インターネットの依存性はドラッグを超える。日本人の半数が知らずのうちに陥っている「ネット依存」の闇

2017.6.15

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必要な情報が簡単に手に入れられて便利なインターネット。時間があればついつい、SNSで友達の近況をチェックしたり、気になるお店の情報を調べたり、誰かからメッセージが届いてないかとスマートフォンを見てしまわないだろうか。

そんなことをしている人が気づかないうちになっているという「ネット依存症」には、ドラッグと同じくらいの中毒性があると、研究の結果わかったそうだ。

日本人口の半分近くが「ネット依存」

まずは「ネット依存」の定義を確かめたい。実は、現時点では明確な診断の基準がなく、スクリーニングテストで依存の程度を判断し、それを参考に対策をとるのだという。程度の差はあるにせよ、インターネットを使っていないと落ち着かないような状態が広く「ネット依存」と呼ばれている。(参照元:久里浜医療センター, 総務省

2016年の調査によると、ネット依存傾向が強い人が10代以上の日本人全体の8.2%。だが、中程度の依存傾向の人は46.1%もいる。また、10代から20代の若者ではそれぞれ10.3%、55.2%と世代別に見ても最もネット依存の傾向が強い。ちなみにこれらネット依存の傾向は、アメリカやイギリスのほうが少し強い。(参照元:総務省

「ドラッグ依存」と通じる、「インターネットの依存性」

私たちはどうして、インターネットを使うのがやめられなくなるのだろう。そんな疑問を解決してくれる、とある研究結果が先日発表された。科学雑誌「PLOS ONE」に掲載された、「インターネット使用による生理的な変化」に関する研究で判明したのは、「ネットの依存性はドラッグの依存性と似ている」という事実だ。これは驚くべきことながら、「ドラッグは依存性が強いもの」という認識を持っている多くの人にとって納得してしまうものではないだろうか。

Photo by Jacob Ufkes

Photo by Jacob Ufkes

この研究で明らかになったのはインターネットを使用していないときの禁断症状が、アヘンやマリファナ、アルコール依存の禁断症状と似ていることだけでない。インターネットの場合、ドラッグやアルコールよりも、例えば「自由にスマートフォンが使える休憩時間が終わる数分前」など、使用をやめる直前でのストレスが強いのではないかと考えられるのだという。(参照元:PLOS ONE, Broadly.

「ネット依存」が子供の脳に与える「コカイン依存」のような悪影響

先ほどと同雑誌に掲載された「思春期のインターネット依存症と白質異常」に関する研究によると、「ネットに依存すると、コカインに依存した状態と同様の悪影響が脳に生じる」こともわかっている。

ネットに依存した傾向のある子供の脳には、コカインやヘロイン、マリファナのようなドラッグ、メタンフェタミンやケタミンなどの麻薬成分の強い物質に依存した人の脳と同様の、脳の白質(脳の神経細胞の連絡路)への異常が見られるというものだ。

また同研究によると、ネットに対する依存は白質異常を生じさせる恐れがあるだけではなく、それにともない何らかの「行動障害」を起こす場合もあるというのだ。本研究は脳機能の発達段階にある思春期の子供に焦点を当てたものだが、成人の脳にも悪影響を及ぼしてもおかしくはないだろう。(参照元:PLOS ONE, CBS News, 脳神経外科 澤村豊のホームページ

社会全体で考えるべき「ネット依存」問題

電車に乗っているとき、ふと車内を見渡すと乗客のほとんどがスマートフォンやタブレット端末、ときにはパソコンなどの画面を見つめているなんて珍しいことではない。ネット依存は、ドラッグ依存よりもはるかに身近で、半数以上の日本人が実際に患っている“現代病”なのだ。

インターネットが生活する上でも仕事をする上でも不可欠になった今では、個人単位だけでなく、社会全体として考えていくことが必要である。インターネットとの関わり方、そして「ネット依存」の問題を改めて考えてみてはいかがだろうか。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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