そのペニスは生きている?死んでいる?「見た目主義」な社会の体に対するイメージをひっくり返すアーティスト|GOOD ART GALLERY #011

Text: Noemi Minami

Photography & Artwork: ©Emma Kohlmann

2018.4.6

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フェラチオをしている赤い人、されている赤い人。
この絵をみて二人が、あるいはどちらかが、女だと思っただろうか。それとも男だと思っただろうか。

さて、この二人は、女でもあり、男でもあり、両方でもある。

古典的なポルノにインスピレーションを受けながら、体や性別、そしてセックスにまつわる既存の価値観をひっくり返すことを試みるアーティストがアメリカにいる。

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Emma Kohlmann(エマ・コールマン)

既存の社会の価値観に、波紋を起こすアーティストとはEmma Kohlmann(エマ・コールマン)。彼女の絵は性的で、どれも抽象的で力強く、そしてどこか悲しげなのが特徴だといえるかもしれない。アメリカ、マサチューセッツ州のハンプシャーカレッジで美学、フェミニスト・セオリー、絵を専攻したのち、現在は画家、Zineパブリッシャーとして活躍している。

社会派なアーティストを紹介するBe inspired!の連載GOOD ART GALLERYでは今回、エマの体や性別、そしてセックスに対するユニークな視点について伺った。

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ーまず最初に、自己紹介をお願いします。

ハロー、Be inspired! Emma Kohlmann(エマ・コールマン)です。ニューヨーク生まれで今はニューヨークとプロビデンスとボストンにほど近いマサーチューセッツ州のある変わった街に住んでる。画家で、Zineパブリッシャー。Zineは7年前に遠く離れて住む人たちとつながるために作り始めた。当時はインターネットで友達を作って、その子たちにZineを送ってた。いつもあなたのことを考えているよって伝えるために。主に水彩と墨を使って作品を作っています。キャンバスとアクリルを使うこともある。東京のKIT Gallery、コペンハーゲンのV1 Gallery、あとアメリカのいくつかのギャラリーで展示したことがある。

ーエマの作品には裸がたくさん出てくるよね。過去のインタビューで「自分が興味深いと思う体の一部を描いていて、その部分が生きているのか、死んでいるのかわからない」って言ってたのがとても印象的でした。「生死がわからない体の一部」を通して何を表現しているの?

私の作品は大抵、 既存の一般的な「体のイメージ」を抽象化しようとしているの。世の中は「見た目主義」だから、それを緩和させられたらいいなって思ってる。世の中に存在する「体のイメージ」とは違うものを提示したい。体の中に私たちが「美しい」って思えない部分ってあるでしょ。そんなところに興味があって、考えるきっかけを作りたい。最終的には、多様な体が受け入れられるようなインクルーシブさを作ることが目標。

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ー「女性の体が性的な物として見られることを変えたい」とも言っていたよね。エマの絵の中に出てくる女性に見える裸はどんな視線で見られたい?

作品の中で、パワーがシフトするってことを表現するのが私にとってとても重要なの。私が描く体のほとんどは女性、でも同時に男性でもあるし、両方でもある。性別を、もっとソフトで優しいものと捉えたい。力強い作品でありながら、「男性的な視点」だったり「性別に構築された価値観」をひっくり返すようなイメージを生み出したい。

ー性別についてエマはどんな考えを持ってるの?社会はどんな考えを持つべきだと思う?

欧米での性別に対する考えに関していえば、独断的。生まれた瞬間から「あなたは男/女です」って決めつける。色を与えられてそれに見合ったルールを押し付けられる。あなたは可愛くない、太り過ぎ、男らしくない…。でもそれぞれのルール(男らしさや女らしさ)に沿った期待を満たすことなんて誰もできない。常に何かが足りない。そんな考え方に抗おうとしても、プレッシャーから逃れることはできない。これって、生まれてきた体と心の性別が違う人だけに言えることじゃなくて、自分は男だ、女だって生まれてきた体と心が一致している人も同じで、誰も「男/女」の理想的姿を満たせる人なんていない。 アーティストとしてそういった既存の考え方に疑問を投げかけたい。

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ー古典的なポルノが作品のインスピレーションなこともあるんだよね?どうして古典的なポルノが好きなの?

ポルノって興味深いと思うの。性欲のはけ口って必要でしょ。なのにセックスやポルノ、快感に対して「恥」がまとわりつく。それって残念なこと。誰かがセックスしてなければ、私たちは今ここに存在できてないのに。ポルノは、作られるプロセスにも興味があるんだ。特に古いやつで、誰かの寝室で作られたようなやつとか。なんだか古いやつを見ると、覗き見しているような感覚に陥るの。芸術作品のようにも感じる。とにかく、セックスにまつわる否定的な印象を取り払いたいとは思ってる。性欲のはけ口が男尊女卑的な思想から生まれたものじゃないものがあればいいのにな。

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ーエマの作品の素敵なところは力強いのに、同時にどこか悲しそうなところだと思います。アートを通して何を表現しようとしているの?

悲しみと力強さは作品に映し出したいこと。その方がリアルじゃない?私たちが生きている体を取り巻く「苦痛」があるでしょ。それぞれの人がストーリーを持っていて、光があれば、闇もある。そう言った感情を呼び起こしたいの。その分野で常に新しいことを学ぼうとしているし、私の作品を見た人にも考えて欲しい。自分の空想の世界を現実のものにしたい。それってコミュニケーションとアートでしかできないことなの。

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体、性別、セックス。社会にはそれらに対する「既存の見方」がある。現状それはインクルーシブなものとはいえないことは確かである。日本に関していえばそれは顕著で、「細さ」が祝福され、性別は「男と女」が当たり前。セックスについての話がオープンにされることは珍しい。この傾向は、そのなかに当てはまらない人々を無意識に排除してしまっているのかもしれない。エマの作品は、そんな状況に一石を投じ、根本的な見方を変えるきっかけになってくれる。

Emma Kohlmann (エマ・コールマン)

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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