ミルク自給率1%のフィリピンに現れた、救世主「水牛ミルク」


牛乳を毎日飲む人は43%(参照元:独立行政法人農畜産業振興機構)、牛乳や乳製品の自給率が62%(参照元:農林水産省)の日本で、「ミルク」といわれたら「牛乳」を浮かべる人が多いだろう。しかし実は、国産の新鮮な「牛のミルク」が気軽に手に入ることは、“当たり前”ではないのだとか。

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Photo by Karabella

実は体にも社会にもグッドな〇〇ミルク

東南アジアに位置する島国、フィリピン共和国。この国では消費される98.8%のミルクが輸入商品で、国産の新鮮な牛乳なんて滅多に手に入らない。(参照元:Karabella Dairy)スーパーの棚に並ぶのは、輸入されるのに時間がかかるために、長期保存可能な粉ミルクやロングライフミルクがほとんどである。
しかし最近では、輸入に頼りすぎているフィリピンのミルク消費のスタイルに危機感を抱いたスタートアップが、自国のミルクを消費していこうと“ある動物”のミルクを使用して、フィリピンの生乳産量は増加しているという。

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Photo by CalaBoo

その“ある動物”とは水牛。フィリピンの国獣である水牛は、家畜として一般的に飼育されており、少し田舎に行くと、道端で見かけるほど多く生息している。そして、水牛ミルクは、ミルクの中で最も栄養価が高いと言われており、コレステロールは牛乳の半分で、さらにタンパク質が牛乳より30%多く含まれている。気になるお味は牛乳に比べて脂肪分が多いため、よりクリーミーな口当たりだそうだ。

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Photo by Karabella

そんな水牛ミルクが国内に豊富であるにもかかわらず、輸入税等のコストがかかる輸入のミルクを購入するということは経済発展への妨げ、国内の農家の貧困にもつながる。そんな現状を打破するために立ち上がったフィリピンのミルク自給率の未来を変えていく「水牛ミルクソーシャルビジネス」を2社紹介する。

水牛ミルクで”フィリピンブランド”を世界へ「Karabella Dairy」

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Photo by Karabella

「All Local,All Natural(全て地元から、全て自然から)」を掲げる水牛ミルクアイスクリームのソーシャルビジネス「カラベラデイリー(Karabella Dairy)」。
創設者のエリカ・ナン・ウォン氏は、ミルク自給率の問題に加えて、地方の農家が収入を得る機会が少なく、貧困に陥る状況を問題視していた。お金が必要なために大切に飼育していた水牛を売ろうとしていた農民をみて、彼らから水牛ミルクを買い、アイスクリームをつくることを決意したのだ。

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創設者エリカ・ナン・ウォン氏 Photo by Karabella

1カップ約170円。フィリピンの物価では少し高めだが、濃厚な水牛ミルクの味わいとストーリーで着実に人気は伸びている。フレーバーにはフィリピンのストリートフードとして有名なトロン(バナナを春巻きにして揚げたもの)や伝統的なデザートのレチェフラン(卵黄とコンデンスミルクを使ったプリン)などを使用し、フィリピンならではのアイスクリームを生み出した。

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Photo by Karabella

フィリピンには世界中からのブランドが溢れているが、フィリピンのブランドは世界にまだまだ知られていない。途上国として知られるフィリピンから、フィリピンだから生み出せるアイスクリームを世界に広げていくことをカラベラデイリーは目指している。

更に販売やアイスクリームの生産の仕事が貧困層への雇用創出にもなっている。「水牛ミルクでミルク自給率をあげる」という切り口ではあるものの、目的はそれだけじゃないカラベラデイリーは水牛ミルクでフィリピン社会の色々な側面をを変えようとしているのだ。

水牛ミルクが生み出す“恋の味”「CalaBoo」

 

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Photo by CalaBoo

次に紹介するのは、「恋の味」を味わえるで知られている水牛ミルクを使ったバターやヨーグルトのスタートアップ「カラブー(CalaBoo)」。
筆者もヨーグルトを1瓶頂いたことがあるのだが、水牛ミルクの濃厚さがあるのに、ほんのりと甘酸っぱさも口の中に広がる味わい。濃厚なのに重くない、さっぱりとした口当たりで新感覚のヨーグルトであった。「恋の味」に明確な定義はないが、確かにこれは「恋の味」と呼びたくなる。添加物は無使用で、体にも良い。

CalaBooもまた、フィリピンのミルク自給率の低さを問題視し、地産地消は自国を愛することであるという強い思いを持っている。フィリピン産水牛ミルクのプロダクトを選んで欲しいという思いはCalaBoo創設者マリー・カボソラ氏の「ラブストーリー」から生まれた。

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創業者のマリー・カボソラ氏 Photo by CalaBoo

20年もの間アメリカや香港の大企業でキャリアを積み、世界中を周っていた純フィリピン人であるマリー氏は帰国後、貧しい人々が彼女をあたたかく迎え入れてくれた経験をきっかけに母国フィリピンと「恋に落ちた」という。これが彼女が「恋の味」を再現したい理由だ。
「恋に落ちた時、その感情をビンに詰め込んで、皆に共有したくならない?」マリー・カボソラ氏は愛情たっぷりの笑顏で言う。

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Photo by CalaBoo

フィリピンに恋をした彼女はフィリピン人としてのプライドをフィリピンで貫く選択をした。そして、彼女に自国を愛するきっかけをくれた人々が貧しさで苦しまないよう、ソーシャルビジネス「CalaBoo」を立ち上げたのだ。彼らの目標は、困窮に陥りがちな小規模の水牛農家から水牛ミルクを仕入れたり、雇用創出として貧困層から雇用を受け入れ、貧困を“終わらせる”ことだという。

最強のソーシャルビジネス

今回紹介した2つのソーシャルビジネスは両者とも「水牛ミルクの自給率の低さ」を解決するだけでなく、「貧困」や「経済発展」にもフォーカスを当て、さらには途上国と言われるフィリピンから世界に通用する高品質な商品を生み出し、フィリピンの魅力を発信している。

どの角度から見ても社会問題を解決できる、最強のソーシャルビジネスが水牛ミルクから生まれた。彼らはミルクの自給率に留まらず、今後のフィリピン社会全体を変えていくに違いない。水牛ミルクを味わいにフィリピンへ行ってみてはどうだろうか?


Text by Hinako Ohno
ーBe inspired!

 

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