「私たちは企業に騙されている」。26歳の社会派マーケッター石井リナが教えてくれた“ステマ無法地帯”Instagramの闇。


 

いつから「インスタグラマー」は消費者を騙す職業になったのだろうか。ソーシャルマーケティングが盛んになり、ソーシャルメディアで影響力を持ついわゆる“インフルエンサー”が商品をPRする手法を「インフルエンサーマーケティング」と呼ぶ。

インフルエンサーのファンは、彼らに対して非常に高いロイヤリティを誇っていることから、莫大な広告費用をかけてCM宣伝を行うよりもより安価で効果的にリーチできる方法として注目されてる。ファンたちは、憧れの人が愛用するコスメが欲しくてたまらないからだ。

しかしながら、ファンの多くは、裏で金銭のやりとりを行っていながらそれを分かる形で記載しないステルス・マーケティングが横行していることを知らない。特に若い世代に人気のSNS・Instagramがその温床だ。

今回Be inspired!はSNSコンサルタント、COMPASS編集長の石井リナさんにインタビューを敢行。「嘘をつかないのは当たり前。ただ、それだけのことなんです」と語る彼女と共に、消費者を騙し続ける企業とインスタグラマーたちの実態を暴く。

Photo by Tomofumi Usa

消費者を騙す無責任な投稿を「誰も問題視をしていない」

 そもそも、Instagramがステマの温床となった背景には「拡散性がない閉ざされたSNS」という背景がある。TwitterやFacebookと異なりフォローしていないユーザーの情報が自身のフィードに流れてくることはない。

 しかし若い世代がアクティブに利用するSNSであり、企業としてはこれを利用しない手はない。そこでファンを多く持つアカウントにPRを依頼するようになった。広告投稿を行う場合、しっかりと「PR」である旨を表記していれば全くもって問題ない話だが、現状はそうはなっていないようだ。

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アメリカではステマを取り締まる法律や、違法行為を監督する連邦政府の機関があります。ただ、日本ではルールも「グレー」。投稿を依頼する企業も「どうしてPR表記をしないといけないんですか?」。まだ、そんなことを言っているような状況です。

企業側もステマについてのリテラシーが低く、インフルエンサーにも同じことがいえます。そして、消費者もその実態を知らない。誰も問題視をしていないところに、日本のリテラシーの低さを感じます

 企業はインスタグラマーにお金を渡してPRを依頼し、インスタグラマーは金銭を受け取っていないかのごとく振る舞い商品をPRする。「憧れています」「応援しています」という声を前にすると、自分が1投稿あたり数万〜数十万円のお金を稼ぎながら広告宣伝を行っていることがバレたくないと思うのだろう。しかし、第三者からすれば「ファンを裏切るありえない無責任さに後ろめたさのかけらも感じない」ほうが気の毒だ。

“憧れ搾取ビジネス”の果て、華やかさの裏にある無法地帯

きっと、今の若い人たちはステマが悪いということは知っているけれど、自分の行為がステマだとは気付いていないんです。ただ、お金をもらっているならその旨を告知しなければいけないし、普段使っていないアイテムを宣伝するならあたかも愛用品であるかのように書いてはいけません。これって当たり前のことなんですけど、全然知られていないんです

 ひょっとすると、あなたの友達がインスタグラマーである可能性も少なくない。フォロワーが数千人いて、その中にファンがいるのであれば商品のPRは成り立つからだ。インフルエンサーの生活は一見華やかに見えるため、表面的な部分だけを切り取って憧れてしまう人も多い。

 最近では自動でフォロワーを集めるアプリもあり、ちょっと工夫を凝らせばファンを集客することが可能になった。あとは写真を投稿するだけで商品がもらえて、お金がもらえて、旅行にも、パーティーにも行ける。そう考えたら、誰だってインスタグラマーになりたいはずだ。

 ただ、そうして憧れを搾取されたインスタグラマーたちにはリテラシーが存在しないこともある。ルールを知らないため、モラル無き広告投稿を繰り返してしまうのだ。

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薄っぺらい「おすすめ」を拒否し、賢い消費者になるべき

 インフルエンサー・マーケティング・プラットフォームのマーカリー(Markerly)が行った調査によると、フォロワー数が増えるごとにエンゲージメント率が低下することが明らかになっている。フォロワー数が数百万人を超えるアカウントに広告投稿を依頼するよりも、フォロワー数が1万〜10万人程度の“マイクロインフルエンサー”を束ねた方が低単価でよりコンバーションの高い投稿を依頼できるわけだ。

