#007 「簡単に手に入った服は捨てたことがある」。20歳のインフルエンサーに聞いた、“ゴミになる服”と“大切にする服”の違い|赤澤えると『記憶の一着』


こんにちは。赤澤 えるです。
思い出の服を持ち寄る連載『記憶の一着』、第7回です。
たくさんの服が捨てられる世の中で、残る服って何だろう。それはどうして残るのだろう。それを手放す時ってどんな時…?

服の価値、服の未来、
ゲストのお話をヒントに考えていく連載
です。

本日のゲストはアーティスト・佐藤ノアさん。ガールズバンド「suga/es」のヴォーカルを務める彼女。Instagram・Twitter共にそれぞれ20万人以上のフォロワーを抱える、20歳になったばかりのインフルエンサーです。多大な影響力を持つ彼女が選ぶ、「記憶の一着」とは?

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赤澤えると佐藤ノアさん

▶︎赤澤えるのインタビュー記事はこちら

外に出なくなった私を救った『記憶の一着』とは

赤澤 える(以下、える):『記憶の一着』について聞かせてください。

佐藤ノア(以下、ノア):高校生の時に祖母がプレゼントしてくれたコートです。もらったのはクリスマスの頃だったかな。まだ地元の北海道にいました。3、4年経ちますけど冬になったら毎年着ています。モデルの仕事をしていると冬はコートをたくさん持っていないといけない感じになるんです。SNSに載せるものが全部同じような写真になってしまうから。でも私はこのコートだけは繰り返し着て、意識的に毎年載せています。他の服も割と長く着る方ですが…。

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える:プレゼントしてもらった時のことを聞かせてほしいな。

ノア:その時はあまり外に出ない時でした。学校に行きたくなかったし、毎日同じサイクルで動くのがすごく嫌になってしまって。中学生までは熱心に勉強していましたし学校も休んだことがなかったんですけど、高校ではズレを感じたんです。「あー、ちょっと何かが違うな」って。それで外に出なくなって、ずっと出てこない私を見て祖母が「久しぶりにお出かけしようよ」って言ってくれたんです。

える:連れ出してくれたんだね。

ノア:それで「一着好きなものを…」って言ってくれたのですが、その時は外に出ないから欲しいものが無くて。制服があるし高校生はそんなに服が要らないんじゃないかとも思っていたんです。どうしようと考えていたら祖母が「コートを一着プレゼントするよ」って選んでくれて。それからずっと着ています。

える:素敵なエピソード…。

ノア:コートって室内で着るものじゃないですよね。だから。外に出ない私にコートをプレゼントしてくれたのって「お外に出ておいで」というメッセージかもしれないなって思うんです。それから外にも少しずつ出られるようになりました。北海道に帰省したら必ず祖母に会いに行きますし、プレゼントしてもらったっていうことにこだわってこれを着ていったりします。

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高校生の時に祖母がプレゼントしてくれたコート

“ゴミになる服”とそうではない服の違いとは

える:この服をもし手放すとしたらどんな時ですか?

ノア:今はあまり考えてないんですけど…もし私に子どもができたり弟に子どもができたりして、その子が私みたいに外に出られなくなったらきっと私は同じようにこのコートをプレゼントすると思います。それくらい。それまでは私が着ると思います。売ったりあげたりはしないかな。それくらい、ちゃんと「記憶の一着」だと思います。インタビューのオファーが来た時「あ!絶対これだ!」って一発で決まりました。

える:ノアちゃんは今、服が粗末に扱われていたりゴミになっている世界の状況ってどう思う?私はそこに微力でも立ち向かおうとして自分のブランド、LEBECCA boutiqueを続けているから、私たちの服をよく着てくれてるノアちゃんの考えを聞いてみたい。

ノア:何も隠さず言うと、私も服を捨ててしまうことがあるんです。

える:それはどんな服?

