ドSクリエイターが「日本のヘンタイ」を救う。


「オレ(ワタシ)、実はM(S)なんだよね…。」
 
あなたの彼氏や彼女や友達がそう打ち明けてきたら、あなたはどう反応するだろうか?
 
おそらく、引いたり、変な目でみたり、その人の前で「性の話」は金輪際しないことにする人もいるかもしれない。
 
そんなマイナーな性癖である「SM」について、詳しく知っている人が少ないためか、日本ではどこかタブー視されることが多々ある。
 
しかし、そんな日本の「ヘンタイ(=広義の性的マイノリティー)」たちに手を差し伸べることで、社会貢献の世界をもっと面白くしようと企む「ドSなクリエイター」が東京に存在する。


 
 
ドS×クリエイター

ドSなクリエイター。
 
今まで聞いたこともない異様な組み合わせだが、そんな経営者が実は存在する。
 
彼女の名は、菅原 瑞穂氏。ブランディング エージェンシー「brandreams(ブランドリームス)」の代表/コピーライターだ。

2010年にNPO専門のブランディング エージェンシーとした同社は、現在はエシカル、動物愛護、マイノリティ支援、地域活性化の分野にフォーカスして、コピーライティングやプランニングなどブランディングに関わるサービスを提供している。
 
翻訳者、テクニカルライター、コピーライター、動物愛護家…。
 
様々な経歴や顔を持っている彼女だが、最も過激なキャリアとして紹介したいのが、彼女には「ミストレス」として働いた経験があることだ。
 
「ミストレス」とは女夫人という意味だが、要するに、女王様・S女のこと。
 
数多くのM男を飼いならしてきた彼女に、今始動している「ドSでエコなプロジェクト」について伺った。

 
 
カミングアウトするまでの葛藤

(Photo by Tomoko Suzuki)

(Photo by Tomoko Suzuki)

「女王様」とか「S女」と聞くと、頭に思い描くのは、キャンドルやムチを持って、ハイヒールでM男を踏みつけているボンデージを着た女性の姿だろう。
 
かく言う菅原氏も、自分の会社の周年パーティや自主企画のイベントではボンデージやコルセットなどのフェティッシュなファッションを披露することがある。
 
また、今年1月に本メディアBe inspired!主催で開催されたトークイベントネオエシカルモーニング(NEO ETHICAL MORNING)でもそうだったように、講師やスピーカーとして登壇するセミナーやプレゼンテーションには、露出度の高いボンデージこそ避けるものの、黒レザーのロンググロープやニーハイブーツなど、女王様を感じさせるファッションアイテムを身に付けて挑む。

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2013年頃からSNS上のプロフィール写真もSっぽいものに統一するようになり、菅原氏のSキャラはすっかり定着しているようだ。
 
しかし、自身の性癖を周りにオープンにしていなかった時期は「私なりの生き辛さを感じていた」と語る。
 
性的志向としてはストレートであり、狭義の性的マイノリティーには当てはまらない菅原氏だが、それでも自らのS性をオープンにするまでにはさまざまな葛藤があったようだ。
 
それでは、彼女はなぜ、SNSでもSキャラをオープンに出せるようになったのだろうか。

 
 
「キミの価値はヘンタイにある!」と言われて

(Photo by Shiro Miyake)

(Photo by Shiro Miyake)

菅原氏がオープンなSキャラになったきっかけは、彼女が社会起業家の大先輩として尊敬する2人の男性からのアドバイスにあったという。
 
1人は、デザインの力でマイノリティとマジョリティが自然に混じり合う社会を実現する「ピープルデザイン」というコンセプトを武器に、「超福祉展」や「カラダで感じる上映会」などさまざまな活動を繰り広げている「ネクスタイド・エヴォリューション」代表の須藤シンジ氏。
 
3年ほど前、須藤氏と初めて食事をした際、ふとした会話の流れから、菅原氏は須藤氏に自分の性癖とそれにともなう悩みを打ち明けた。
 
すると彼は「キミのコアコンピタンスはヘンタイだ!」と断言したという。
 
※コアコンピタンスとは、企業内部で培ったさまざまな能力のうち、競争のための手段として最も有効なもの。「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力」と定義した概念のこと。
 