 そうした背景から、プロではない“素人”のインフルエンサー需要が増加している。この流れはモラル無き広告投稿が増えてしまう一因を担っており、石井さんはプロ意識の欠落した一部の“インフルエンサー”を「自転車操業」と表現する。

インフルエンサーは1メディアなので、お金をもらってPRすることになんら問題はありません。ただ「パーティーに行きたい」とか「仕事がなくなったら困る」というような思いから、相手が求めていることを忖度して投稿してしまっていますよね。普段から使っているという表記や、ad表記しないこともそうです。1投稿で数万円以上もらっていますから、甘い蜜をやめられないのかもしれないし、「消費者を欺くようなことをしていないか?」と行動を振り返る余裕がないのかもしれません

 石井さんは「消費者は悪くない」としつつ、「消費者が賢くならなければインフルエンサーはハッとしない」とも語ってくれた。

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毎回毎回違うシャンプーを愛用しているというような宣伝をし続けるアカウントがあれば、さすがに広告だと気づきますよね。それでもそのインスタグラマーを支持するなら、それはフォロワーみんなの自由です。もちろんステマをしない上での話ですが

 本来であれば依頼する企業のリテラシーがあれば問題は起きないはず。しかしながら石井さんがおっしゃるように「誰も問題視をしていない」。結局のところ、企業もインスタグラマーもステマがしたくて仕方ないのだ。今後消費者を騙す悪徳なステマ投稿を撲滅するには、私たち消費者が賢くなっていかなければけないのかもしれない。

「消費者に嘘をつかない」。ただ、それだけのこと

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 昨年度、インターネット業界を騒がせた「キュレーションメディア問題」を思い出して欲しい。責任の所在なき情報がバラ撒かれ、インターネットの信頼を大きく損ねた事件だ。

 この問題は業界で名高いライターたちが声をあげ、特に問題視されていたウェブサイトを閉鎖するまでに追いやった。Instagramにおける広告投稿も同じように、不当なアカウントが撲滅される未来が来るのだろうか?

Instagramにおけるステマ投稿の現状を知っている人はまだまだ多くありません。私のように問題に気づいている人が積極的に発言することで、もっと周知させていく必要があります。

しかしながら現状は深刻化しています。「Instagram Stories」をスワイプアップして外部リンクへとつなぐ機能が実装されたことで、商品購入やアプリダウンロードにつきインスタグラマーに報酬が支払われるアフィリエイトも流行っています。もちろんこれも広告である旨が表記されていればなんら問題はないのですが、そのような表記はどこにもなくますますステマが横行しています

 こうした現状を受け、Instagram社も対応を急いでいる。現状一部のユーザーしか利用できないものの、2017年6月14日(米国時間)に同社が発表した「ブランデッドコンテンツツール」によって、投稿のタイトルの横に「~とのタイアップ投稿(paid partnership with …)」と表示されるようになった。

 また、同社は公式ブログで「健全なコミュニティーであるなら、タイアップ投稿についてオープンで一貫した対応を取るべきです」と述べている。

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消費者を欺く行為には不信感を覚えるし、不健全な世界だなと感じます。ただ「消費者に対して誠実でいましょう」というだけ。たとえば投稿の最初の文章に「#PR」表記をしたり、「#PR」で伝わらないのであれば文言を変えたり。企業にもインスタグラマーにも「しっかりとルールに準じてプロモーションをしなければいけない」という認識を持って欲しいですよね。

それに、消費者だってなんとなく広告とその違いを感じ取っていると思います。消費者を軽んじたプロモーションは、もう淘汰される時代だということを企業もインフルエンサーも理解すべきじゃないですか?モラルのある投稿を徹底して、インスタグラマーもユーザーものびのびInstagramを楽しめるようになったらいいなと思います

 日本社会において、消費者は嘘をつかれすぎている。ただ、私たちだって馬鹿ではない。毎日の食事や普段着る服がどのように作られているかが知りたいし、ずっと黙っているわけではない。もちろん今後、Instagramにも例外なくそうした流れがやってくるだろう。

 企業は「消費者が無知である」ことを利用するのではなく、無知だからこそきちんとエデュケートする責任を負うべきだ。「嘘をつかないのは当たり前」であり、異論は認められない。

 私たち消費者も正しく選び、間違っていることを間違っていると言える勇気を持とう。石井さんと同じように若者が声をあげれば、当たり前のことを当たり前に守れる社会になるのではないだろうか。

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Rina Ishii

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彼女が編集長を務めるメディア:COMPASS

Instagram:@rina_ishii_99

Twitter:@rina_ishii_99

Facebook:Rina Ishii

All photos by Tomofumi Usa
Text by Mistufumi Obara
ーBe inspired!

 

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