52杯目:「レイプされればいいのに」。女性キャスターたちがネット上で浴び続けている「暴言」に絶句する男たち。#morethanmean|「丼」じゃなくて「#」で読み解く、現代社会


Cyberbully(サイバーブリー):ネット上で心ない言葉を通して行われるいじめのこと、ネットいじめ。

 

限られた人数でのやり取りや、著名人に向けて公に書き込まれたコメントなど、タイプや状況はさまざまだが、おそらくほとんどのネットユーザーが何かしらのネットいじめを目にしたことがあるはずだ。文字だけの言葉は、ときに無感情。また、受けとる側の気持ちは伝わりにくく、罪の大きさを測るのも難しい。

Photo by 撮影者

Photo by rawpixel.com

 その状況を多くの人たちに知ってもらおうと、シカゴを拠点としたポッドキャストメディア「Just Not Sports」が、社会実験的な動画を制作した。この活動は#MoreThanMean(いじめの度を超えた)と名付けられている。参加したのは、アメリカの放送メディアで活躍するスポーツレポーターのサラ・スペイン、そしてジュリー・ディカロ

 ふたりともスポーツを愛し、ジャーナリズムを学び、テレビやラジオ、スポーツ誌などで的確な分析を交えながらスポーツの魅力を発信する女性だ。彼女たちの仕事は主にツイッターなどのSNSによって拡散されるが、同時にそこは彼女たちに向けた辛辣なネットいじめの場にもなってしまった。

※動画が見られない方はこちら

 この動画は、サラとジュリーが実際にツイッター上で受けた言葉を、その内容を知らない男性たちに読み上げてもらうもの。スタート時には明るい表情で挨拶をしている彼らだが、スタート早々、表情がくもり、言葉につまり始め、ネットいじめのひどさを感じ取ったことがわかる。

 その表情を見ていると、自分が書いたわけでもないのに読み上げる立場になった参加男性たちを気の毒にさえ感じられるだろう。本人を目の前にして、だれが喜んで非道な言葉を伝えられるだろうか。しかし暴言ツイートは容赦なく続く。

アイスホッケーのスティックで殴られてしまえ、彼氏から暴力を受けろ 、レイプされるがいい

 140字という枠に、人間の非道さが詰められている。



もしこの動画を見たことがないなら見て。最近見てないなら、もう一度見てみて。 #MoreThanMean

 

 動画を見ていると、男性がツイートを読み上げている途中で、度々放送禁止用語を隠すための音を聴くことになる。消されているのは単純なスラングやサブカルチャーで許されるような“わるい”言葉とは一線を画す、下品で俗悪、攻撃的な言葉。

 これらは立場や状況によっては職を追われかねない絶対的な禁止用語だが、読み上げるツイートは放送禁止用語のオンパレードだ。サラもジュリーも、さらにはスポーツレポーターをしている女性たちは日常的に、公然とこれらの言葉を浴びている。

 参加した男性たちはみんなつらそうに、謝りながら読み上げる。「君のことを見られないよ」と悲しげに言った男性もいた。彼らの表情だけで、どれほどのハラスメントかがわかるだろう。

 このように「女性が実際に受けた誹謗を、男性が読み上げている」のが本動画の特徴。その背景にあるのは、女性のほうが圧倒的に辛辣で卑劣な言葉を投げつけられることが多い「女性蔑視」の構造や、女性を「物」のように見る社会の視点なのだ。



#MoreThanMeanの動画に出演した男性が、母親にメールで書いたこと(暴言を吐いてしまったこと)を謝ろうと言っていた。彼は実際にそうした。母親は「あなたを誇りに思っている」と返したという。嬉しいね。

 

 ネットいじめに対して「SNS上でブロックすればいい」という意見もある。または「気にすることはない」、「SNSをやめればすむ」というアドバイスも少なくない。もちろん暴言を投げてきたアカウントはブロックやミュートなどの対策をするほうがいいだろう。しかしブロックでは、いじめ自体を止められるわけではなく、根本的な解決にはならないのだ。

 また、サラ自身も「ツイッターは世界で最大のスポーツバーだ」と表現するほどスポーツファンや情報であふれているツイッターを、プロのスポーツレポーターである彼女たちに使うなということは、まったくもって現実的ではない。(参照元:The guardian, ESPNW


 

 動画の公開後、#MoreThanMeanキャンペーンは多くの賛同と評価を受けた。とりわけ”放送界のピューリッツァー賞”とも呼ばれるアメリカ放送メディア界最大の栄誉賞「ピーボディ賞」を受賞したのは大きな意味がある。スポーツ界とメディア界という良くも悪くも巨大な業界で、確実なソーシャルインパクトを打ち出したのだ。

 もちろん動画が広まるだけでは、世界からネットいじめはなくならない。しかし、この動画を見た人なら、いかに悲惨なネットいじめが日常的に起きているのか、それがどれだけ受けた本人を傷つけているかに気づき、二度と同様な書き込みをしないようになるのではないかと、少なくとも筆者は思いたい。

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Just Not Sports

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Photo by Peabody Awards

http://justnotsports.com/

Text by Madoka Yanagisawa
ーBe inspired!

 

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