人、動物、環境に悪影響しか与えない「発がん油」を知らずに摂取し続ける愚かな日本人

Text: Megumi Satou

2017.3.2

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私たちが日常的に口にしているアイスクリームやチョコレート、ポテトチップス。コンビニやスーパーマケットで手軽に購入でき、嗜好している人も多いだろう。

しかし、それらを食べ続けることで地球環境が確実に壊れていくという事実はあまり知られていない。

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Photo by D. [SansPretentionAucune] (•̪●) ✪

地球を壊す危険な油

ポテトチップスやアイスクリーム、チョコレートの原材料に使われるパーム油。しかし、パッケージに実際に記載されているのは「植物性油脂」という名前。一体どのような油が使われているのか、多くの消費者は知らないままである。

パーム油は、アブラヤシの実を原料とする油のことで、インドネシア、タイ、マレーシアが主な原産国である。世界の年間生産量はおよそ6,000万トンにものぼり、最も多く生産されている植物油なのだ。

実は、日本の植物油の消費量のうち、4分の1はパーム油である。スナック菓子などの嗜好品に多く含まれ、日本人は年間平均4kgも摂取しているという統計が出ている。そして、パーム油が日本に届くまでに、様々な環境・社会問題が発生していることを私たちは知らない。つまり私たちは、ポテトチップスを食べながら、悪意なく地球の破壊に加担しているというわけだ。(参照元:危ない油 パーム油のリスク、知っていますか?)

1袋のポテトチップスがオラウータンを殺す

アブラヤシの実は収穫から24時間以内に搾油しないといけない性質があり、広大な農地と搾油のための工場が必要とされる。世界最大の生産国であるマレーシアやインドネシアでは、農園を拡大するために大規模な森林伐採が行われており、過去20年において日本の九州と同じ面積の森林がアブラヤシ農園へと姿を変えた。

被害は森林だけに止まらない。かつて豊かな熱帯雨林には貴重な野生動物が数多く住んでいたが、パーム油の大量生産によって森が切り開かれ、動物たちの住処がなくなってしまったのだ。ゾウ、トラ、オラウータンなどが絶滅の一途を辿っている。

また、パーム油を生産する際には大量の二酸化炭素が排出されるため、地球温暖化にも拍車をかけている。(参照元:プランテーションウォッチ)

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Photo by adrian kenyon

油によって権利を奪われた人々

パーム油によって引き起こされる問題は、環境破壊や野生動物の絶滅だけに止まらない。広大な農園における作業は、日雇い労働者や移住労働者に支えられているのだ。その中にはもちろん小学生くらいの子どもが大勢いる。彼らは労働に見合うだけの対価を得られず、大量に散布される農薬の影響で健康に被害をきたす者もいる。人権を無視した児童労働や強制労働は、コンビニでアイスクリームを買う日本人にしてみれば、実感しにくい問題かもしれない。しかし、今この時も、彼らは過酷な労働環境下でアブラヤシの栽培や収穫を行っているのだ。

また、アブラヤシ農園の開発によって住む場所を奪われた人もいる。昔からその土地に住んでいる人々の権利を無視し、企業が土地を買収。広大なアブラヤシ畑を作ってしまったのだ。このため、インドネシアでは住民と企業の間で土地紛争が勃発している。(参照元:危ない油 パーム油のリスク、知っていますか?

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Photo by Program on Forests (PROFOR)

パーム油問題の打開策

パーム油が引き起こす数々の問題に立ち向かうため、2004年、RSPO(持続可能なパーム油円卓会議)が設立され、国際的な認証基準を制定した。「危険な油」の生産に歯止めがかかることに期待が向けられたが、管理しきれず非認証の農園の油がRSPO認証として出回ってしまうこともあり、現在は問題解決には至っていない。

RSPOの失敗を踏まえ、2013年にはPOIG(パーム油改革グループ)が発足された。RSPOの支援および、認証基準を引き継ぐと同時に、“森林減少を食い止め、気候変動を抑制する泥炭地保全を行い、土地権、労働権、児童労働を含む人権侵害等に対処するPOIG要求事項”を定めたのである。現在、多数の企業がメンバーに加わり、支援を進めている。(参照元:危ない油 パーム油のリスク、知っていますか?

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Photo by Vanderhoof

使う油は自分で選ぶ

チョコレートやアイスクリームに含まれているパーム油は、食品の口当たりをなめらかにし、揚げ油として使用すればサクサクの仕上がりになる。このようなメリットがある一方で、健康への被害が危惧されていることも事実である。

ラットを使った実験によると、パーム油には発がん性のリスクが確認されている。また、他の油を与えたラットに比べ、パーム油を与えたラットのほうが生存率が低いという結果が出た。(参照元:Business journal

現在の日本では、パーム油の危険性に対する意識が欧米諸国ほど高くはない。一人ひとりの消費者がパーム油の問題に気づいたところで、コンビニに売っているお菓子やカップ麺、洗剤には当たり前のようにパーム油が原材料として使用されているのが現状だ。企業の意識改革が進まない限り、これらの商品が変わっていくことはない。

では、消費者が個人的にできることは何だろうか?

まず誰でもできることは、パーム油の危険性を知った上で消費活動を行うことではないだろうか。インターネットで「パーム油」の名前を検索してみると、どんな製品にパーム油が含まれているのかがすぐに分かる。あまりにも多くの製品に使用されているため、驚くかもしれない。アイスクリームやポテトチップスを一切買わない、という方法は現実的ではないが、問題に関心を持った上でスーパーマーケットに行けば、購入の頻度や量は以前よりも変わってくるだろう。(参照元:あぶない油の話

また、日本ではまだ少ないが、RSPOの認証マークがついた製品を選んで購入することも問題解決に繋がる。日本人が持続可能な方法で生産された油を選ぶことにより、一人の命、一匹の命、一本の木が救われるかもしれないのだ。

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Photo by Rainforest Action Network

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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