p.21 「インド人にもカレー嫌いな人はいる」。“ウコンの力”でインドの固定概念を吹き飛ばす24歳の起業家|『GOOD GOODS CATALOG』


 

ターメリック(ウコンと同じ植物)といえば真っ先に思いつくのがカレー。だが、そのターメリックが料理以外にも着色料、薬品など幅広く使われていることを知っているだろうか。また近年ではアンチエイジングなどの美容効果があることからターメリックラテ(ターメリックとミルクを合わせたもの)をメニューにおいているカフェもある。

そんなターメリックはインドが原産であり、その生産量と輸出量は世界一。それゆえインドでは安価で手に入るのだ。しかしターメリックブームのアメリカでは、ターメリックの栽培地域が限られていることもあって、インドより断然高い値段で売られている。さらに、栽培するインド人農家には労働に見合った賃金をもらえていない人たちがいるのだ。

この商品となる製品を栽培する生産者よりも、販売者の方がはるかに多くの利益を得ているという事実を知れば、フェアじゃない取引を行う販売者たちに怒りが湧いてこないだろうか。だが、そんなターメリック産業における不平等な状況を変えようとするひとりの若者がいる。

width=“100%"

あなたは、買い物するときどんな基準で商品を選んでいるだろうか。もしあなたの気に入っている商品を販売する企業が、不正を働いたり環境に悪影響を及ぼす事業に資金提供したりしていたらどうするだろう。

企業や商品作りにおける考え方に賛同できない場合、その企業やブランドの商品を「ボイコット(不買運動)」するという方法がある。これは買い物が「投票」に例えられるように、消費者の力で信頼や賛同のできない企業の商品にお金を出すのをやめ(票を入れるのをやめ)、企業の経営を成り立たなくさせ社会をより良くする(より良い企業に投票する)というもの。

そこであなたがボイコットしたいとき、またはボイコットとは関係なく単純に人や環境に良い商品が欲しいときに、参考となる商品カタログをBe inspired!が作成することを決意。その名も「GOOD GOODS CATALOG(グッド グッズ カタログ)」。

インド・ムンバイ育ち。アメリカ在住の24歳、ミレニアルズ起業家

width=“100%"

 インドのムンバイ育ちでアメリカ在住のSana Javeri Kadri(サナ・ジャヴェリ・カドリ)は、2017年8月にDiaspora Co. (ディアスポラ・コーポレーション)を設立した。

 Diaspora Co.ではインドの南部ヴィジャヤワーダから直輸入したターメリックを販売している。香辛料の取引において不公平な賃金の支払いがあるという事実を知ったサナは、公平な取引によってインドの農家に最大限の利益をもたらすことを目的に起業したのだ。Diaspora Co.の製品は4代続くターメリック農家のものを取り扱っており、クルクミン*1が豊富で品質の高いものである。

 サナたちのウェブサイトを見てみると、ターメリックの活用法はさまざま。アメリカで流行しているターメリックラテなど飲料から、ターメリックを入れた料理やお菓子、ターメリックを染料として使い染められたインドの伝統衣装のサリーまでが紹介されている。

(*1)クルクミンとはターメリックに含まれている黄色の色素で、ポリフェノールの一種。抗酸化作用や肝機能の向上、消化不良の改善や美肌効果などが期待できる

width=“100%"

width=“100%"

width=“100%"

「インド人なら皆、カレーが好き?」ステレオタイプ的なインドからの脱却

 インド人はみなカレーを食べ、チャイを飲んでいるというようなイメージがあるかもしれないが、インド人にもカレーやチャイが嫌いな人だっている。どの国や国民性にも固定観念が存在するが、そのような固定観念を払拭することも、彼女の経営方針の一つのようだ。

 アメリカではターメリックラテがカフェメニューとされているが、インドでは薬というイメージの方が近いそうだ。日本の日本食と海外の日本食がちょっと違うことと似ているかもしれない。

 サナの場合はアメリカに住むインド人であるからこそ、本来のインドの姿とアメリカにおけるインドのイメージの両方を理解している。しかしアメリカ人のインドに対するイメージや固定観念を強調するような製品をつくるわけではなく、公平でありのままの「made in India」を売っている。

width=“100%"

 固定観念をなくすという点で、彼女がクィア(性的マイノリティの総称)であるという点も主張している。いまだに性的マイノリティの社会的な立場は弱く、彼らに対して偏見をもつ人は少なくない。そのため、性的マイノリティであることを大々的に主張することで、それに対して理解のない人々から批判や差別的な発言を受けるかもしれない。しかし当事者であるからこそ同じクィアの人々の立場を理解でき、自らが声をあげ発信していく人間となって、そのようなの人々の社会的な立場を確立しようとしている。Diaspora Co.に はこのような彼女の思いやアイデンティティがそのまま反映されているのだ。

身近なところから「フェアな社会」の実現を目指す

width=“100%"

 ターメリックというインドの代表的な輸出品を通じて社会に対する不平等を訴えて、多くの人が幸せな生活を送れる社会を目指しているサナ。自身のアイデンティティを大事にし、それらを活かした取り組みをすることで、きっと救われる人々はいるはずだ。これまでの社会の価値観にはまらず、「新しい価値観を提示するビジネス」のあり方こそ、これからの社会を担っていくミレニアル世代の持続可能な社会へ挑戦といえるのではないだろうか。

Diaspora Co.

WebsiteInstagram

width=“100%"

▶︎オススメ記事
p.20 アパレル企業が「ゴミ野菜」に手を出した。フードロスを減らす、“着る野菜”とは。|『GOOD GOODS CATALOG』

p.19「“ブサイク野菜”をインド料理へ」。チャツネで年間700kgもの廃棄野菜を救うファミリー。「Eat Me Chutneys」|『GOOD GOODS CATALOG』

All photos by Diaspora Co.
Text by Shizuka Kimura
ーBe inspired!

 

turmericmilk
この記事が気にいったら
いいね!しよう
Be inspired!の最新情報をお届けします