたか?「載せたら終わり」の新時代、載せても終わらないものは何ですか?服への愛着・愛情を喚起し、ソーシャルグッドなファッションのあり方を発信する、思い出の服の祭典。
4月22日(日)渋谷WWW Xにて初開催です。

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▶︎これまでの赤澤えると『記憶の一着』

#004 音楽家 永原真夏の『記憶の一着』

#003 モデル 前田エマ の『記憶の一着』

#002 れもんらいふ 千原徹也の『記憶の一着』

#001 エシカルファッションプランナー 鎌田安里紗の『記憶の一着』

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All photos by Ulysses Aoki
Text by Eru Akazawa
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