22分22秒の超大作ラップが紡ぐ「日本国憲法」


(Photo by youtube)

(Photo by youtube)

憲法とは何か。
 
そう聞かれて、答えられる人はどれほどいるだろうか。
 
立憲主義とは何か。9条とは何か。
 
なぜ、今改憲が問われているのか。
 
あなたが憲法を考える、ひとつの「材料」をここに。
 
どうか、20分お付き合いください。

<音源はこちらから>

 
 
憲法とは何か

学校の授業で習う歴史は「日本史」と「世界史」に枝分かれしていて、大きな流れとしてそれを捉えることは難しい。
 
なおかつ一問一答形式の断片的な知識の詰め込みは、物事を点ではなく線で捉える思考力を私たちから奪ってしまった。
 
例えば、なぜ日本が戦争に向かったのか。
 
あの戦争は間違っていた、正しかったの前に、戦争に至った経緯や当時の日本の国際的な立ち位置を“流れ”として語れる人は少ない。
 
憲法に関しても、それは漠然としたイメージとして私たちの頭上に広がる「国家の最高法規」でしかなく、その輪郭はあまりにもぼやけている。
 
しばしば議題に挙がる9条しかり、三原則である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の概念はなんとなく知っていても、果たして憲法とは何かと問われたところで、それをきちんと自分の視点で語ることが出来る人は少ないのではないだろうか。

 
 
「政治」の話が出来ない日本人

それに加え、日本人はどうしても政治について誰かと語ることを避けてしまう傾向にある。
 
友人や家族と政治について議論することはあまりない代わりに、ネットの中でそれぞれの「正しさ」が見知らぬ人との叩き合いに暴走していく様は、あまりにも日常的な光景だ。
 
色々な意見があって当たり前である。
 
しかし、その意見に対する「なぜ」の部分がおざなりにされたまま、私たちは静かに二極化してしまっている。

 
 
ラップで「日本国憲法」を考える

(Photo by  Yatoo Takashi)

(Photo by Yatoo Takashi )

昨年の5月7日、ヒップホップMCであるShing02が「日本国憲法」という曲の無料配信を開始した。
 
20年もの間、国内外のヒップホップシーンを牽引してきたShing02の新たな試みだ。
 
この曲は、13世紀初頭イギリスでのマグナカルタ制定から、2014年の安倍政権による集団的自衛権の閣議決定に至るまでの、約800年にも及ぶ人類の長い長い「歴史」が描かれた曲となっている。
 
2014年に行われた横浜トリエンナーレのイベント「Temporary Foundation『横浜トライアル』」にShing02が誘われたことが曲の制作のきっかけとなったそうだ。
 
日本国憲法をラップする」というテーマで、Kuranaka aka 1945とのパフォーマンスを8月15日の終戦記念日に合わせて行い、このイベントの構成を担当した高橋悟氏(京都都市立芸術大学教授)に日本国憲法と大日本帝国憲法が合わさった本を譲り受けたことで、プロジェクトは本格的に始動する。
 
着想から完成まで、およそ1年もの歳月をかけて制作されたこの曲では、22分22秒にも及ぶ壮大なストーリーが描かれている。

 
 
なぜ22分もの超大作となったのか

(Photo by   El-Curinho)

(Photo by El-Curinho )

Shing02の「日本国憲法」は、憲法を大きな歴史のうねりから、その成り立ちを紐解いていこうとする試みをヒップホップという「音楽」へ見事に昇華した作品である。
 
[序章] [植民地主義] [明治維新~大日本帝国憲法] [第一次世界~大戦太平洋戦争] [日本国憲法] [現代]という全6章にわたり描かれているこの曲だが、日本国憲法をテーマにするのに、なぜそこまで歴史を遡る必要があったのだろうか。
 
歴史の教科書並みの膨大な情報が、畳みかけるように流れてくる。
 
その熱量にまず圧倒されながらも、フランス革命や、ペリーの黒船来航など、一見「日本国憲法」とは無関係に思われるような歴史の事象が次から次へとトラックにのせて紡がれていく。
 
しかし、最後まで聞き進めたとき、初めてその意味がわかる。
 
なぜ、これほどまでに「歴史」を歌う必要があったのかを。

 
 
歴史の上に憲法がある

22分にも及ぶ歴史のリリックの果てに、Shing02はこんなメッセージを投げかける。
 
最後に、第97 条「人類の多年にわたる自由獲得の努力」とは、
人権が確立されるまでの、全世界の血と汗と涙の結晶を指す
日本国憲法は占領下の特殊な事情で生まれたとは言え、
逆に白紙からだったからこそ成し得た、
先人の多大な犠牲の上に成り立った賜物だ

 
ここで言われている第97条とは何か。
 
その全文を以下に引用する。
 
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
 
憲法が人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であるならば、まずはその「努力」を知ることが憲法を理解するはじめの一歩となる。
 
Shing02が「日本国憲法」において歴史を歌う必要があった理由は、ここにあるのではないだろうか。

 
 
「俺はこう思うけど、あなたはどう?」

直球のボールを、あなたなら何と投げ返すだろうか。
 
自分と違う意見の人を叩いたり、すべてを二極化して割り切ってしまう前に、まず自分の意見の根拠をじっくり考えてみよう。
 
日本国憲法は守るべきなのか、変えるべきなのか。
 
その根拠を自分の視点で語れるようになってこそ、初めて対話が成立するのだ。
 
そして自分の視点で語れるようになるためには、歴史を見て何を学び、何を感じるか、ということが大きく関わってくる。
 
一見長いように感じる22分22秒という時間も、歴史を知ることができるとしたら短いものだ。
 
「日本国憲法」ーこの曲は、あなたが憲法を考える上で、貴重な「ひとつの切り口」となってくれるに違いない。
 
 
参考リンク:Shing02「日本国憲法」特設サイト,web dice

 
 

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