「在日コリアンは日本人でも韓国人でもなく独立した存在だと思う」。日本で「コリアンの若者」として生きることとは


「冬のソナタ」などの純愛ドラマを中心とする、2000年代半ばの“韓流ブーム”を覚えているだろうか?最近でも若者の間でコリアンファッションや音楽などの人気は高いが、隣国であるのにもかかわらず、コリアンの人々についてまったく知らないという人もいるかもしれない。

今回Be inspired!は、在日コリアン*1と、日本で暮らすコリアンという、ともに「コリアンのルーツ」を持つ立場の異なる若者2人にインタビューを行なった。国家間レベルでは、過去の戦争や領土問題などがあり複雑な関係にあるが、日本に住むコリアンの若者たちは、日本で暮らすことについてどう考えているのだろうか。

(*1)日本が朝鮮半島を植民地支配していた時代に渡日し、その後も日本に定住したコリアンの人々とその子孫を主にさす。また、「コリアン」は韓国と北朝鮮を含む朝鮮半島の人々をさす包括的な呼び方

福田恵里さん(27歳、SHE株式会社CCO)

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Photo by Shiori Kirigaya

ー恵里さんが在日コリアンだと周囲の人たちは知っていますか?

知っている人が多いです。ただ、韓国籍というのが自分にとって自然すぎて、あえて言うことはなかったので、知らない人もいるかもしれません。人に聞かれたらまったく抵抗なく「韓国人だよ」と答えてます。

ー日本で在日コリアンだからという理由で差別を受けたことはありますか?ある場合、それは具体的にどんなものでしたか?

私のような在日コリアン4世の世代では、これといった差別を経験することはないと思います。私自身は自分が「在日韓国人」だということを小さい頃から知っていましたが、それをマイノリティで恥ずべき存在だとはまったく思っていなくて、むしろ自分としては誇れるユニークな部分だと思ってきました。ただ、差別のような経験がまったくなかったわけでもありません。

小学生時代、友だちと遊んでいるときにひょんなことから私が韓国人だということを言う場面があって、おそらく友だちがそれを親に言ったみたいで。その後、「うちのお母さんが、“もう恵里ちゃんとは遊ばないほうがいいよ、韓国人だから”って言ってた」と言われたんです。そのとき初めて、「ああ、これがお母さんやおばあちゃんが言ってた、“差別”ってやつなのか」と理解しました。あまり人に言わない方がいいと言われていた理由もそのときに初めてわかりましたね。

あとは、学校での差別教育には常に疑問を感じていました。私たちの世代は、今までよりずっと多様性が受け入れられているし、昔の戦争の云々を気にする人の方が少ないと思います。それなのにわざわざ「差別の存在」を教えることによって、逆に意識してしまうのではないかなって。差別教育を受けるときは、その伝え方の悪さに居心地が悪い思いをたくさんしましたね。

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Photo by Shiori Kirigaya

ー日本での韓流ブームについてはどう思いましたか?

すごく嬉しいです。それまでは韓国ってファッションとかメイクも日本の真似をすることが多かったので。アジア圏では日本がトップで、韓国や中国がそれに追随するような構図が普通だったのが、産業面でも文化面でも両者が互いを尊重できるようになってきていて、歩み寄れているのはすごくいい傾向だなと思っています。

正直、「在日コリアンで日本でコリアンの文化を大事にしながら生きている人」と、「日本でコリアンの文化をリスペクトして取り入れている日本人」はそんなに変わらないと思っていて。私よりも韓国人なんじゃないかって思うくらい熱狂的に韓国のことを愛してくれている子もいて、むしろ韓国籍なことが羨ましいと言われたこともあります…

今までの歴史を実際に体験してない我々の世代だからこそ、純粋無垢な気持ちで互いを受容できるのだなと思います。時代が移り変わって、過去の歴史については知識として持っていたほうがいいけれど、それに惑わされず、自分で何が正解か判断できるような世の中になればいいです。

ー在日コリアンというアイデンティティについて、考えるようになったきっかけはありましたか?

