カリフォルニアの大学生が考案。環境にいい「食べるビール」ビジネス


「大量生産の安いビールより、少し高いけど生のクラフトビールを飲むほうがいい」。量より質をビールに求める消費者が増えると同時に、世界中で増えているのが都市型の小規模ブルワリー(ビール工場)だ。そんな空前のクラフトビールのブームの中で、ビールよりも、“ビール粕(かす)”に注目し、ビジネスを始めた大学生2人が米カリフォルニア州に存在する。

(Photo by Winni Wintermeye)

(Photo by Winni Wintermeye)

 ビール粕とは、ビールの原料である麦芽から糖分を抽出したときに残る麦芽の粕のこと。いわば、甘酒などに使われる酒粕(さけかす)のビールバージョンだ。

 一般的に、大手などの大規模ブルワリーから出るビール粕は、「農業用の堆肥」や「動物のエサ」になる。しかし都市の小規模なブルワリーは、量が出ないために、農家に運ばれることもなく、捨てるしかないのだ。

 そんな捨てられてしまうビール粕に新たな価値をつけるサステナブルなビジネスとは一体なんなのだろうか?

「捨てるビール」を「食べるビール」へ。ビール好き大学生の大発見

(Photo by Jesse Rogala)

(Photo by Jesse Rogala)

 カリフォルニア州ロサンゼルスの名門公立大学、UCLAの学生、ダン(Dan Kurzrock)とジョーダン(Jordan Schwartz)。

 まだ2人が学生だった頃、ビールは好きだけど、量産されるビールよりも少し値がはるクラフトビールを買うお金がなかった彼らは、なんと自分たちでビール作りに手を染める。そして、ビールを作る度に、学食で使う鍋がいっぱいになるほどの大量の麦芽かすが残る事実に愕然とする。生ゴミを堆肥に処理するコンポスト容器もないし、餌として食べてくれる動物なんか、もちろん近くにいない…。ビールを作る度に、大量のビール粕をゴミ捨て場に持っていくのだが、毎回、「これ、食べれそうな匂いがすんだよなあ」と罪悪感を感じる。とうとうある日、実際に食べてみると、意外とイケることに気づく。そして、「そうだ!このビール粕でパンを作って友達に売って、その金でもっとビールを作ろう!」と、思い立ったのだ。

(Photo by Jesse Rogala)

(Photo by Jesse Rogala)

 彼らが、パン作りを通して学んだことは3つ。1つ目は、周囲がこのビール粕のアップサイクルするアイデアを歓迎してくれたこと。2つ目は、ビール粕がパン以外にも活用可能なこと。そして3つ目は、増え続けているアーバン・マイクロ・ブルワリー(都市型小規模ビール工場)が、このアイデアを支持して、パートナーになってくれれば、ゴミが減り、「サステナブルなビジネス」への挑戦が可能になるということ。

 その後2人は本業で、「ビール粕のビジネスモデル」を検討。製造が重労働で、賞味期限も短いパンではなく、グラノーラバーに路線変更し、ビール粕を20%使用したグラノーラバー「ReGrained」を開発した。現在2種類を販売している。

 アーモンド同様のタンパク質、オートミールの3倍の食物繊維を含むという栄養価の高さから、ビール粕のことを「スーパーグレイン」と彼らは名付けた。

健康にも環境にも「サステイナブルなビール粕」

(Photo by Sophi Pechner)

(Photo by Sophi Pechner)

 ReGrainedは現在、3つのアーバン・マイクロ・ブルワリーとパートナー契約を結び、毎週1カ所からビール粕を回収している。アーバン・マイクロ・ブルワリーは、大手ビール会社に比べてビール粕の量が少なく、また田舎との距離も遠いため、農場に送って飼料や堆肥にするような対応は難しい。ホームブルワーも同様で、ゴミとして処理するしかない。とはいえ、瓶ビール6本を作るのに、約450gもの麦が使われるというのである。これでは都市型ブルワリーが増えれば増えるほど、食品ロスも増えてゆく。ReGrainedはそんな環境問題への解決法をも提示しているのだ。

肝心なお味は??


(Photo by Sophi Pechner)

(Photo by Sophi Pechner)

 環境にも、健康にも良いReGrained。果たして味はどうなのだろうか?アメリカ在住の筆者は実際に2種類のグラノーラバーを食べてみることにした。

 まずは、黄色いパッケージの「ハニー・シナモン・IPA」。ペールエール用の淡色麦芽かすを使った商品だ。パッケージを開けると、シナモンとハチミツの甘い香りがする。サクサクした食感ではなく、しっとりタイプのグラノーラバーだ。薄くて柔らかいものの、ビール粕の繊維が多くてかみごたえがある。甘さも程よく、香ばしくて、無理なく食べられる。

 続いては、茶色いパッケージの「チョコレート・コーヒー・スタウト」。スタウトのような黒ビール用に焦がした麦芽かすを使った商品だ。こちらは、一口目から眼が覚めるくらいコーヒーの味と香りがする。また、何口かに一度ヒットする小さなセミスイート・チョコレートチップも良いアクセントだ。歯ごたえは同様で、かなり美味しい。ともに全くビールの香りも味もせず、美味しいグラノーラバーとして普通に楽しめた。

 もっといろんな味があっても売れると思うが、彼らは「新しい味のバーも出すと思うけど、僕たちはグラノーラバーの会社じゃないんだ」という。ReGrainedの将来のビジョンは、「ビール醸造業とフードシステムの橋」。つまり、「廃棄されそうな食品を、食品として再活用するモデルのプラットフォーム」である。

 そんな彼らが最も誇りに思っているのは、非営利ではなく、営利を追求しながらも、サステナブルな活動をしていること。「このスーパーグレインを流行らせてみせるよ!」と言い放つ彼らのグローバルな目線でのローカルな挑戦を応援したい。

※動画が見られない方はこちら

via : ReGrained

Text by Rika Higashi
ーBe inspired!

 

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