#002 「家族」を壊して、「家族」を見つけなおす。| マイノリティに目を向ける。UNITED PEOPLE アーヤ藍「シネマアイ」


この連載では、毎回、ユナイテッドピープルが届ける映画を少しずつ紹介しながら、世界で起きている問題に触れたり、そこから日本との繋がりを見つめたりするような記事をお届けしていきます。

(Photo by Reo Takahashi)

(Photo by Reo Takahashi)

お盆と年末。この2つのワードを聞いた時、あなたはどんな気持ちになるだろう?

私にとっては、一年で一番苦手な2つの時期だ。この2つの時期が近づくとよく聞かれる。「実家には帰るの?」「帰省しないの?」と。

大学入学直後に両親が別居した。半ば鬱状態になった母親を最初は支えようとしたが、やがて怒りの矛先が自分に向くようになった。このままでは私も壊れてしまう。そう思って連絡を経ってから数年が経つ。父は新しいパートナーと、新しい家で暮らし始め、私には「帰る家」はない。

これからの時期、常套句のように使われる「帰省するの?(しないの?)」という問いかけ。「帰らない」と答えると、「それは親が寂しがるんじゃない」と言われことも少なくない。しかし私と同じように、「実家」がなかったり、親との縁が切れていたり、あるいは亡くなっている人たちも少なからずいるはずだ。質問をするとしたら、「年末(お盆)はどう過ごすの?」という言葉にぜひ切り替えてみてほしい。

「家族愛アレルギー」の私に浸透してきた二つの映画

 さて、そんな私は「家族愛」が溢れる映画が苦手だ。羨望の念から、観終わったあとに、やさぐれた気持ちになったり、「現実はこんなキレイじゃない!」と、うがった目で見てしまったり…。

 だが気づけば、今の会社に入ってから、自分で買い付けた映画は2本とも「家族」に関わる作品だった。「家族像」が多様になれば、理想像から「はみ出す」こともなくなる。

 一作目が『ジェンダー・マリアージュ 〜全米を揺るがした同性婚裁判〜』だ。

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(c) 2014 Day in Court, LLC

 2008年5月に同性婚が法的に認められ、全米で2番目の同性婚合法州となったカリフォルニア州。しかしその6ヶ月後の11月、結婚を男女間のみに限定し、同性婚を禁止する法案「提案8号」が住民投票で可決された。

 この提案8号を、「平等な人権を保障した州憲法に違反する」として訴訟を起こした2組の同性カップルと、彼らを支える弁護士や人権団体のメンバーたちを追ったドキュメンタリーが、この『ジェンダー・マリアージュ』だ。

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 自分の家族がバラバラな状態になったときに一番辛かったのは、そのことを周りの誰にも相談できなかったことだ。

 「お父さんとお母さんと子供」が揃った家族が「ふつう」で、みんな仲良しなのが理想の家族像。様々なメディアを通じて伝えられる情報から、そんなふうに思い込んでいた。だから、そこに当てはまらなくなってしまった自分の家族が恥ずかしく思えた。

 社会における「家族」のイメージ(価値観)そのものが、もっと多様化すれば…。

 カップルだけで子どもがいない家。
 シングルファザー/シングルマザーの家。
 お父さんが2人、あるいはお母さんが2人いる家。
 養子縁組で親子の血が繋がっていない家。
 離婚と再婚を繰り返し、「親」がたくさんいる家…。

 固定化した社会の「家族像」があると、そこからはみ出してしまった時に苦しめられることになる。だが、いろんな形の「家族」が世の中に溢れれば、「家族とはこうあるべし」というイメージが弱まり、どんな形であっても気にならなくなるはずだ。

 映画『ジェンダー・マリアージュ』のなかで登場人物たちが求める「同性婚」は、そんな「家族像の多様化」の一側面を担っているといえる。

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(c) 2014 Day in Court, LLC

血は繋がらない。でも、大きな「家族」

 また、「同性婚」というとカップルだけの話のように思えるが、この映画で映し出されているのは、もっと大きな「家族」の話だ。訴訟を起こした2組の同性カップルと、彼らの親や子供たちはもちろんのこと、彼らに寄り添い続けた弁護士陣や人権団体の人たち。同じ願いのもとに集まり、声を挙げる同志たち…。

 それは、血縁によらない大きな「家族」を形成しているように見える。私も、血は繋がらないが、まるで家族のような人たちに出会えたからこそ、今まで生き続けてこられた。それがこの作品のもうひとつの魅力と言えるだろう。

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(c) 2014 Day in Court, LLC

自分の家族以外の家族、知ってる?

 2作目は『ゲイビー・ベイビー』だ。

 これは、まだ同性婚が合法化されていないオーストラリアに暮らす4組の同性カップルとその子供たち(ゲイビー)を追ったドキュメンタリーである。

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(c) Marla House

 精子提供を受けて子供を産んだ同性カップル。育児放棄されていた子供を養子縁組で迎え入れた同性カップル。かつて異性と結婚し、子供が生まれたが、のちに離婚して、同性のパートナーと暮らし始めたカップル。

 ひとくちに「同性カップルの家族」といっても、実に多様だ。

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 そしてこの作品は、LGBTをひとつのテーマとしながらも、それ以上に引き込まれていくのが、「親子の関係性」だ。

 親が子供にどんな愛情表現をするのか。子供として守るように接するのか、大人のように距離をおいて接するのか。どんな怒り方をし、どんな決まりごとをつくり、どんな風に話し合いをするのか…。

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(c) Marla House

 ほとんどの人にとって、自分が経験してきた親子の関係性が「当たり前」であり、よその家族のあり方はほとんど知らないにちがいない。

 この映画が赤裸々に映し出している4組の家族の多様な「内側」は、きっと、あなたが知らなかった親子関係を見せてくれるはずだ。今、家族がいる人も、これから家族をつくろうとしている人も、あるいは以前の私のように家族との関係性に悩んでいる人にも、ぜひ観てもらいたい。

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(c) Marla House

“The people who make you who you are, are your family”
自分をありのままの自分にしてくれる存在が、家族なんだ

▼映画『ジェンダー・マリアージュ』個人観賞用DVD販売ページ
http://unitedpeople.jp/against8/dvd

▼映画『ゲイビー・ベイビー』市民上映会配給記念!特別上映会(11月26日(土)夜)
http://ptix.co/2ewSt8j

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Text by Ai Ayah
ーBe inspired!

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