「あなたの記憶の一着は何ですか?」思い出の服の祭典『instant GALA』が渋谷で開催

Text: Mizuki Ozawa

PHOTOGRAPHY: ©️雷神inc.

2018.5.3

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たくさんの服が捨てられる世の中で、残る服って一体どんな服だろうか。
そして、それはどうして残るのだろうか。

そんな「残したい」「捨てたくない」「誰にも譲りたくない」という思いが込められた、あなたの思い出に残る「記憶の一着」がドレスコードの思い出の服の祭典『instant GALA』が4月22日(日)、渋谷のライブハウスWWWXで開催された。

▶︎連載・赤澤えると『記憶の一着』はこちら

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主催者の赤澤えるさんと壁一面を服で装飾されたイベント会場

「記憶の一着は何ですか?」から始まる会話

“何年間も着ている無地の白いTシャツ”
“25年前にお母さんがスペインで買い、譲り受けたバック”
“古着の着物の布地をリメイクして作ったジャンプスーツ”
“赤澤えるさんのブランド「レベッカブティック」で買った赤いワンピース”
“ロンドン留学中に古着屋で購入し、卒業式にも着たお気に入りのシャツ”
(ちなみに筆者は“小学生の時から着ている黒いカーディガン”)

今回、初の試みである思い出の服の祭典『instant GALA 』は、ライブ・フリーマーケット・写真展など多彩なコンテンツが用意され、会場には思い思いの「特別な服」を身に纏った人で溢れかえった。イベントには、現在進行中の赤澤えるさんの連載で紹介した4組のアーティストが参加し、各々のアーティストのファンやコンセプトに共感した人々が約250人も集まった。

会場では見知らぬ人とも、名前の紹介よりも先に「記憶の一着は何ですか?」という質問から会話が始まり、今さっき会ったばかりなのに、少しだけその人を知った気になる感覚が新鮮なイベントだった。

その人が身につけている服のストーリーを知って、自分の「記憶の一着」のストーリーを語る。身につけている物たちが会話のきっかけになり、ファッションがその人の一つのアイデンティティとなることも実感した。

世界初の「服フェス」が届けるメッセージ

今回のイベントの主催者の一人でもあるラフォーレ原宿に店舗を持つ「LEBECCA boutique(レベッカブティック)」でディレクターとバイヤーを務めている赤澤 える(以下、える)さん。会場で赤いワンピースを身に纏い、ひたすらにステージを見つめていたのが印象的だ。

彼女は服の買い付けのために訪れたLAで見た「山積みにされた“布の塊”」に衝撃を受け、自身のブランド・レベッカブティックやSNS、メディア、イベントなどで「大量生産される服の問題」を訴え続けている。

▶︎赤澤えるのインタビュー記事はこちら

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また、他の主催者の1人、エシカルファッションブランド「INHEELS(インヒールズ)」の布田 尚大さんは、「アーティストも、参加者も『思い出の一着』を着て参加する服と音楽を混ぜた新感覚なフェスだったと思うけれど、そのなかでこれだけの人が来てくれたのは凄いことだと思う。コンセプトに共感した企業や団体からコラボレーションのお話も頂いており、今後も様々な形で展開していくことを決意した」と今回のイベントを振り返る。

イベントの裏テーマには、生産背景を考慮した消費の考え方でもある「エシカル」というのメッセージがある。エシカルというと、真面目・堅苦しい・閉鎖的・ダサい等のイメージが先行してしまいがちだが、ファッション関係、音楽関係、メディア関係の人から、学生まで世代、業界関わらず多様な人が集まっている印象を受けた。ライブ会場も賑わっており、一時は入場に列ができていたほどだった。

記憶の一着を身に纏いステージに上がった4組のアーティスト

ライブには、えるさんの連載『記憶の一着』で紹介した4組のアーティストが参加。参加者と同様、記憶の一着をドレスコードにステージへ上がった。

 
・suga/es

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suga/es 佐藤 ノアの『記憶の一着』はこちら

・SHE IS SUMMER

SHE IS SUMMER MICOの『記憶の一着』はこちら

・永原真夏+SUPER GOOD BAND

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永原真夏の『記憶の一着』はこちら

・マカロニえんぴつ

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マカロニえんぴつ はっとりの『記憶の一着』はこちら

参加アーティストの1組、suga/es・ボーカルの佐藤 ノアさんはバンドメンバー全員で赤澤えるさんのブランド、レベッカブティックの洋服を着用して出演。また、SHE IS SUMMERのMICOさんは、レベッカブティックのオリジナル商品”私たちのワンピース”のテーマを元に彼女が作詞をした曲『私たちのワンピース』を披露した。

マカロニえんぴつ・ボーカル/ギターのはっとりさんは、「物を捨てられない、服を大事にするっていう自分の想いは、音楽に通じる感情。一生大事にして欲しいし、されたい」と会場に向かってメッセージを投げかけた。

えるさんは、「アーティストがライブなどで同じ服を着るのは一回きり、でも思い入れはたくさんある。そういう服にもう一回出番を持たせてあげられたのが嬉しい」と開催を振り返った。

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ムーブメントを一回きりにしない

フリーマーケット型の販売スペース「FASHION STORY MARKET」では、古着等が並べられ、えるさんが手掛けるブランド、レベッカブティックもブースを出展。普通のフリマ、古着屋と違ったのは、金額の他に出品者の名前とその服を買った時、着ていた時のストーリーが書いてあったことだ。次の購入者が、その服を纏って、また新たなストーリーを紡いでゆくその目に見えない繋がりが、とてもあたたかいと思った。

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可愛いだけじゃない、かっこいいだけじゃない、「好き」だから大切にする。今回参加できなかった人も、少しだけ自分のクローゼットを思い浮かべて考えてみて欲しい。

あなたのお気に入りの服はどれだろう?どこから来たのだろう?好きなものやお気に入りを大切にするという“単純なこと”が立派なエシカルという考えなんだ、そんなことに気づかせてくれるイベントだった。

えるさんは最後にこう締めくくる。

こういうイベントを持続的に続けて行くことが大事。小さくても、大きくても、例えば企業と一緒にとか、在り方はいろいろでいいから、一回きりにしないでとにかく続けたい。服への思いを伝えたり高めたりする方法は、服を販売・購入するということだけではないと思う。だからこそこうして、私なりの「エシカルファッション」を積極的に発信していけたらと思う。大きな一歩を踏み出すことができて嬉しい。

instant GALA

Website

あの日、あの時、あの場所で、あなたは何を着ていましたか?「載せたら終わり」の新時代、載せても終わらないものは何ですか?服への愛着・愛情を喚起し、ソーシャルグッドなファッションのあり方を発信する、思い出の服の祭典。

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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