わたしが共謀罪に反対する6つの理由。#だから私は共謀罪に反対します


 

飲み会の席で「あいつ殴ろうぜ(笑)」とふざけあったことがあるだろうか?友達と一緒に「なんか社会おかしいよね」と憤り、声をあげようとしたことはあるだろうか?

それだけで、犯罪者として目をつけられるかもしれない、と聞いたらあなたはどう思うだろか?「共謀罪」が成立した今、それは現実になる。

Photo by 少校史默奇

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 犯罪を計画段階から処罰できるようにする「共謀罪」の趣旨を含む改正組織的犯罪処罰法が、6月15日朝、衆議院本会議で採決が行われ、可決、成立した。対象となる犯罪は277。資金調達などの「準備行為」を処罰する内容だ。安倍首相は「テロ対策」の重要性を指摘、国際組織犯罪防止(TOC)条約締結のために、法案の成立が必要だと訴えた。

 しかし、中には、テロ対策のためとは思えないものも含まれており、「準備行為」が拡大解釈されれば、犯罪と関係ない市民のリスクが増え、政府と異なる意見表明が脅される可能性がある。

 こんな難しい言葉が、連日ニュースに並んでいる。でも、そもそも共謀罪ってなに? 複雑でついていけない、という人は多いのではないだろうか。

 そこで、この記事では、難しい解説をするのではなく、「共謀罪」について、一市民としてじっくり考えてみたい。そして、「#だから私は共謀罪に反対します」「#だから私は共謀罪に賛成します」 というハッシュタグをきっかけに、なぜ反対、または賛成するのか、各自が自分の言葉で語ることで、議論の場が開かれればと思う。

わたしが共謀罪に反対する6つの理由

まず、共謀罪についての政府の説明をみてみよう。

「捜査権限が拡大・濫用されて、国民生活が広く監視されるようになるなどというおそれはありません」


「一般の会社や市民団体、労働組合、サークルや同好会などの正当な活動を行っている団体は、犯罪を行うことを目的としていないので、組織的犯罪集団に当たりません。〔…〕正当な活動を行っている団体は、テロ等準備罪の対象とはなりません」

テロ等準備罪処罰法案についてより)

 国民を安心させようと、政府は上記のような見解を示しているが、政府側の答弁でも「一般の人も捜査対象になりうる」という発言があったように、一貫性がみられない。そして、よく考えてみると、この法案には反対すべき理由がたくさん出てくる。

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Photo by Taichiro Ueki

理由1:だれが「一般人」か見分けられないから #だから私は共謀罪に反対します

 「一般人は対象になりません」。よかったぁ、と胸を撫で下ろしたいところだが、そうもいかない。もちろん「自分は監視されない一般人だ」という感覚は善良な市民として真っ当だ。だから「反対するやつはヤバイことしてるんだろ」と冷笑する態度はわからなくもない。

 けれど、残念ながら、誰が一般人かどうかは、外見で判断できない。タバコを吸ってる人を「怪しい人」、吸わない人を「一般人」とくくり、不良かどうか決める単純な話ではないからだ。外見で判断できないとなると、一般人かどうかを確かめるために一人一人の内面を調べないといけなくなる。つまり、思想信条や内心の自由が脅かされることになる。

 さらにこの法案は、タバコを吸っているところを現行犯逮捕するためのものではなく、準備行為を取り締まるものだ。タバコを所有しているかどうか調べなければ、誰がタバコを吸っているかわかるわけがない。もしくは、周囲が「あいつ吸ってるぜ」と密告するか。密告社会、監視社会になる恐れは十分にある。

 「自分は一般人」「怪しくない」という表明はなんの意味もなさない。「一般人を対象にしない」ために、「一般人」かどうか調べる必要がある、という崩壊したロジックになってしまっているからだ。

理由2:権力が乱用される恐れがあるから #だから私は共謀罪に反対します

 気になるのは、「一般人」とは誰か? 「テロ行為」とは何か? だれを監視対象にするのか? ということ。これらの基準を決める権限はすべて、政府機関や警察組織に委ねられる。彼らは、共謀罪を武器に、気に入らない組織(環境団体や人権保護団体などであっても)や反対者を、恣意的に排斥することが実質可能になってしまう。

 だから、この法案に賛成する以上は「自由を奪われてもいい」という自らの首を絞めるマゾヒスト的な宣言をしなければならないのだが、そんな人、いるのだろうか。

 法を施行するのは、人間。そして人間は、過ちを犯しうるし、欲望をもつ。自分が権力を行使できる立場になったときに、その力を絶対に乱用しないという強固な意志は、どこまで持続できるのだろう。わたしは、自己批判を込めて、この法案には反対したいと思う。

理由3:日常がギスギスしそうだから #だから私は共謀罪に反対します

 少し身近な例を考えてみたい。繰り返しになるが、「一般人」かどうか確かめるためには、事前にさまざまな人を監視する必要がある。つまり、FacebookやTwitter、LINEといったSNSも監視・捜査の対象になるだろうし、事実、それはすでに政府側が認めたことである。(参照元:東京新聞

