「おにぎり君」と呼ばれた男、8年半の自転車地球一周の旅を語る



 

157ヵ国、154,600km、地球一周、五大陸の自転車走行を制覇した男がいる。
 
この偉業を成し遂げたのは小口良平氏。
 
2007年に日本一周、台湾一周から始め、その後オーストラリア、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ…と五大陸をひたすら自転車で漕ぎ進めた彼の8年半に及ぶ旅が今、終わろうとしている。

 

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反骨精神が原動力だった彼が旅を始めたきっかけ

「大学を卒業して、就職して、結婚して…そんなレールに乗った人生に疑問があったんだ。
 
僕は天邪鬼な性格だから、他の人と同じじゃイヤなんだ。
 
自分だけにしかできないことがしたい。
 
それまでにも夢はあったが、初めて具体的に実現させようと思える夢がこの世界一周自転車の旅だったんだ。」

 

【パタゴニアのアルゼンチンにて】


自転車の旅_2

そう語る小口氏は、その夢を実現させるために東京の建築業で4年間のサラリーマン生活を送ったという。
 
「“地道に働く”、このことは僕にとってとても重要なことだった。
 
今までなりたいもの、したいことはたくさんあったが、全て自分で捨ててきた。
 
生まれて初めて“この夢だけは逃げずに成し遂げたい!”と思った。
 
お金を目標金額まで地道に貯めることは、僕のこれからの夢が本気であるかを試すものでもあった。
 
そして僕はそのテストに合格した。
 
1日2食生活、朝昼おにぎりだけを食べる僕は、会社では“おにぎり君”と呼ばれた。
 
自分でする苦労には価値がある。
 
人からもらったお金では、夢は簡単に手にすることができてしまう。
 
自分で苦労したならば、簡単には捨てられない。
 
お金は苦労を学ぶために必要だ。」
 
レールに乗った人生は嫌だ、そんな反骨精神を原動力とし地道な努力を続け、4年間で1000万円という資金を貯めた。
 
自転車で地球一周するという夢は、一気に現実的なものとなった。
 
そして社会のレールから大きくドロップアウトし、地球一周という果てしなく思われる旅に向けて、力強くペダルを漕ぎ出したのである。

 
 
楽しいだけではない、過酷な旅の連続

【ブラジルの北部のマカパ付近にて】


自転車の旅_3

当然であるが、8年半にわたる地球一周自転車の旅は楽しいことばかりではなかった。
 
ときには野犬に襲われそうになったり、テント泊中、心無い人にテントをひっくり返されたりもした。
 
インドネシアではタクシーと正面衝突して前歯を2本折ったり、インドではバイクに跳ね逃げされた。
 
また中国やインドでは荷物を盗まれたり、イランでは優しく話しかけられメロンをくれたと思ったら顔面パンチされ、貴重品を持っていかれた。
 
泣きっ面に蜂、翌日にはタクシーに跳ね逃げされ、病院行きになったという。
 
ヨーロッパでは、−20℃の銀世界で凍る自転車をどうにかこうにか動かして突き進んだ。
 

【ヨーロッパのウクライナ西部にて】


(Photo by PEDALIAN.COM)

(Photo by PEDALIAN.COM)

そんな思いまでしてなぜ旅を続けるのだろう?
 
そんな風に思う人もいるかもしれない。
 
けれど、彼は情熱を持って夢に向かって突き進んだ。ひたすらペダルを漕ぎ続けた。
 
旅をやめる気はしなかったと言う。
 
旅は楽しいだけではない。
 
楽しくて美しいだけなら、精神の成熟は成し得ない
 
旅が人を大きくさせるのは、旅が完全な自由の中にあり、計画通りにいかないことにあり、そして人の助けなしでは続けられないからではないだろうか。
 
世界一周の旅に自転車という人力で挑んだ小口氏。
 
その8年半という長い時間を、真剣に旅に挑んだ彼が得たものは「自信」「度胸」というかけがえのないものだった。
 
「旅を始める前の自分は、自己嫌悪ばかりで、その上、わがままで負けず嫌いだったんだ。
 
旅を始めて、たくさんの人に助けられて、それまでの自己嫌悪は、自分と他人を比較していたらからだったと気づいたんだ。
 
旅を始めて自信がどんどんついてきて、自分と他人を比較しなくなった
 
そうすると他人に対して穏やかになれたし、人にももっと優しくできるようになった。
 
そしていろんなことをくぐり抜けることで、動じない心を得た。」
 

【パタゴニアのアルゼンチンにて】


自転車8年の旅_5
夢はでっかく、想いは近く、月まで行こう!

