54杯目:「セックスのこと、教えて」。担当医も教えてくれない、病気や障害を持つ人の“性教育”を話す場を作る若者 #ChronicSex|「丼」じゃなくて「#」で読み解く、現代社会


 

慢性的な疾患、あるいは生まれつき障害を抱えた人たちが、どのようにセックスと向き合っているか考えたことはあるだろうか?

当事者としてかつてセックスライフのあり方に悩みを持ち、現在では性教育者として発信を続けるカーステン・シュルツは、5歳から現在にいたるまでに、さまざまな体の不調を経験している。

全身の関節炎、骨格に痛みが出るリウマチ、背骨がゆがむ側湾症、ひざの皿が痛む関節痛を両ひざに、さらには喘息やPTSD、小麦アレルギーや乳製品アレルギーなど、治療に長い期間を必要とする慢性的な疾患と、それにともなうメンタル的なアップダウンの数々。

Photo by 撮影者

複数の病気が重なり治療も複雑化していくなかで、できるだけ自立した生活を送ろうとするが、そこには常に挑戦がつきまとう。すべての人に理解があるわけでもなく、誤解を招くこともあったという。

また、担当医たちは彼女の体の痛みを緩和するためにさまざまな手助けをしてくれるものの、決して教えてくれないことがあった。それは、「体に負担をかけないで行なうセックスの仕方」だ。

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慢性的な疾患を持つ人のためのセックス・ムーブメント

 一体どこでなら、慢性的な疾患にかかった人のセックスについて信頼に足る情報交換ができるのか。悩んだカーステンは自らのSNSで発信を開始。すると他にも同じような悩みを持つ人からの声が寄せられコミュニティが形成された。それが「#ChronicSex」(慢性的な疾患を持つ人のためのセックス)の活動に発展する。

 彼女自身が見つけられなかった問いの答えは、現在#ChronicSexのウェブサイトやSNSを通して同じ悩みを持つ多くの慢性疾患患者、障害者、性的マイノリティーなどに公開され、現在でも多くの人の助けになっている。

 それは「膝に負担がないセックスのポジションを手助けするクッション」を使ってみた感想や、「1つ買えば複数の目的を果たせるセックストイ」のユーザーレビューなど、当事者ならではの実用的な答えが多い。

 その他にも#ChronicSexはオープンなディスカッションの場をいくつも用意している。毎週木曜日の夜(US東海岸時間)にはツイッター上でディスカッションの時間を設けているほか、ツイッターがオープンすぎて抵抗を感じる人のためにはFacebookにもクローズドなグループページが、またポッドキャストでも情報発信をスタートさせた。さらに2016年からは医療関係の団体とともにリサーチにも着手し、より多角的にこの問題に取り組む姿勢を見せる。カーステンは講演に呼ばれる機会も多い。



慢性的な疾患を持っているからってセックスを諦める必要はない #ChronicSex



#ChronicSexのチャットを忘れてた。すごく重要で役に立つグループの一つ!



大好きなみんな、自分を大切にね!また来週のチャットで会いましょう :) #ChronicSex

 

なぜ障害者がセックスを楽しむことがタブーなのか?

 では、セックスは普段の生活においてどれほど重要なのだろうか。セックスは多くの人にとって人生における大きなパートを担うもので、健全なセックスライフは自己価値を高めて自尊心を生むことに直結する。さらに慢性疾患や障害のある人にとって、自己価値を保つことは治療にも役立ち、そして、人としての尊厳が保たれる重要なポイントとなる。それなのにここに踏み込むメディカルケアは世界でもまだ一般的ではない。

 この背景にあるものを考えたとき、誰に命じられたわけではなく、なんとなく勝手に形成されてしまったタブーを考えずにはいられない。それは「セックスのことなんて話してはいけない」という性的なものに対するタブー意識と、「病気があるのにセックスを楽しもうなんて」という病気や障害を話題にしづらいタブー意識が入り混じったもの。それが次第に大きな社会認識となり、その結果、誰かが幸せを追求する権利すら日陰に追いこんでしまったのではないだろうか。

 カーステンは以前、#ChronicSexについてこう説明している。

#ChronicSexはセックスだけのことに限らず、慢性疾患や障害のある人が病気の分野を飛び越えて、誰も答えてくれなかった問題を話し合う場よ

(引用元:Broadly

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 これを他人事にとらえるかどうかは人それぞれだが、成人したアメリカ人の2人に1人は何らかの慢性的疾患を1つは抱えているという現実と並べるとどうだろう。あるいは、2人に1人がガンを発症するという日本の厚労省のデータを真実ととらえるとしたら、どうだろうか。

 カーステンが勇気を持って起こした行動は、多様性を広げるとともに、疑問に向き合うことの大切さと、それによって多くの人と助け合える喜びを具現化したものだ。「自分が知りたいから」と起こした行動が誰かを救い出し、その人がまた別の誰かを救う。この利他の行動が広まるほどに、経済よりも人に寄りそう社会が実現するのではないか。

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Chronic Sex

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Photo by @kirbir

All photos by @chronic_self_love unless otherwise stated.
Text by Madoka Yanagisawa
ーBe inspired!

 

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