「私の髪色は生まれつきこの色です」と証明させる“地毛証明書”への違和感

Text: HINAKO OHNO

2017.5.9

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あなたの髪の毛は何色だろうか?

アジアン・ブラック、ブロンド、赤毛に、アフロ、ドレッド。髪の毛の色や髪型は、人種やルーツをあらわしたりするアイデンティティを形成する要素でもあり、自分の個性を表現するためのファッションにもなったりする。

そんな個々人の大事な体の一部である「髪の毛」の染髪やパーマを日本の中学や高校では、禁止している学校が多い。生まれつき「黒髪」が一般的である日本人だが、茶色がかった色の人もいるし、癖っ毛で天然パーマの人もいる。そんな「生まれつきの髪」が故意ではなくとも校則違反のように見えてしまう生徒に対し、地毛であることを証明する「地毛証明書」の提出を求める学校も存在するのだ。地毛証明書の形式はさまざまだが、保護者から「我が子の髪は生まれつきです」と印鑑をもらったり、更には子供の頃の写真を添付して証明させるケースもある。

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Photo by Emma Simpson

出る“黒髪ストレート以外”は打たれる

確かに、日本では「髪の色が明るい=素行が悪い」という価値観が根付いている。髪色が明るい人に対して「チャラい」という印象を抱く人も少なくないだろう。しかし、「黒髪ストレートでなければならない」という価値観を教育現場で押し付けてしまうのは少々危険なのではないか。

生まれ持った個性を“違反”の対象とみなし、その生徒にのみ「地毛証明書」を提出するのは差別に近いものを感じる。また、ボーダレスが叫ばれる現代社会で、「黒髪ストレート」以外は全て排斥する行為を教育現場で行って「“違い”を受け入れる」という人間性を育む教育は果たして成り立つのだろうか。

“自由”にすることで“人が育つ”教育

教育現場で「地毛証明書」を提出させるほどシビアに取り締まり、黒髪でなければいけないと押し付ける必要があるのかどうかを問いかけたい。なぜなら、“禁止”から生徒を解き放つことで感性豊かであったり、勉強ができる人材が育っていく教育もあるからだ。そんな日本の学校を2校紹介したい。

1校目は、都内トップの進学校である麻布学園には「校則」が一切ない。服装や髪の毛の色はすべて自由であり、茶色に留まらず髪色が赤や黄や青の生徒がいるのだとか。しかし、この高校は「自由な生き方」をさせるのが方針。「自由」に責任はもちろん伴う。つまり自由の中で社会とのバランスを“自分で考えて”行動することを委ねている。

この校則なしで“自分で考える”力を育てている方針が麻布学園を東大合格者数4位の進学校にさせる1つの要素なのではないか。(参照元:「謎」の進学校麻布の教え

そして2校目は、自由の森学園。その名の通り自由な学校で、「一人ひとりをかけがえのない“個”として育む教育」を掲げ、校則も定期試験もない。麻布学園のように「偏差値が高い」学校ではないが、クリエイティブな人材を多く輩出している。

卒業生には歌手、コラムニスト、作家、俳優などマルチな才能で話題の星野源氏。小柳ゆきやmiwaのプロデュースをつとめた片岡大志氏。「ブラックラグーン」で知られる漫画家の広江 礼威氏などがいる。その他ダンサーやライター、俳優やミュージシャンなどバラエティにとんだ人材が並ぶ。

“校則で縛らない”ことによって感性豊かで自己表現を厭わない人を育てているようだ。(参照元:自由の森学園

「地毛証明書」は必要か否か

“自由”な教育がされる学校がある一方で、染髪を禁止し、「容姿が違うのは私の意思でやっているわけではない」と証明する「地毛証明書」を提出させる学校がある。

現代社会の教育現場に染髪禁止が多く存在することはともかく、「地毛証明書」まで本当に必要なのだろうか?

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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