田舎から音楽を発信する“百姓レゲエバンド”が伝えたい「お金」じゃない豊かな暮らし方


アコースティックな音で、独自のスタイルのレゲエを奏でるかむあそうトライブスは当初、岐阜県美濃の山村(神渕村、上麻生等)の田舎で村おこしバンドとして結成された百姓バンドだ。レゲエ特有のノリの良いその歌とは裏腹に、物質社会に疑問を問いかける歌詞は、田舎暮らしを楽しむ人のみならず、現代社会の行方に疑問を持つ人、自然を愛する人などの心を掴み、広がっていった。彼らの曲はミュージシャンでもあり、政治活動家でもある三宅洋平にも愛され、彼のライブでカバーされている。今回このかむあそうトライブスにBe inspired!が彼らの暮らしや音楽活動についてお話しを伺った。

郡上EARTH CAMP/岐阜 Photo by Charu

郡上EARTH CAMP/岐阜 Photo by Charu

かむあそうトライブスの音楽の根底にあるもの

 かむあそうトライブスのメンバーはボーカルであり鍼灸師でもあるやじー氏、パーカッションであり山奥でレストランを営むトミー氏、ドラムであり畳職人でもある位田氏、移動型カレー屋をイベント出店しているBONGO DEVA氏、ピアニカのトモエさん、山奥でデザイン事務所を営むサットマンの6人で結成されている。

 彼らの音楽と生き方の根底にあるものは、田舎暮らしの楽しさだろう。一般的に音楽活動というと、人の集まりやすい都会の方が効率が良いと考えられている。しかし彼らの音楽は田舎から発信されて、全国各地の田舎でライブ活動を行うという、あまりないスタイルを持っている。そんな彼らはメンバー全員が、田舎でできる限りの自給自足の暮らしを実践しているというのだ。

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左からサットマン、トモエさん、トミー、BONGO DEVA、やじー、位田氏 Photo by Charu

 “百姓”バンドとも呼ばれる彼らに、音楽活動とお仕事、自給的な暮らしの両立を伺った。まず口を開いたのはボーカルのやじー氏。

やじー:
僕の考える百姓は、百の仕事をしている人。家が壊れていても自分で直すし、病気になっても自分で治すし、楽器が壊れても自分で直す。薪を準備することとか、木のことも自分でやる。ただ、やっぱり鍼灸師と音楽活動の合間でやっているので、無理をせず、丁度いい感じで自給率を少しずつあげていっていて、今どんどん楽しくなってきています。最近はたくさんの人が少しずつ自給できる生活にシフトしていっていると思う。百姓と言っても僕たちは、野菜を売ってるわけじゃないんですよ

 彼らは田舎での音楽活動や、仕事との両立を難しいとは感じていないという。それは彼らの活動の根底にあるものが、この田舎暮らしにあるからだろう。軽快なアコースティックレゲエのリズムに乗って流れる彼らのメッセージは、今、この時代に生きる人々の心に呼びかける。無理せずできることから自給すること、彼らはそれこそがこれからの時代に求められていると信じているのだ。

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位田家の田んぼをメンバー&近所の人で稲刈り。機会は一切使わず全て手作業。田舎では近所の人で助け合って作業を行う。Photo by Charu

やじー:
田舎で暮らせる人は田舎に来ちゃってもいい。街が好きなら街の役割もある。本当に少しでも自給できればいいと思う。床暖房とか太陽光発電とかを始めたり、東京アーバンパーマカルチャーなどでも読めるように、コミュニティをしっかりつなげたり。少しの土地さえあれば、家庭菜園で野菜を植えることもできるし、自然と共感することを暮らしに取りいれていくことだけでも楽しくなっていくと思う

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田舎発信だからこそ見える現代社会の落とし穴

 アンダーグラウンド“レゲエ”シーンで熱狂的なファンを持つ、かむあそうトライブス。彼らの音楽の特徴は、その歌詞と、大人も子供も楽しめるようなその小気味のいいリズムにあるだろう。一度聞くとなかなか忘れることのできないインパクトのある歌ばかりだが、彼ら自身が流行りに流されていないので、その歌にも流行りを感じられない。そして私たちが気づかなかった、社会の思わぬ落とし穴を示してくれるのだ。

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神渕(かぶち)神社にて Photo by Charu

「科学の詩」

かがく科学 サイエンス

客観的にモノゴトを見るにはとても便利

だけどそこには重大な欠陥があるんだなぁ

かがく科学サイエンス

いくら理路整然とみえる科学論文でも

土俵の外に問題を持ち込まれたら

結局なにもわからないよ

(中略)

無関心な層の人たちと同様に

専門家って土俵の外には無関心

それよりも百の仕事を巧みにこなす

あのお百姓さんの知恵を訊こうよ

土俵の外の声を慎重に聞いて

ひたすら謙虚に科学し続けてほしいんだよ

だってあなたは聡明なるこの星の現代の最先端

サイエンティスト

科学者だよ

(中略)

かがく科学サイエンス

そろそろ変な夢から目を覚まそうぜ

その星の上にいる限り俺たちは運命共同体

異なる立場の人達ともうまくやりたいんだよ

本当だよわかるだろ わかるんだよ

 

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  この「科学の詩」は彼らの2ndアルバム「MAXI FOUNDATION」に入っている一曲。科学的なことを信じすぎている現代の暮らしに疑問を投げかける一曲だ。この歌を作詞作曲したやじー氏にどんな想いで作ったのかを聞いてみた。

