「悩みなさそう、の一言が辛かった」。精神病と闘った日本人3人に聞いた、周囲に対するリアルな本音

2017.10.9

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うつ病など精神疾患と診断される患者数は年々増加しており(参照元:厚生労働省)、ここ数年でメディアでも頻繁に取り上げられるようになった。メンタルヘルスという言葉を耳にする機会は増えたのではないだろうか。

しかし、世間の人々が精神疾患に十分な理解をしているかということには疑問が残り、精神疾患や深刻とまではいかなくても心の不調を抱えている人が自身の事情をオープンに他者に語れる環境が整っているとは言えない。

今回、カウンセリングや薬の服用経験のある3人に、経験したからこそ語れる、「こういう接し方をしてほしい」「どういう言葉をかけてもらえれば気が楽になるか」など、周囲の人に対するリアルな本音を聞いてみた。そして、彼らの体験から精神疾患に対する理解とオープンな環境とは何かを考える。

ナガシマさん(23)

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大学生の時に約2ヶ月間カウンセリングに通い、周囲の人に自分のことを話せるようになったかな。それに薬によるものも含めて睡眠時間が増えた。以前の自分は普段からなかなか本音で生きられず、人に本音を話すのが苦手で抵抗もあったけど、カウンセリングに通いだしてから一人になった時は嫌な感情が湧き出てきてストレスを外に出せるようになった。もし落ち込んでいる人がいて相談されたら、周囲の人がカウンセリングを勧めるのはありだと思う。

辛かったのは自分の事情を話した時に、なんで?っていう反応をされたこと。主に大学の先生がほとんどだったけど。カウンセリングを受けていたことを話した複数の友人は今まで通りに接してくれた。でも家族には話さなかったな。学業においては大学の研究にかなり支障がでて、でも長い休みは厳しかったから大学に行きながら通院してたんだけど、その頃の生活は辛い部分が多かった。

Shioriさん(22)

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学生の頃、なんだかんだ1年ぐらいカウンセリングに通ってたけど、うつ病=現代病っていうような意識だったからカウンセリングに行くことに抵抗なかったし、家族が良さそうな病院や評判のいい先生を探してくれたから意外と身近なものだったと思う。

家族は理解してくれて、私の生活にあまりストレスがかからないようにしてくれてたんだけど、周囲の目は少し気になっててカウンセリングに通っていたことは友達には話してなかった。それに誰かに相談すると説教されることが多くて、あまり攻めないでーってなっちゃうから。だから自分の状況を人に話して仕方ないよねって言ってもらえると気が楽になれたし、逆に、普段明るく振る舞うタイプだから人に話せないことの方が多くて、悩みなさそうだね、みたいな言い方されるとすごく嫌だったんだよね。当時、不眠症にもなってたから朝起きられなかったし、ずっとぼーっとしちゃって頭に何も情報が入らなかった。大学では理解してくれる教授もいたけど、不眠症=夜遊びって考える教授もいたからきつかったかな。

こーたさん(31)

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カウンセリング、薬の服用ともに2ヶ月間。カウンセリングによって根本的な問題が解決されることはなかったけど、薬を飲み始めてから感情の沈み込みがなくなったり、集中力が持続するようになったりして日常生活が改善された。もしカウンセリングにいくか悩んでいる人がいるなら一時対処の選択肢が増えるという点で、行くのはありだと思うよ。

最初は心療内科に行くことにはすごい抵抗があって、初めて行こうと思ったのは大学院時代だったけど、そこから実際に行くまでに8年かかった。だから、心療内科とかカウンセリングに身近ってイメージはない。ただ、カウンセリングに行ってみて、自分のことを話すのに医者と患者くらいの関係性でようやく話せるって気づいた。それまでは自分のことは他人にとってどうでもよいことだと思ってしまって、周囲の人には話そうとはならなかったから。

それでやっと自分の状態について話したら、友達は引き気味で、家族はドン引きしていた。周囲の目はあまり気にならなかったけど、原因は〜だと、断定されたことはきつかった。それに今後何かに挑戦しようとする時に、過去に精神疾患や薬の服用歴があることが不利になるかもしれないと気になったな。それから、仕事で頭が全く働かずミスが多発して、周りに迷惑をかけた。上司も状況は把握してくれて改善に向けていろいろ尽くしてくれたけど、理解はできなかった様子だった。

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自身の経験を話してくれた彼らのように、学業や仕事をこなしながらカウンセリングへ通い、精神的バランスを整えようとする人は少なくない。学校や仕事に取り組む人から社会生活を送ることが困難な人まで、悩みやストレスの原因と程度は人によって様々であり、例えるならば異なった色をもつグラデーションなのだ。精神的に健康な人、不健康な人と2つに分けるのではなく、もっと一人ひとりの気持ちに耳を傾ける必要があるのではないか。

また、理解をしてもらえるだろうかという不安から周囲に相談することに抵抗を感じたり、頼るということが下手な人だっている。実際に、今回インタビューに応じてくれた3人は周りの人に本音をなかなか言い出せなかったことや、打ち明けても理解のない言動を受け取ったことなどを語っている。彼らが日々の生活で接している、家族や友達、職場の身近な人々から否定的な言動を示されたら、それはますます彼らを追い込むことになる。

自分で感情をコントロールすることが苦手だったり、ストレスに打ち勝てない人は弱い人間なのだろうか。ネガティブな感情と向き合い、それを乗り越えようとする彼らは本当は強い人間かもしれない。理解し寄り添う態度こそが、彼らのような人々が精神的健康を取り戻すのに大切なのではないだろうか。

落ち込んでいる人に対して否定したり突き放すような言動をしてしまった経験はあなたにもあるかもしれない。でも自分がもし彼らのような状況に陥った場合にどうしてほしいと思うだろうかと考えてみてほしい。それが身近な人々からのサポートが重要なものであるという意識を高めることに繋がっていく。自分の周りに少しでも落ち込んでいたりストレスや悩みを抱えている人がいたら声をかける、という一人ひとりの行動がオープンな環境を作るのだ。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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