ノア:簡単に手に入った服です。寒いから買ったシンプルなパーカーとか、ファストファッションのものが多いかな。すぐ手放すって分かって買ってるし、そういうつもりで買ってる部分はあるかも。

える:まぁそうなるよね。

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ノア:はい。でも、LEBECCA boutiqueの服は捨てない。本人を目の前にして言うと変な感じですが…捨てたいと感じない理由は、作り手の思いや熱量を知っているからだと思います。えるさんみたいに“#レベッカブティックのこと”を書いていたり長文で自分の思いを発信したり、そういう作り手の熱量が強ければ強いほどきっと私たちの熱量も高くなると思うんですよね。

える:私たちは熱いを通り越して熱苦しいけどね!ノアちゃんはいつも長文を嫌わずしっかり読んでくれてるよね。いつもありがとうね。

ノア:思いが伝わる文章だから好きなんです。インスタにあんな長文書く人がいるんだってびっくりしましたけど、私は好きです。こんな風に100%でいてくれる服屋さんがもっと周りに増えてくれたら良いな、とも思います。

える:それはなかなか難しいかもね。本来はそうあるべきだけど、あまりにも簡単に服が作られて売られて買われている時代だから。熱なんかなくてもあるふりをしてブランドが息をできるの。熱量があるふりをするためにプロを雇って、思いや考えを構築してもらったり発信してもらったりしているのなんて、珍しくないって聞くもんね。

ノア:うん。私はLEBECCA boutique以外、私が普段着ている服の背景を知らないです。それを発信してくれる人もまわりにはいない。LEBECCA boutiqueしかないし、えるさんしかいないんですよ。簡単に安く手に入る時代だからこそ、作り手側がもっと服の背景を発信してくれたら良いなって思います。そうやってSNSを使ってくれる人がえるさん以外にも増えたら、“ゴミになる服”って減ると思うんです。ファッションブランドのプレスの方と仲良くなってもこのあたりは知れないことの方が多い気がする…。

える:そこまで言ってくれるのは嬉しいな。私も今まであまりそういう人物に出会ったことがなかったから、ブランドなんて新しく作っても意味がないと思ってた。それでもやる機会に恵まれたから、私は私が納得できるようにやっているんだけど。

ノア:絶対に続けてください。誰かが大事にしているものなら自分もって思える人は多いと思うんです。

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佐藤ノアが『コラボ』をしない理由

える:ノアちゃんと同じ20歳くらいの子で「作り手側の話が聞きたい」「思いや考えを知りたい」「熱量を感じたい」なんて人いるものなの?私そんなハタチ、あまり見たことないよ。

ノア:いないかもしれないですね…。周りの子と話す時は「これ可愛いね」ってだけ。でもそれを楽しんでいます。それがどこで誰に作られているとか、ここの色や形はあえてこうしているんだ!みたいなのは、みんな知らない。知ろうともしない。

服飾学生とか専門知識のある人は興味があるのかも知れないけど。そこまで受け取れている人はほぼいないな、と思います。私はモデルでもバンドでも服に関わる機会がとても多いので、考えたり影響を受けたりすることもその分多い。だから感じることも多いような気がします。

える:そこまではっきり言えるなら、自分で服づくりをしようとは思わないの?声をかけられたりしそう。

ノア:そういうお声がけはあります。でも、今まで一回もやったことがない。正直言うと私はあまり興味がない。色々なブランドで有名な人を起用して服を作りましょうっていうのはあると思いますけど、私はそれに対してちょっとマイナスな気持ち。本当に服が好きでやっているのかな?って思ってしまいます。きっとこの人毎日違う服着てるし、服を愛しているというわけではなさそうとかまで思っちゃう。

える:清々しいほどはっきり言うね。

ノア:本音ですよ。服に対する思いが強い人がやるんだったらそれは説得力があるし、インフルエンサーとしてもすごく素敵なことだと思います。私は興味がないことを興味がある風に見せるのがすごく嫌。そこは嘘をつきたくないですね。興味が出たらやって見たいと思うのかも知れないけど…今のところすごくハードルが高いです。

える:大体の人が飛びつく話題なのに、頭と心で“やらない”と答えるのはすごいことだよ。お仕事の条件とかそういう理由で断るならある話かもしれないけど、強い意志を持って本人がNGを出すのって聞かない話かもしれないな。ノアちゃんくらいの世代の子では特に。

ノア:安易にやりたくないんです。安っぽくなるし、服がかわいそう。お互いの本質を知ってからなら良いと思うけど、大体違う気がする。

える:意志が強いし、こだわりがあるんだね。自分の活動にしっかり責任感があると感じるよ。

ノア:そうですね、やりたくないことははっきり言います。でも、やりたいことも言いますよ。

例えば服の話だったら、私はパジャマなら是非とも作りたいんです。外で着るお洋服より家で着るものと過ごす時間が長かったから、思い入れが強いんです。外に出るためのお洋服を作るのはあまり興味がないんですけど、家から出なかった時期があるからこそルームウェアには興味があります。

