55杯目:「亀裂ではなく対話を求める」。伊勢谷友介、坂本龍一も参加する “あるダム”の必要性を問うプロジェクト。#いしきをかえよう|「丼」じゃなくて「#」で読み解く、現代社会


 

今から半世紀前に計画された「石木ダム建設計画」が本格化している。長崎県と同県佐世保市が1962年から推し進めるこの共同事業は、ダム建設に際して住居を追われる地域住民の反対運動もあり、長年停滞したままだった。(参照元:毎日新聞

しかし、2013年に国が建設計画を事業認定*1したことから自体が急変。地域住民の財産を法の下に強制収容できるようになった長崎県側が事業を加速。2015年には実際に一部農地が強制収容を受けた。

ダム建設の主な理由として挙げられているのが、佐世保市の「水源確保」と地域一帯の「洪水防止」である。だが計画立案当時から半世紀が経ち、周辺の環境は大きく変わった。計画自体の意義に疑問を投げかける声も上がっている。

建設費用538億円のダムが本当に必要なのか。シンプルに両者の意見を同時に聞いてみたい。そう考えた長崎県民、NGO、企業、そして著名人が参加し、長崎県に対して公開討論会の開催を訴えるための「#いしきをかえよう*2プロジェクトが動き始めている。(参照元:佐世保市水道局, 長崎県庁

(*1)公共性の高い事業であることを認めること
(*2)いしき=石木=意識

 ダムの建設予定地は、長崎県川棚町に流れる川棚川の小さな支流「石木川」。夏には蛍が飛び交う石木川の流域は、川棚川の11%。ここに縦55メートル幅234メートルのダムを建てようというのが、石木ダム建設計画の概要である。計画した当時は建設理由や需要も理にかなっていたものの、時を経てその有用性が疑問視されているのが実情だ。

 「100年に1度の洪水がいつ起こるかは分からない」「ダムを造らないと今後水が足りなくなる」という建設賛成派と、「流域11%の石木川にダムを建設しても効果は薄い」「人口が減っているのに水の需要が上がるだろうか」という反対派が存在しているが、問題なのは建設の可否だけではない。実はこのダム建設計画、当事者となる長崎県民の理解がほとんど進んでいないという。

 #いしきをかえようプロジェクトを支援するアウトドアブランド、「パタゴニア」が行ったアンケートを受けた長崎県民の2人に1人が、計画のことを「よくわからない」、約8割が「県の説明が不十分」だと回答している。(参照元:patagonia_jp

 その建設費用の多くに長崎県民の税金が投入される石木ダム建設。公共の福祉、つまりそこに住む人々にとって有意義な開発を担う公共事業の内情としては、いささか不安が残る結果だ。そんな現状のなかでも建設は進みつつあり、反対運動を続ける地域住民と長崎県側の緊張関係は日ごとに不安定さを増している。このままではお互いにとって不幸な結果になりかねない。

※動画が見られない方はこちら

 そこで#いしきをかえようプロジェクトは、長崎県に公開討論会の開催を訴えるための署名活動を始めた。俳優の伊勢谷友介氏、音楽家の坂本龍一氏を始め、各界の著名人が賛同者として支援を表明している。

 建設賛成派と反対派の亀裂を広げるのではなく、あくまで対話の場を求めるというこのプロジェクト。単純な反対運動ではなく、ダムが本当に必要なのかどうかをみんなで考えるための活動とあって、少しずつ石木ダム建設問題の存在が当事者の外にも知られつつある。




 

 ダム建設予定地では、家屋移転対象(ダム建設が実施された場合水の底に沈む家屋)である13世帯53人が今も日々を営む。長崎県には今一度、ダム建設のメリットとデメリットを天秤にかけた上での判断を期待したい。

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#いしきをかえよう実行委員会によるキャンペーンポスター
Photo by #いしきをかえよう

 そもそもこの問題は対岸の火事ではなく、日本に住む上では避けては通れないものである。日本は世界的に見ても自然災害が発生しやすい国であり、近年も水害が多大な被害を各地域にもたらしている。直近では茨城県を常総市を中心に大きな被害をもたらした鬼怒川の氾濫や、広島市北部を襲った大規模な土砂災害が思い浮かぶだろうか。(参照元:国土技術研究センター, 国土交通省

 日本にとって、水害をいかに防止するかは積年の課題なのである。そのためのダムでもあるが、その有用性を巡って騒動になる建設計画は後を絶たない。反対運動もあり最終的には着工されなかった熊本県の川辺川ダムや、逆に反対運動が行われながらも現在完成間近である群馬県の八ッ場ダムなど、全国に問題の火種は燻る。

 今年も年末に向けて、忙しさは増してゆくばかりだ。今日のできごとを振り返る余裕もないそんな日常のなかで、何か大切なものを見逃してはいないだろうか。いつの間にかあなたの大切な何かが変わってしまわないように、立ち止まり考えてみよう。意識を変えよう。無関心でいられるのは、今だけかもしれない。

Cover photo by Kees Streefkerk
Text by Yuuki Honda
ーBe inspired!

 

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