やじー:
実はこの曲、最初は兄貴への手紙だったんです。その兄貴とメールのやり取りをしていた物が歌になってしまったんです。兄貴は超科学的サイドで僕にいいアドバイスを昔からくれる存在なんだけど、そんな彼と分り合いたいって気持ちで書かれた歌です。世の中を見渡しても、たぶん時間の問題で分かり合える時代がくるんじゃないかなって思ってます。そうやって動く人が増えれば増えるほど、『ザイオン(ラスタ用語で素晴らしい世界の意)』が近いんじゃないかという思いで書かせてもらった歌です

  最初は科学的考え方を持つ彼のお兄さんと分かり合えるために書かれた手紙。しかし科学を信じる現代人と、かむあそうトライブスの持つ「百姓的思想」の双方が分かり合えるようなキーワードがちりばめられていることに目をつけたやじー氏はこの手紙にメロディをつけ、歌うことにした。

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やじー ONE LOVE PEACE CAMP/熊本 Photo by Charu

  現代社会というのは、どうしても専門分野に分断され、総合的に見るという視点がなかなか持てない。かむあそうトライブスは、自然や日本文化とバランス良く上手に暮らすお百姓さんたちの知恵と、現代の最先端である科学者の知恵が分かり合えることに、この星の未来があると信じているのだ。

メンバーのユニークなお仕事

  田舎を中心として活動する彼らのファンの中にも、田舎暮らしをすでに実践している人も多く、日本全国の田舎でコミュニティを作り暮らしている。そこで週末にライブ活動を行い、平日は各々の暮らしを送っている。鍼灸師であるやじー氏と畳職人である位田氏にユニークなお仕事について伺ってみた。

やじー:
今は鍼灸師を岐阜の村でやってます。高齢のお百姓さんの家を隣村くらいまでぐるぐると往診して回ってます。いろんなおじいさん、おばあさんの話を聞いて、学びになります。人間の体って一番身近な『自然のシステム』なんです。あとは針でちょっと傷つけてやったり、お灸で体がやけどと錯覚するような程度にすると、治すシステムのきっかけを与え、自然な力で治っていくんですよ。僕が鍼灸でやっていることはそんなことです

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位田氏 つながりフェスタにて Photo by Charu

位田氏:
僕は畳職人として16歳の時からやっていて、24年やってますね。独立してからは10年くらいです。それまではずっと名古屋で修行していました。今の時代は新築立てる人はあんまり和室がなかったり、4畳半一部屋とかだから、今だんだん畳職人が少なくなっているんです。その仕事とは別に、米と野菜も自給しているし、お風呂も料理も薪でやっていて、なるべく自然と共に生きています

 きっと彼らの仕事という概念は「お金」のためであるかどうかにかかわらず、ライフスキル全体をそう呼ぶのだろう。自分で作ったお米と野菜を薪で料理し、薪風呂に入って、日本文化である畳を作ったり、村を回って鍼灸の往診をしたりして、好きな音楽を歌い奏でる。

 彼らは進みすぎた現代に疑問を感じ、自らがステップバックして、自分の暮らしを自分たちの手で作り出すことにチャレンジするという、ある意味とても先鋭的な思想と暮らしを持っている。彼らの歌には日本人の魂を呼び起こさせるような、そんな力も持っている。

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自分の田んぼで稲刈りに向かう位田氏 Photo by Charu

暮らしがあってこそのかむあそうトライブスの音楽とメッセージ

「そういう時代」

自給自足や自然が好きなら 
今月のうちに街を抜け出そう霧や煙にまかれたいなら 
今月のうちに街を抜け出そう

薪なら裏山にたくさんあるし 使えば使うほど山は蘇る
どうせまともな仕事はない時代さ 今月のうちに街を抜け出そう

森へ帰ろう 土へつこう 俺たちの時代は
もうすぐ世界壊れていくよ この道をゆけば

 

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 1stアルバムに入っている「そういう時代」という曲。彼らの歌は現代社会をもう一度考え直させてくれるきっかけをくれる。彼らにどんな想いで音楽をやっているのか尋ねてみた。

位田氏:
一つずつのコミュニティが全国各地の田舎にあれば、いつかはそれが繋がって大きな輪になっていくんじゃないかという願いで音楽をやっています。原点には暮らしがあってこそで、そこでグラウンディングでき(散漫した意識をしっかりと自分の中に戻すこと)、農作業などのお百姓作業をすることで浄化されるような気持ちでもいます。そして移住者も増えるし、みんなが田舎に来やすいような社会ができればいいと思っています

 彼らの歌はとてもシンプルなメッセージが込められている。しかしシンプルであるけれど、この現代の物質社会ではたくさんの人が聞く耳を持てない声でもある。しかし私たちが発展だと信じ進んできたこの都市の暮らしが、どれほど不安定なものの上に成り立っていたということを、東日本大震災を経て感じた人も多いだろう。私たちは彼らの声を無視できないターニングポイントに立たされていると言っても過言ではない。あなたも田舎発信の彼らの歌に体を揺らし、私たちの未来について少し違った視点から考えてみてはどうだろうか。

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かむあそうトライブス

▶︎「かむあそうトライブスに聞く、原発のない社会の作り方」はこちらから

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All photos by かむあそうトライブス
Text by バンベニ 桃
ーBe inspired!

 

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