性的、人種的、宗教的マイノリティのために「映画」で戦うふわふわガール。


(Photo by Reo Takahashi)

(Photo by Reo Takahashi)

LGBTQアクティビスト。
 
シリアへの留学経験者。
 
自らの苗字の改名者。
 
そして、若干26歳して企業の副社長。
 
そんな彼女の名前はアーヤ藍(あーや あい)さん。
 
「自分らしくいること」を徹底的に追求する女性だ。
 
今回、Be inspired!ではアーヤさんの人生、信念、そして彼女が副社長を務める会社での「映画を通じた社会問題の解決」への挑戦についてお話を伺った。


 
 
「社会にいるのはいいけれど、身近にいたら困る」が日本のLGBTQへの態度。

(Photo by Reo Takahashi)

(Photo by Reo Takahashi)

アーヤさんはLGBTQアクティビスト。
 
自身のセクシュアリティは「Questioning(クエスチョニング)」と呼ばれるものだと教えてくれた。
 
「Questioning(クエスチョニング)」とはLGBTQの「Q」の部分に一般的に値するQueer(クイア)に追加して、最近認識し始められたカテゴリー。
 
その名の通り、自分のセクシュアリティが「?」な人たちの事だ。
 
アーヤさんが自分のセクシュアリティに悩んだのは、はじめてお付き合いした男性のことが好きだったにも関わらず、セックスに気が進まなかったからだそうだ。
 
その人と相性が悪かったのか、男性が嫌なのか、セックスが嫌なのか…「?」だった。
 
セクシュアリティはその「?」の答えによって、ストレート(異性愛者)か、レズビアンか、ノンセクシュアルか…など、変わってくる。
 
そこで彼女は「選ばない」ことを選んだ。
 
セクシュアリティは、人のアイデンティティの一部でしかない。
 
もし魅力的だと思う人に出会えたのであれば、その人が男性なのか、女性なのか、トランスジェンダーの人なのか…は、そこまで重要なポイントではないし、自分自身のことも、「女性だから」好きなのではなく、一人の人間として、好きになってもらいたいとアーヤさんは考える。
 
「それに、自分のセクシュアリティと向き合うことは、自分と向き合うこと。悩み続けること(Questioning)は、自分と向き合いつづけることだから、それでいいかなって」
 
一生続くかもしれない自身との戦いの覚悟を、彼女はほんわかとした口調で何気なく言った。
 
先進国の中ではLGBTQへの理解が低いことで世界でも有名な日本。
 
LGBTQ当事者としてはそんな国で暮らす事をどう感じているのだろうか。
 
「別にすごく差別的なことをされたりとか、嫌な思いをしたことって、私自身はそんなにないんですけど、既成概念に縛られているなっていうのはすごく感じます。自分のセクシュアリティーをオープンにしていても『”彼氏”できた?』って聞かれたり、みんな悪気はないけれど、深く考えずに言っちゃう言葉ってあるかもしれませんね」
 
アーヤさんによると、昨年NHKが行った世論調査では同性婚を認めるべきかという質問に対して、過半数は賛成。
 
それにも関わらず身近にいたら「抵抗がある」と感じると答えた人も過半数いるそうだ。
 
「社会に存在しているのはいいけれど身近にいたら困る、が日本のスタイルなのかもしれません」
 
そうアーヤさんは冷静に語る。

(Photo by Reo Takahashi)

(Photo by Reo Takahashi)

 
 
アラビア語で「奇跡」を意味する「アーヤ」。

(Photo by Reo Takahashi)

(Photo by Reo Takahashi)

ところで「アーヤ」という苗字、珍しいと思った方もいるかもしれないが、実はこれは彼女が選んで改名したもの。
 
大学在学中にシリアに短期留学していた時につけてもらった名前だそうだ。
 
意味はアラビア語で「奇跡」。
 
大学入学までずっと家族中心の人生を送ってきた彼女にとって、入学して直後に両親が別居し、家族がバラバラになったことのショックは大きく、その後も続く家族関係の問題に、生き続けることをを悩むほど苦しんだ時期があったそうだ。
 
そこで彼女は、家族からの”独立”を決意する。
 
ずっと違和感を感じていた、家族への縛りでもあった苗字と別れを告げたのだ。
 
「自分自身になれたような気がするし、呼ばれて、本当に『あぁ自分が呼ばれてる』って感じがしました。新しい人生が始まったような気がしましたね」
 
改名後の心境を聞くと彼女は笑顔でこう答えた。

(Photo by Ai Ayah)

(Photo by Ai Ayah)

今「シリア」と聞くと、みなさんの頭には何が思い浮かぶだろうか?
 
ニュースから流れてくるのは、紛争、テロ、負傷した一般人…と悲劇的なものばかり。
 
アーヤさんがシリアを訪れた時は内戦が始まる前だった。
 
「シリアって元々すごく世界遺産が多いところなので、実際に行ってみると、とても綺麗だし、歴史が感じられる国なんです。人がとっても暖かくて、市場のことを『スーク』っていうんですが、そのスークを歩いてるだけでもコーヒーを飲んでけって誘われたりとか。丁度行ってた時に、日本で東日本大震災が起きたので、全く知らないおじちゃんに道で『日本のために祈っているぞ』って言われたこともありました…。本当に暖かい街でしたね」
 