アイデンティティを強く意識するようになったのはアメリカに留学したときですね。それまでは日常生活で韓国名を使うことがあまりなかったので、自分が韓国人であることを忘れてしまう、特に意識しないというような生活でした。子どもの頃は公的な手続きも全部親がやってくれるので、そこにも不自由を感じることなく生きていました。

ただ、留学に行くことになって、手続きを韓国名ですることはもちろん、現地では毎日のように「私はジャパニーズコリアンなんだ」と会う人に説明していたので、そこで韓国人としてのアイデンティティについて意識することが増えたんです。ただ、韓国人なのに韓国のことをそれほど知らないし、韓国語も話せないというところに課題意識を感じて、自分のルーツを探しに、アメリカ留学の後すぐに韓国に留学に行きました。そこで現地の文化や言葉を学べたことは、自分を形成する大きな財産になったなと思っています。

ーあなたにとって日本で在日コリアンとして生きることはどういうことでしょうか?

「在日コリアン」は日本人でも韓国人でもなく、独立した存在であると思っています。日本と朝鮮半島の間の溝にかかる架け橋には、やはり両者それぞれの立場に立ってフラットに話せる人でないとなれない思っていますが、私たちはきっとそういう役割を果たせる存在なのだと思っています。日本がもっと多様性を受け入れる国になるために、在日コリアンという存在をもっとクールなものにしていけるよう私自身も寄与したいです。

来日して5年目の韓国人の男性

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ー日本に来たきっかけは何でしたか?

初めは日本料理を学びにきました。そのあとは、もともとファッションに興味を持っていて、自分の服を作りたいという思いがあったのですが、その思いが強くなったので日本のファッションの学校へ留学することに決めました。

韓国では流行を追う傾向があって、何か一つ流行るとそれを着る人が多かったように思います。ですが日本では下北沢などの「古着の街」に行くと個性的な人が多いように思えて、ちょっと変な服でも自分なりに着こなしているところに魅力を感じました。韓国ではそういうところに関してはシャイなのか、ファッション好きな人のうち個性的なのは1%くらいに感じるのですが、日本では半分くらいが個性的に見えます。

ーあなたにとって日本でコリアンとして生きることはどういうことでしょうか?

やっぱり同じ人間だとしても、言語の問題があると思います。日本人のようなつもりで日本に住んでいるから、日本人として話したいし、日本人らしく思われるように振る舞うことはあります。でもやっぱり「“ガイジン”だからそういう発音なんだね」とか、「あ、やっぱり。わかるわ」みたいな、そういうなんかバカにされるようなことはあるかもしれない。“ガイジン”だけど、“ガイジン”って思われたくないっていう思いは、僕もまわりの韓国人も持っているかもしれないです。

日本にいて、自分はそこまで「韓国人だ!」ってそういうのをいいたくないですね。ですが、やはりどうしても韓国語の発音とかイントネーションが出てしまうときがあって、「あっ」って相手の日本人の態度が変わるんですね。悪い意味ではなく「あ、“ガイジン”だ」って。

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ー日本での韓流ブームについてはどう思いましたか?

とても嬉しいですね。以前は日本のスタイルを韓国が真似していることが多かったと思います。僕が知っている限りでは、日本のヘアスタイルとかファッションも韓国で流行っていましたし、もともとアメリカからきたアメカジも日本から学んでいた気がします。でも今は、逆に日本で韓国のストリートカルチャーやファッションが流行しているようで、若い子たちが韓国人のスタイルをいい意味で真似していると感じます。

ー日本でコリアンだからという理由で差別を受けたことはありますか?ある場合、それは具体的にどんなものでしたか?

個人的にはないです。差別をする人たちは、一部だけですよね。「韓国帰れ」って言っている人も新大久保で見かけましたし、韓国人にも日本人に対してそういうことを言う人はいます。残念ですけど、しょうがないなって思ってます。

僕は日本人だから韓国人だからではない、人として関わるのがいいと前向きに考えています。韓国でそういう意識を持っている人は多いと思いますよ。時代も時代なので、一部の人が勝手な考えから持ち続けているヘイトが早くなくなってほしいです。

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Photo by Shiori Kirigaya

 他国と比較して日本を考えるとき、アメリカなど欧米の国を比較対象とすることが多いが、隣国である韓国と比べてみると、まったく違う視点で日本を見ることができる。日本では“量産型女子大生”などいう言葉も生まれたように、同じような格好をしている人も少なくないのだが、それでも個性派が多いと見られることもあるというのは筆者にとっては意外だった。

 日本の若者がコリアンカルチャーを純粋な気持ちで受け入れられているのは、日本が行なった植民地支配や戦争を実体験として経験していないだけではなく、教育がおろそかで「負の歴史」を知らずにいる側面もあるだろう。だがそれを逆手にとれば、互いに対する理解がもっと深まり、「新しい日韓関係」を築いていけるのではないかと感じた。

Text by Shiori Kirigaya
ーBe inspired!

 

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