【ボリビア ウユニ塩湖にて】


自転車の旅_6

小口氏の夢は今まさに達成されようとしている。
 
彼自信が設定したゴールであるニューヨークに今月末頃に到着する。
 
その後日本まで飛び、東京から長野の実家まで自転車で帰る。
 
今一番会いたい人を尋ねると、「両親」と即答してくれた彼。
 
この旅が終わることについて、どう受け止めているのかを聞いてみた。
 
「8年半も旅をしたので満足感はある。
 
しかし寂しさもある。
 
道はどこまでも続いているので、自分で終わらせないと終われないのだ。
 
しかし今は日本に帰るのが楽しみなんだ。
 
日本に帰って、夢を追いかける大切さや、夢の持つ力を人に伝えたい。」
 
そう語る小口氏の夢は三つある。
 
一つは「世界一周」。
 
もう一つは「旅で出会った人たちを呼ぶゲストハウスを作る」こと。
 
そして最後の夢はでっかく「月を自転車で走る」こと!
 
「夢は言葉にして発することで、言霊となりパワーを持つ。
 
その言葉に面白がって集まってくる人がいて、知恵をくれる。
 
そんな人たちがすでに僕の財産なので、夢を話し始めて、もし叶えられなかったとしても、目標設定して話したことで半分くらいは成功していると思っている。」と笑う彼だが、世界一周自転車の旅の偉業を成し遂げた男だ。
 
月を自転車で走るなんて無理だと誰が言えよう。
 

【アメリカ合衆国の東部カリフォルニア州のデスバレーにて】


自転車の旅_7
 

 
世界中の人に応援してもらって、今たどり着くゴール

地球五大陸を自由自在に自転車で駆け抜けた小口氏。
 
彼の精神力は計り知れない。
 

【アフリカ エチオピア北部にて】


自転車の旅_8

「自転車の旅は自分の好きなように旅ができる。
 
自転車に乗ってるだけでいろんな人に話しかけられ、助けられる。
 
自転車の旅は一人ではできないので、いつも誰かの助けが必要なんだ。
 
自分一人ではできないってことが大切なんだ。」
 
大変な思いもしたけれど、世界中の人の暖かい手のぬくもりを感じる旅。
 
世界中でたくさんの人が、一人の日本男子の挑戦を応援し、声を掛け、手を差し伸べた。
 
彼を助けてくれた人たちも、きっと小口氏のこの洋々とベダルを漕ぐ姿に力づけられたに違いない。
 
そして今、旅は最終幕を迎えている。
 
ゴールであるニューヨークは目の前だ。
 
しかし、希望に溢れた彼の旅は、これで終わってしまうのだろうか。
 
いやきっと、この旅が終わっても彼はいつも心の中でペダルを漕ぎ続けるに違いない。
 
これから日本社会に戻った彼が、どうのようにこの旅で吸収したものを放出してゆくのか、今後の彼の活動にも注目だ。

 
via. 人力チャレンジ応援部, ー 1分39秒 のプレゼントー|地球一蹴、ちゃりんこ世界一周の旅 ー Rio Cycling Around The Earth
 

小口良平氏の旅の本「スマイル!」が出版決定!

Photo by 撮影者

 2016年9月 小口良平氏は8年半かけた世界157カ国自転車の旅を終え、無事日本に到着し、その後長野のご実家に到着した。彼は自転車走破距離&国数 歴代1位という快挙を成し遂げた。その彼が今回書籍を出版することが決定した。

 “旅というトリップで非日常を感じながら、読者の方に日常での共通の気づきを感じてもらいたい。そしてこの本で出会った方のたくさんのスマイルで、明日が楽しくなってもらえたら嬉しいです。”

 「やりたいことがみつからない!」「自分に自信がない!」「将来に希望がない」現代の若者にありがちな思春期を過ごした著者が、たったひとつの夢に命をかけた。

 自由の象徴の自転車にまたがって、世界157カ国を旅して見た世界とは。帰国後の著者の「スマイル!」が、あなたの生き方に何かを問いかける。

 長野県岡谷市出身の自転車冒険写真家、小口良平の感動のデビュー作。

出版:㈱河出書房新社 定価:1,300円(税別) 
2017年5月17〜24日発売
ISBN:978-4-309-02573-5

ーBe inspired!

Texted by バンベニ 桃

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