感度の高い若者に聞いた、都会から2時間半離れた「田舎暮らし」から得られる「都心では味わえない幸せ」とは


 

 東京の喧騒に疲れた若者がいま、自分らしさを求めて田舎に集まっている。古い、ダサいという田舎のイメージは、だんだんと“人間らしい豊かな暮らし”に変わりつつあるのかもしれない。

 千葉県いすみ市。都心部から電車を乗り継ぎ2時間半。のどかな風景が広がる大自然の中に、そんな若者たちが住むブラウンズフィールドがある。

 ブラウンズフィールドは、料理家中島デコさんが18年前に“自然と繋がる暮らし”をコンセプトにつくった場所。農園でオーガニックな米と野菜を育て、醤油や味噌、梅干しなどの発酵食品を手作り。それらをカフェや宿泊施設で提供している。

 この場所に集い、働く人たちはみんなで共同生活を送るいわゆる「住み込み」。なぜ彼らはいま、このようなライフスタイルに注目するのだろうか。

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都会にいると麻痺しちゃう。自然から学ぶ“生きるすべ”とは

3.11がきっかけで食べ物に不安を持つようになったんです。自分の食べるものを作れれば安心するし、ここでは生きるすべを学べる気がして。必要なものをお金でしか買えない都会と違って、ここには生きた自然がある

 こう話すのは2年前から働く高橋哲平さんだ。哲平さんの1日は早朝、畑をチェックするところから始まる。以前は農業に携わったことがなかった彼だが、いまや野菜が育つ喜びが何にも代えがたいと笑顔で話す。

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ここでは、暮らしと仕事が一体になっている。畑を見て「ああ気持ちいいなあ」って毎日がスタート。肉体的に大変なことはあるけど、自分の育てたい野菜を植えているし、“仕事している”感じではない。やらされてる感が全くないんです

 ブラウンズフィールドの畑では化学肥料や農薬を使わない。馬糞など動物性の肥料も一切使用しないいわゆる「無肥料無農薬栽培」だ。大地の豊かな恵みのおかげで、水やりも滅多にしない。「虫に食われてもしょうがないんです。循環の一部だし」と、虫除けもなし。その代わり、日々の野菜の健康管理は欠かせない。「少しでもタイミング逃すと美味しくなくなっちゃうから」と、毎日二回野菜の収穫をしている。

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ブラウンズフィールドで育てるのは野菜だけではない。米と小麦、大豆の栽培も哲平さんの仕事だ。小麦はうどんと小麦粉に、大豆はスタッフみんなで醤油と味噌に加工する。写真は今年仕込んだ醤油

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ヤギのゆきちゃん。草刈機では刈れない狭い部分の草を食べてくれるが、たまに野菜も食べちゃうとか

自分で野菜を育てると、食べ物にかなり自覚的になるんです。都会にいたら、とりあえず食べたいものをぱぱっと食べちゃう。けど「この食べ物がどこでどうやって作られたのか?」とか「身体にどんな影響があるのか?」ということを知れば、もっと視野が広くなると思う。都会は都会で楽しいんだけど、毎日満員電車に乗って働きに出て、高い家賃や食費を払わなきゃいけない。「いい服着なきゃ」とか見栄も出ちゃうし、将来への焦りもあった。都会って多様な人がいるから価値観が広そうなのに実はすごく狭い気がするし、生きづらい感覚があって

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敷地内にあるナチュラルストア「ASANA」にはブラウンズフィールド自家製の食品やおすすめの食材が並ぶ

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東京とブラウンズフィールド、二足のわらじで働くASANAの尚子さん

「人」と「食」をベースに、もっと生きやすい世の中へ

 ブラウンズフィールドに10年前オープンしたカフェ「Rice Terrace Cafe」。ここで働くのが牧内優さんだ。

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ヘアメイクの仕事を8年間していたんだけど「綺麗ってなんなんだろう?」とだんだん葛藤が生まれて。ニキビ隠したいとか目を大きくしたいとかすごくわかるなって思う反面、外面からだけじゃなくて、人間は内面からもっと美しくなれるって思ったんです。そう考えて行き着いたのが、“食”だった

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Rice Terrace Cafeでは、ブラウンズフィールドや近隣農家の畑で採れた食材で作る、玄米菜食の料理を味わうことができる。身体に優しいシンプルな味付けだが、食べた後の満足感は想像以上

 カフェの料理は、旬の野菜を生かした玄米菜食。肉や魚、卵や乳製品は使わず、自家製の調味料を生かして自然の恵みがそのまま味わえるように工夫している。優さんの担当は、カフェのメニュー作りから調理まで全て。他のカフェスタッフ2人と週替わりで、ランチプレートとデザートメニューを考えている。

月の満ち欠けによって身体が心地よいと感じる調理法があって。だから、月のリズムでメニューを決めています。満月のときは揚げ物にするとか、全体のバランスをとるように気を付けています

 田舎暮らしは健康面のメリットが大きいという。ここに来るまで落ち込みやすかったという優さんだが、いまはストレスフリー。美容液を使っていたときよりも、肌の調子もいい。玄米菜食にしてから感覚が鋭くなったとも話す。

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 食べ物だけではない。都会人は消費活動全般に対して、どこで何を買うのか、捨てたものがどこに行くのかということに注意が向かなくなっている。なぜ、そんな都会を離れ田舎暮らしを選んだのか、優さんに尋ねてみた。

田舎って、不便なことが多いから人に頼らないと生きていけないんです。だからこそ、ここでは「人と人との繋がり」がある。お金を払ってすぐ解決することよりも、ここで四苦八苦して得たものの喜びのほうが何十倍も高い。都会にいると、自分の技術や持ち物をすぐお金に換算するマインドになっちゃうから。「人」をベースに考えると、もっと生きやすい世の中になるんじゃないかな?

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カフェのランチやスタッフ用の食事のため、お米は毎回かまどで炊く

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ハーブや茶葉なども収穫して保存食やカフェのメニューに生かす

毎日料理しているけど、迷ったり悩んだりしたときは、気持ちを切り替えてから作るようにしています。いまは「感じること」がテーマ。都会にいたときのように「感じること」を忘れちゃったら怖いなって。だから、自分にも他人にも向き合える環境で丁寧に暮らしたいと思うんです。もちろん田舎は虫も多いし、なんでもカビるし、困ることもあるけど「またこの季節がきたな」って季節を移ろいを感じることもできる。やっぱり自然はいいなって思います

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 「地方には可能性、余白がある」と口を揃える哲平さんと優さん。もはや飽和状態の都会では、毎日が戦いだ。そんな都会から逃れたい人のために大事なのは「都会のセンスを持った人が田舎でおしゃれなもの」をつくることなのかもしれない。そうすればブラウンズフィールドのように、人が自然に集う。

泥臭いこともたくさんあるけど、田舎暮らしがもっと注目されて、自給自足のイメージが変われば、都会に辟易している人がもっと暮らしやすくなるんじゃないかな

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さらにブラウンズフィールドのことを知りたい方は、ブラウンズフィールドの全てが詰まった本『ブラウンズフィールドの丸いテーブル』をぜひご一読ください。

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Brown’s Field

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All photos by Junko Kobayashi
Text by Reina Tashiro
ーBe inspired!

 

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