そしてもう1人は、象の排泄物で作るリサイクルペーパー「ぞうさんペーパー」をスリランカで製造するなど、自然と動物と人間が共存するためのビジネスモデルを事業化する「ミチコーポレーション」代表の植田 紘栄志氏。
 
社会起業家としての型にはまらないユニークさで知られる植田氏は、かねてよりイベント等でフェティッシュな服装をする菅原氏の行動を賞賛し、「日本の社会貢献の世界には面白いヤツがいない。菅原さんの女王様キャラは大きな武器になる」と背中を押してくれた。
 
須藤氏と植田氏という2人の先輩からのアドバイスを受けて、SNS上での発言や現実の世界でのコミュニケーションでも少しずつSキャラを出すようになった菅原氏は、社会貢献にたずさわる一部の知人からは猛烈な反感を買った。
 
しかしその一方で、女王様キャラがフックになって自社の事業に興味を持ってもらえたり、仕事のオファーにつながったりする機会も増えたという。

 
 
「SM×エシカル」で面白い社会貢献を

(Photo by Shiro Miyake)

(Photo by Shiro Miyake)

そして今、彼女は自身のコアコンピタンスである「ヘンタイ」を、180度真逆に感じられる概念である「社会貢献」と掛け合わせることで、小さな革命を起こそうとしている。
 
その革命の名前はTo the loveless.
 
「愛をあきらめた人たちへ」を意味するこのプロジェクトで、菅原氏は「SM」と「エシカル」という今まで無縁だった2つの世界を結びつけようとしている。
 
実は海外には「夜の世界」と「エコ・オーガニック・エシカル」が融合している事例があり、ドイツにはビーガン対応のSEXショップ、アメリカにはビーガン向けのストリップシアターが存在する。
 
しかし、日本では性の世界と社会貢献は全く別のものとして捉えられ、交わることが一切ないのが現状だ。
 
『To the loveless.』ではまず、透明性の高いサプライチェーンを持つエシカルレザーを使ったムチの開発に取り組んでいる。
 
また、将来的には漆塗りや螺鈿細工といった日本の伝統工芸技術を取り入れたムチや拘束具、エシカルレザーを使ったフェティッシュなファッションアイテムの開発にも挑戦していくそうだ。

 
 
「ヘンタイ」が生きやすい愛のある社会を目指して

(Photo by Shiro Miyake)

(Photo by Shiro Miyake)

そもそもプロジェクトを『To the loveless.』と名付けた背景には、ミストレス時代から10年来、現代の日本人の性生活に対して彼女が感じてきた大きな疑問があったという。
 
それは「パートナーに対して自分の性癖や欲望を伝えずに、お金を払って風俗で性欲処理する男性がいかに多いか」ということだ。
 
これは男性の側だけの問題ではなく、性に対してオープンな態度を取ることに抵抗を見せがちな女性たちにも問題があると菅原氏は考えている。
 
「『SEXと恋愛は別』とか『子供が生まれたらセックスレス』と当たり前のように話す人には怒りすら感じます。私にとってSEXは愛のもっとも重要な要素。お互いに本当に愛し合っているなら、何をして欲しいのか、どんなことで興奮するのか、素直に伝え合うべきだと強く思います。」(菅原氏)。
 
特に変わった性癖は持ち合わせていない筆者だが、この言葉には納得させられてしまった。
 
現に、日本ではSMに限らず「マイナーな性癖」を持つ人のほとんどは肩身の狭さを感じ、オープンにすることができずに生活しているように思える。
 
今でこそ、日本のテレビなどで、性別に多様化が進んできているが、一部に過ぎない。
 
愛のない日本社会に警鐘を鳴らすという大きなビジョンをも秘めたプロジェクトTo the loveless.と、菅原氏のS気たっぷりの揺るがない攻めの姿勢が、日本の「ヘンタイ」にとって住みやすい社会へ変えていってくれるのだろう。

 

取材場所:リンエンドルフィン
 
住所:東京都目黒区駒場1-5-11
 
電話番号:03-5738-0638

 
 

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ーBe inspired!

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