プレミアムフライデーは余計なお世話。政府が胸を張って提案した危険な「15時退社制度」は日本人を苦しめる。


年始早々、3万以上のリツイートをされたツイートが話題を呼んでいる。

その内容は、元日から3日まで休業したとある量販店が、「なぜ元日に営業をしないのか」というお客様アンケートの質問に対して「従業員にお正月をゆっくりと過ごす時間を与えたい」と回答したというもの。(参照元:Twitter

本来、日本の元旦は家族とゆっくり過ごすもの。

一方、「元日も休まず営業」と明言しているのがビックカメラ。ビックカメラは「必要なものをいつでも購入できる安心感をお客様に与えたい」という理由で元旦も営業しているのだ。(参照元:Yahoo!)日本ではこちらの方が一般的な考え方と言えるだろう。なぜ日本では休みを削って働くことが美学であり、“お客様思い”なのだろうか。

「定時帰宅」なんて、もう古い

(Photo by Unsplash)

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 「日本人は働きすぎ」。この言葉は耳にタコができるほど聞いた。それでも、私たちの労働に終わりが見えないのが現状である。そんな日本社会に“朗報”を伝えたのは、意外にも日本政府であった。なんと来月から「月末の金曜は15時退社を推奨する」と言いだしたのだ。そうプレミアムフライデーと呼ばれるこの制度、期待を寄せるのはまだ早い。 夢のような労働環境が整っているスウェーデンの制度と比べてみると、全く喜べない制度かもしれない。

 スウェーデンではここ数年「6時間労働」が国レベルで推奨されていて、ついにスウェーデン人の1日の平均労働時間は6.75時間にまで削られた。(参照元:世界ランキング)だが、労働時間が削られたからといって生産性が低くなったわけではない。生産性は8時間労働の時と変わらず、昨年4月に公開された評価報告では欠勤が大幅に減少し、生産性や労働者の健康が改善されたという効果まで実証されたのだ。(参照元:exiteニュース)実際に、短時間労働が与える影響力は証明済で、「American Journal of Epidemiology」が行った研究によると、週40時間しか働かなかった人は、週に55時間働いた人に比べ知的作業効率が高いことが分かっている。(American Journal of Epidemiology調べ)多くのスウェーデン国民も、6時間への短縮労働によってモチベーションが上がり、仕事への集中力がアップしたと実感しているようだ。

「仕事から離れる」ことが「いい仕事」を生む

 スウェーデンだけではない。ドイツでも徹底した休みを政府が管理している。休みというと企業の休みに注視しがちであるが、サービスを提供する小売店で働く人にも休みが必要だ。そんな彼らにも目を向けたのが「閉店法」という宗教の関連から生まれたドイツ独自の法律。この法律は、州によって多少の違いはあるが平日の営業時間は午後20時まで、日曜の営業は認められないという決まりである。そのため、日曜日は街中は驚くほど静か。みんながきちんと休み、「家族で過ごすこと」が当たり前のようになっているのだ。

 このように、ヨーロッパの他国と比べてみると、日本の労働時間が長いことが明らかになる。ニュースサイト『Crack Two』誌が先進36ヶ国を対象に行った労働最短時間ランキングでも日本は下位の28位であったのだ。(Crack Two調べ)しかし、注目したいのは長い労働時間だけではなく、それによって失われる心の余裕という部分。

 単純に労働時間が短縮されたら心に余裕ができるのか? 答えはNOだ。むしろ、仕事を持ち帰ったりその分のプレッシャーを感じたりしてしまう危険性もあるのではないだろうか。長時間労働が問題視されているアメリカで「32時間労働」という新しい働き方を提唱した企業のCEOは「長時間働くほど生産性が上がるという神話は間違い」であると語る。それよりもむしろ、家族と過ごす時間をつくって癒されたり仕事から離れた時間を作ったりすることでよりクリエイティブなアイデアが浮かぶと確信しているようだ。(参照元:YouTube)単に労働時間の短縮を求めるのではなく、それと同時に完全に仕事と切り離した時間の創出が必要なのだ。

「15時帰宅」は「弊害」ばかり?

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(Photo by Tim Gouw)

 冒頭で紹介した日本で来月から始まる月末の金曜日のは15時退社を促す「プレミアムフライデー」。これを取り入れることは各企業に委ねられるが、多くの企業が取り入れることによって、時間の余裕ができたり、消費喚起効果があるとされている。しかし、15時帰宅が進んだところで、その「穴埋め作業」に追われそうなことはなんとなく想像できてしまうのではないだろうか。

 例えば15時帰宅のしわ寄せが別日や休日出勤となるかもしれない。それに、消費を喚起することで、小売店などの従業員は逆に労働時間が伸びてしまうことにも目を向けなければならないだろう。日本経済産業省が掲げている「プレミアムフライデー」の目的の一番最初に書かれている項目は、「個人が幸せや楽しさを感じられる体験(買物や家族との外食、観光等)や、そのための時間の創出を促すことで、充実感・満足感を実感できる生活スタイルの変革への機会になる」だ。(引用元:日本経済産業省)もし多くの企業が15時退社を実施するのではあれば、ただ帰宅を促すのではなく、それに伴った心の余裕もできるような取り組みをしていかなければならないだろう。

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Text by Asuka Yoshida
ーBe inspired!

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