「星の王子さま」に銃口を向ける、25万人の子どもたち


「星の王子さま」は世界的なベストセラーである。
 
大人も子どもも、知らない人はいないだろう。
 
しかし、作者のサン=テグジュペリが実は童話作家ではなく、兵士として空に飛び立ち、還らぬ人となったことはあまり多くの人に知られていないようだ。
 
そして、彼を撃墜した兵士が「星の王子さま」のファンであったことは、もっと知られていない事実である。


 
 
戦場に飛び立ったファンタジー作家

(Photo by Luc)

(Photo by Luc)

かの有名な「星の王子さま」の著者・サン=テグジュペリは実は専業の童話作家ではない。
 
彼は、飛行機の操縦士であった。
 
裕福なフランスの家庭に生まれた彼は、若い頃に兵役についた後、航空会社に就職し飛行機乗りになったのだ。
 
アメリカへ亡命中に執筆した「星の王子さま」のベースとなっているのは、彼が長距離飛行にチャレンジして砂漠に墜落し、4日間の過酷な遭難体験である。
 
「目に見えないものこそ意味がある」
 
戦場で、誰もいない砂漠で、様々な<現実>を目の当たりにした彼は、「星の王子さま」の中で狐や王子様に自分の本心を代弁させ、世界中の子どもたちの胸を震わせた。
 
しかし1943年、彼は43歳の時、再び兵士として空へ飛び立つ。
 
これは、第二次世界大戦の最中のことである。
 
兵役に就いて1年後の7月、彼は出撃後に地中海の上空で行方不明となった。
 
彼の機体の残骸が海の底から引き上げられたのは、彼が行方不明になってから50年以上経った、2000年のことである。
 
もちろん見つかったのは機体だけ。
 
彼の体は、永遠に発見されることはないだろう。

 
 
王子様を撃墜した、88歳の【少年】

(Photo by Tom Krueger)

(Photo by Tom Krueger)

彼の機体が50年ぶりに地上に姿を見せた時、「私がサン=テグジュペリを撃った」と名乗る男性が現れた。
 
彼の名はホルスト・リッペルト氏、88歳。
 
元ドイツ空軍のパイロットであり、スポーツ記者だった。
 
ホルストは機体の残骸が見つかるまでの50年以上、「自分が撃墜したのがサン=テグジュペリではありませんように」と祈り続けたそうだ。
 
しかし、その祈りは届かなかった。
 
彼が地中海上空で撃った敵機のパイロットが、サン=テグジュペリかもしれないという話を聞いたのは、出撃から数日後のこと。
 
「俺たちは『星の王子さま』を読んで大きくなったんだ。あの敵機に乗っているのがサン=テグジュペリだと分かっていたら、絶対に撃たなかったのに」
 
ホルストもまた、幼い頃に「星の王子さま」を愛読していた少年の1人だったのだ。
 
彼は自らの手で敬愛する作家を撃墜してしまったのである。
 
それは、大切なことを教えてくれた小さな王子さまを、自分の手で殺めてしまったのも同然。
 
以来彼は、二度と飛行機に乗らないことを決めたそうだ。
 
戦争により、少年は自らの手で夢を壊してしまった。

 
 
家族や夢に銃弾を放つ少年少女

(Photo by Herald Post)

(Photo by Herald Post)

現在、世界には25万人以上の少年兵がいると言われている。
 
貧しい発展途上国では、兵士になると衣食住を確保することができるため、生きるために志願する子どもが後を絶たない。
 
中には、親を殺された復讐から軍に入隊する子どもや、誘拐されて自分の意思とは無関係に戦闘員にされている子もいる。
 
機敏で順応性があり、すぐに“補充”ができる少年兵は、大人よりも弱い立場であるため体罰を受けたり、見せしめとして体の一部を切断されることもある。
 
少女であれば性的暴行を加えられることも多い。
 
兵士になってから1時間だけ銃の講習を受け、すぐに戦場へ送りこまれる。
 
規則を破った家族を銃殺しろと命じられる子どももいる。
 
彼らには【反対】する力はない。
 
子どもの人権が尊ばれない世界において、彼らの命と心は「使い捨ての武器」と同じなのだ。
 
貧困や宗教上の理由から戦争や紛争はなくならない。
 
殺し合いは問答無用に子どもたちや若者の人権を奪い、「夢」も壊してしまう。
 
小さな兵士たちもまた、ホルストと同じように自分の心に住む「星の王子さま」に銃口を向けざるを得ないのだ。

 
 
日本の会社員や小学生が銃を構える未来

(Photo by j.r.trauben)

(Photo by j.r.trauben)

日本に住んでいると、戦争はどこか他人事だ。
 
テレビで報道される紛争やテロのニュースを見聞きし、空爆の被害に逢う人々に対して哀れみの視線を送る。
 
通勤の満員電車に乗れば、そんな遠い国の話は頭の片隅に追いやられてしまうだろう。
 
しかし、徴兵の問題は日本人にとっても他人事ではない。
 
会社で研修を受けている新入社員や、ランドセルを背負って通学している子どもたちが、すべての仕事や勉強を手放し、銃を持つ日は近づきつつあるのかもしれない。
 
各々の「大切な人」に銃口を向ける未来が訪れないように、私たちには何ができるだろうか。

 
 
via. carview, つらつら日暮らし, Terra Renaissance
 
 

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