シリアで過ごした時間について尋ねると、アーヤさんは微笑みながらそう言った。
 
中東に対しては、日本や欧米では偏った報道が多く、「イスラム教」に対して世界中でネガティブなイメージが浸透しているように思われる今日。
 
アーヤさんのように実際に自分でその宗教に、そして文化に触れた人の意見は貴重である。
 
「宗教っていうのが生活に根ざしているのをとても感じました。日本における、『親を大事にしましょう』『人を殺してはいけません』とか、当たり前のように根付いている倫理観っていうのが、あくまでイスラム教徒の場合は本に書かれているだけで特別なことではないのかなって。逆に神様っていう存在があるから謙虚さをもっていたり内戦状態にあっても希望を持って生き続けられている人たちが多いような気がして。私の友達で難民状態になっちゃった子たちも、なんか本当に悲惨な思いをたくさんしてるんだろうなって思うんですけど、実際にメッセージとかでやりとりをすると、誰かのせいにしたりとか文句を言うってことを全然しない。ひたすら平和になって欲しいっていうことしか言わないんです。それって神様の存在は大きい気がしましたね」
 
この留学の経験やその中で育まれたシリアへの愛がアーヤさんを今の仕事へと導いた。
 
「シリアから戻ってきた時はまだ大学3年生ぐらいで、その後まもなく内戦状態になりました。自分が訪れていた思い出の場所が破壊されたり、つい最近まで一緒に笑いながらしゃべっていた友達が難民状態になったりっていうのを実際に経験して、何かしなきゃいけない、何かしたいって思いを持ちました」
 
そんな時、彼女が現在働いている会社UNITED PEOPLEが関わっている映画『ザ・デイ・アフター・ピース』に出会ったそうだ。

 
 
「映画はあくまで、議論をしたりとか、考えるきっかけになる材料になればいい」

(Photo by India Wilds )

(Photo by India Wilds)

『ザ・デイ・アフター・ピース』を見て、人生が変わったと言うアーヤさん。
 
この映画は365日の中から1日だけでも世界中が戦いをやめる日(ピースデー)を作ろうと試みた英国人俳優ジェレミー・ギリの約10年間の活動に迫るドキュメンタリーである。
 
彼女はこの映画を観た時にこれを広めることが、間接的ではあるものの、シリアのためになると強く思ったそうだ。
 
戦いが長引けば長引くほど、人々の関心は低下してしまう。
 
でも、世界中で平和を目指そうとするこの「ピースデー」の認知度が高まれば、この日に戦いが続いている場所に世界の注目と監視の目が強まる。
 
「家族の問題を引きずっていたこともあって、大学を卒業した頃からずっと、前に突き進もうってパワーが出てくるようなものがあんまりなくて、ひとまず目の前にある選択肢をやってるという感じだったのが、この映画を見終えた瞬間に『あぁ、これを伝えなくちゃ、広げなくちゃ』っていう思いにとても駆り立てられました。そしてこの映画の上映会を自分でやり始めたことで、自分が心から伝えたいと思うことを発信することの大切さや、自分がやりたいと思うことに挑んでいくことの楽しさにも気付けて…。この映画を通じて、素敵なご縁もたくさんもらえましたしね」
 
その後、UNITED PEOPLEが求人しているのを知り、転職。
 
現在副社長を務める。
 
そんなアーヤさんは「映画」という媒体の「共感を生む力」を信じているのだ。
 
「自分が実際に出会えて話を聞ける範囲や行ける国っていうのは限りがあるから、映画を通して旅に出られる、自分の知らない世界や人に出会える、っていうのはすごく意味があるなって。さらにドキュメンタリーは、これはリアルなんだ、実際に存在している人なんだって思うから、受けるインパクトはもっと強いと思うんです」
 
彼女の目標は映画を知ってもらうところに止まらない。
 
「願わくば、出会った人たちで一緒に課題解決のアクションをできればいいなって。特に今はあらゆるところで手軽に映画を見られるようになって、前に比べて”消費”が簡単にできるようになった。だからただただ消費するんじゃなくて、映画を使って発信する人が増えればいいなって」

(Photo by Reo Takahashi)

(Photo by Reo Takahashi)

「自分らしくいる」を追求するアーヤさん。
 
そんな彼女の思いは自身にとどまらず、世界中の人に向けられている。
 
世界の「目を向けられていない人」にスポットライトを当てること。
 
そして、私たち一人ひとりが関心をもつこと。
 
それが最初の一歩であり、最も重要な一歩なのである。
 

アーヤ 藍(あーやあい)
ユナイテッドピープル株式会社 取締役副社長。大学在学中にアラブ・イスラムについて学び、研修でシリアに滞在。帰国直後に内戦状態となった同国のために何かしたいと思っていたなかで、ユナイテッドピープルに出会い、転職。映画を通じた社会問題の提起やメッセージ発信、また市民上映会による新しいコミュニティーづくりに取り組む。1万「いいね!」を誇る書評サイトHONZ.JPのレビュアーも務める。
ウェブサイト:https://www.facebook.com/ai.ayah17
 
UNITED PEOPLE
「人と人をつないで世界の課題解決をする」をミッションに掲げる、映画買い付け・配給・宣伝事業会社。
これまで『ザ・トゥルー・コスト』や『ジェンダー・マリアージュ』など、社会派の作品を数々配給。
ウェブサイト:http://unitedpeople.jp/
 
<取材・撮影場所>
 
MiseLMA (住所:東京都新宿区新宿7-12-1 TEL:03-6273-8603)
(Photo by Reo Takahashi)

(Photo by Reo Takahashi)

 
 

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