 また、2人以上の飲みの席で「あいつを殴ろうぜ」と発言した場合、犯罪の「準備行為」と見なされることは、十分にありうるのだ。友達との会話を、政府に監視されることは、想像するだけで恐ろしい。ちょっとした会話でさえもためらうようになる。他にも、グループラインで誰かが「税金高すぎるから国会議事堂乗り込もうぜ(笑)」と書き込み、それを既読スルーをしただけで、「共犯者」とされる可能性も否定はできないのだ。

理由4:表現の自由を守りたいから #だから私は共謀罪に反対します

 さまざまなアーティストや表現者、書籍団体等もこの共謀罪には反対している。(参照元:朝日新聞, LITERA, 共同通信

 芸術などが担う表現活動は、ときに反権力・体制的な表現に踏み込み、社会を風刺、批判する役割がある。芸術のもつ言葉は、政治や経済から独立した価値を人々与える。ナチスドイツが焚書(※特定の思想を排斥するための支配者による大規模な書物の焼却)したように、中国が言論統制するように、独裁国家が規制するのは、まず「表現」である。

 芸術に限らず、言葉や表現こそが、人間の思想信条や内的自由の表れだ。今回の法案により、社会全体が「一般人」になろうと萎縮し、自由な文化や思想の発展が失速するのではないかという懸念がある。いずれ、体制に批判的な市民運動などにも圧力がかかるだろう。メディアに携わる者としても、この怖さには敏感にならざる得ない。日本は独裁国家へと、一歩踏み出してしまったのでないだろうか。

理由5:「議論」を軽視しているから #だから私は共謀罪に反対します

 最後は与党が「数の力」で押し切り、強行採決された共謀罪。衆院法務委員会で、わずか30時間余りの審議で可決(5月19日)され、国民の理解を深めるべき議論の場で、与党は支離滅裂な答弁を繰り返し、法案の問題点が次々に浮き彫りになって終わった。

 難しいことは置いておいて、誰がみても、ちゃんと議論できていなかった。「民主主義は多数決だから」と国会を傍観していた人もいたと思う。でも、議論に入る気がそもそもなければ、どんなに賛成したり反対したりしても、それはなにも知ろうとしない怠惰な態度ではないか、と思う。

 人類が長年かけて紡ぎ出した現代の民主主義は、「数の力」ではなく「あらゆる人の意見が聞かれる」ということ。反対も賛成も、マジョリティもマイノリティも、ヘイトも犯罪者も。聞かれるからこそ、議論が可能になり、批判が許され、新たな言論が生まれる。その根本を壊してしまう法案には、賛成できない。

理由6:歴史は繰り返すから #だから私は共謀罪に反対します

 「治安維持法」をご存知だろうか。1925年に制定されたこの法により、戦時下、政府は近隣住民同士で「隣組」をつくり、相互監視を行なわせた。そして戦争に批判的な人物を密告させ、つぎつぎに逮捕していったのだ。

 「そんなこと言っても民主主義だから」と、安心している人も多いと思う。でも、戦争する国家は、まず、反戦を訴える、国家に楯突く組織を取り締まる。それは人類の長い歴史が証明していることだ。だから「共謀罪」の成立と、現代の混迷とした世界情勢、安倍内閣の進める改憲方針を総合的にみれば、いま日本が「戦争できる国家」に着実に近づいている、ということは確実であるように思う。

「#だから私は共謀罪に反対します」「#だから私は共謀罪に賛成します」を集めています

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Photo by fuba recorder

 これまで共謀罪に反対する理由を一方的に述べてきたが、共謀罪に賛成の人がいたら「#だから私は共謀罪に賛成します」のハッシュタグで「理由」を教えてほしい。

 憤りや困惑、不一致や無力感はわたしたちを揺さぶり、異質性を排除してしまいたい、単純な世界で生きたい、という欲望に容易に転落する。だけど、わかり合えないかもしれない、対立する他者の言葉に耳を傾け、理由を受け止めようとすることは、人間として当然のことだ。

 賛成ー反対(もしくは右ー左)といった単純な図式で社会を語ることは、違う色を持つ多様な人間を白黒の2色で染めようとするあの息苦しさと同じかもしれない。みんな個人として、違う言葉や理由を持っている。だからこそ、それぞれの「理由」を共有したいと思う。

 法案が成立したとしても、議論が無意味になることはない。よりよい未来を実現するために、共に社会を創っている他者との対話がなによりも大切だからである。言葉を伝えることは、海に手紙を流すようなことかもしれない。でも、小さな蝶が羽ばたくその小さな風が遠い国の天気を変えてしまうように、めぐりめぐって、それを受け取る人は必ずいるのだ。

Text by Reina Tashiro
ーBe inspired!

 

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