える:ノアちゃんの名前で売るんじゃなくて、ノアちゃんの思いや考えで売れたら最高だよね。インスタ映えとかフォトジェニックとかじゃ語れないよ、ノアちゃんの魅力は。ノアちゃんと話していると革命を起こせそうな気持ちになるよ。

ノア:嬉しい。思いの強い人とならコラボレーションしたいです。

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“思い出の服の祭典”出演にあたって思うこと

える:最後にもう1つ聞かせて。この連載は、ノアちゃん率いる『suga/es』が出演してくれる『instant GALA 〜思い出の服の祭典〜』に連動しているんだけど、ノアちゃんは4/22当日どんな服を着て来るの?

ノア:多分ですけど、ワンピースですね。メンバーもみんな大好きなアイテムだし、初めてのMVで着たのもワンピースだったから、なんとなくそうなる気がする。

※動画が見られない方はこちら

える:来場してくださる方々には何を着てきてほしいとかある?

ノア:きっとすぐに浮かばない人もきっと多いと思うんです。でもそれは、何を着てきても私たちが“思い出の服”にしてあげます!

える:100点の回答!嬉しい。

ノア:やった(笑)でもね、本当にそう思うんです。

える:うんうん。そうなんだよね、今は「これが思い出の服」って言い切れるものがなくてもいいの。このイベントをきっかけにそういう愛せる服を1つでも2つでもクローゼットにおいてくれるようになったら素敵だし、そういう服を持っている自分っていう存在を何より愛おしく思ってほしいなって思うんだ。服のことを考えているようで、服を大切にしているようで、自分のことを考えて大切にすることに直結する。思い出を大切にするってそういうことだから。

ノア:そんなイベントの第一回目に出させてもらえるの、嬉しい。たくさんの人に来てほしいですね。

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これだけの影響力と若さを持つ人が、きちんと自分の武器を理解して自分自身を使いこなしている感覚、話を聞いていて実に清々しいです。本当に素晴らしいことだと思います。革命的なものを感じるし、ものすごく賢い人。でも「記憶の一着」の話では彼女の持つ影の部分が見え隠れしていて、インタビュー中は言葉に詰まる瞬間もありました。

そのノアちゃんの一瞬の表情に「人間としての痛みもきちんと知っている人なんだな」と感じました。あぁ、早く4/22になってほしい。彼女たちのステージを体感したいです。

suga/es 佐藤ノア

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suga/es ボーカル
2018年2月WWWでの2ndワンマンライブも盛況を収める。先日の対バンイベント「Virgin Suicides」よりZINE「FLOWER」発売。
次回のワンマンライブは9/2 Shinjuku LOFT。バンド活動でもLEBECCA boutiqueを衣装として着用させていただいている。雑誌bisなどでモデル活動、YouTubeやメデイア出演など多岐に渡り活動中。

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Eru Akazawa(赤澤 える)

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LEBECCA boutiqueブランド総合ディレクターをはじめ、様々な分野でマルチに活動。
特にエシカルファッションに強い興味・関心を寄せ、自分なりの解釈を織り交ぜたアプローチを続けている。
また、参加者全員が「思い出の服」をドレスコードとして身につけ、新しいファッションカルチャーを発信する、世界初の服フェス『instant GALA(インスタント・ガラ)』のクリエイティブディレクターに就任。

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instant GALA

クラウドファンディング

あの日、あの時、あの場所で、あなたは何を着ていましたか?「載せたら終わり」の新時代、載せても終わらないものは何ですか?服への愛着・愛情を喚起し、ソーシャルグッドなファッションのあり方を発信する、思い出の服の祭典。
4月22日(日)渋谷WWW Xにて初開催です。

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▶︎これまでの赤澤えると『記憶の一着』

#006 マカロニえんぴつ はっとりの『記憶の一着』

#005 読者モデル 荒井愛花の『記憶の一着』

#004 音楽家 永原真夏の『記憶の一着』

#003 モデル 前田エマ の『記憶の一着』

#002 れもんらいふ 千原徹也の『記憶の一着』

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All photos by Ulysses Aoki
Text by Eru Akazawa
ーBe inspired!

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