#15 持っている服を体にぐるぐる巻き。「自分の選択した服」が持つ意味を視覚的に考えさせる写真家|GOOD ART GALLERY


自分のクローゼットやたんすの中にどれだけの服が入っているのか、すべて取り出して確認することがあるだろうか?毎日の着る服に困らない生活をしている人なら、ミニマリストではない限り、すべてを把握できていないかもしれない。

社会派のアーティストを紹介する連載「GOOD ART GALLERY」で今回紹介するのは、自分が所有する服をすべて自分の体に巻きつけるというアートで、見る人にモノの社会的意味を考えさせるアーティストのリビー・オリバー。

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リビーはカナダのヴィクトリア大学で写真やイラストレーションアートを、また過去にほかの大学で国際開発やジェンダーについて学んだバックグラウンドを持つ。大学を卒業した現在は、アーティストでフリーランスフォトグラファーをしており、コミュニティのためのアートスペースを運営したり、アートコミュニティの多様性を高めようと活動したりしている。ここでは、そんな彼女の作品「Soft Shells」(ソフト・シェルズ)についてを中心にインタビューした。

ーなぜアーティストになろうと思ったの?

私がアーティストになりたいと思ったのは、人がもっと目を向けるべき社会の側面に光を当てることに興味があったから。各地に住む人たちと視覚的にコミュニケーションをとって対話を促進できるアートの可能性には、ワクワクする。社会的な情報を、関連したビジュアルに落とし込む過程にも興味があるし、その過程が一番好き。

ー作品「Soft Shells」を通して伝えたいことは何ですか?ファッションだけではわからない内なる魅力が、人ぞれぞれには存在するってことを言いたいの?

それももちろん伝えたいことの一つだね。人はとても複雑で、他人を完全に理解するのは難しい。こうだと予想しても絶対に外れてしまう。そういう意味では、この作品は視覚的な要素の持つ力の大きさをテーマにしてる。私たちが他人を見るとき、少なからず服から受ける印象からその人を判断していることってあると思うから。

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ーほかで受けているインタビューを見ていると、服選びに「社会的制約」があるってことを作品で言いたいみたいだけど、具体的にはどんな制約が存在している?

私たちは社会的制約と常に向き合いながら生きている。だけどそれは、人や暮らす場所によって変わってくる。たとえば、男性はスカートではなくズボンだけを履くべきだという考えを押しつけられている(それか社会的にそれが正しいと教えられてきた)。同時に男性がどのくらいその“男性の規範”に当てはまろうとするかは、その人の人間関係や住んでいる国、年齢などによって、変わってくると思う。結局のところ私たちは社会的動物で、他人に受け入れてもらいたいから、「どんな服を選ぶか」の決断を人に情報として発しているって面もあると思う。

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ー「社会的制約」をテーマにした「Soft Shells」には高齢の男性がネイルをしている写真もあるけど、それは制約から離れた自由なファッションではないのかな?

それももちろん、ファッションの自由を表している。ファッションは、他人が視覚的に見る自分の見た目をコントロールすることのできる領域の一つ。選択にはいつでも自由がある。その選択の自由はもちろん、何を着たら人に認められるか、社会的に何を着ることを求められているのかという社会的制約によって、選べる選択肢が限られてしまっているけれど。ネイルをしている男性は、私たちが人と違うように見える、枠組みに当てはまらない、ユニークな選択をしていても、ほかの社会的集団の人に認めてもらいたいと思ってしまうという皮肉を表している。

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 山積みにされた服に埋もれている人たちを見ていて、所有している服が自分自身に覆いかぶさっている様子を想像してしまうのは筆者だけではないだろう。作品で視覚的に表現されているように、通りですれ違うだけで言葉を交わさない他人については特に、身にまとっている服の発するメッセージは内面から伝わってくるものよりはるかに強い。

 どんな服を選んで着るかによって自分の社会的な見られ方が変わるからと、それをひどく気にする必要は必ずしもないけれど。それでも、もし着る服を選ぶ自由があるなら、自分が何を着るかが社会的に何を意味しているのかを考えることは、自分のおかれている社会の構造を理解することにつながるという意味で重要ではないか。

Libby Oliver(リビー・オリバー)

WebsiteInstagram

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All photos via Libby Oliver
Text by Shiori Kirigaya
ーBe inspired!

 

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