「わたしたちは道具じゃない!」広告業界が生み出した“女性のステレオタイプ”を変えるために立ち上がった一人の女性 #womennotobjects|「丼」じゃなくて「#」で読み解く、現代社会 #031

Text: Chisano Nezu

Cover photography: The Gender Ads Project

2017.5.31

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先日5月27日(土)に、世界最大級のデジタルコンテンツカンパニーGetty Images(ゲッティイメージズ)が、東京で活躍する様々な女性を切り取ったフォトコンテスト“TOKYO WOMAN”を開催した。今まで“広告で描かれてきた女性”ではなく、新たな美しい女性像を切り取った写真のコンペティションだ。特別審査員にはイラストレーターや作家、俳優として活躍しフォトグラファーでもあるリリー・フランキーを迎え、約1,500を超える応募作品から優秀作品が選出された。

“広告で描かれてきた女性”。そう聞いてあなたは、一体どんな女性を思い浮かべるだろうか?

▶︎ハッシュタグ・アクティビズムについてはこちら

Photo by TOKYO WOMAN ロモグラフィー賞
TOKYO WOMAN ロモグラフィー賞
Photography: Keisuke Mitsumoto

広告が作り出した「女性のスタンダード」

「目がパッチリで、彫りが深く顔が小さい」
「腰の位置が高く、脚は細く長い」
「くびれがあって、胸とお尻は大きい」
「ブロンドヘアーでサラサラストレートヘア」

上記に挙げたような特徴を満たしている、いわゆる“美しい”と呼ばれる女性を広告でよく目にするのではないか?そんな広告を見て「わたしもあんなふうになりたい!」と羨む女性も少なくないだろう。

しかし広告の影響力は非常に強く、「広告のモデルみたいになりたい!」と願う一心から、女の子たちは拒食症などの摂食障害を引き起こし、また自分のルックスにコンプレックスを持ちストレスを感じていると言われている。アメリカでは10歳の女の子の81%が“太ること”を恐れ、日本では6歳の女の子の3人に1人は自分の体形にコンプレックスを抱えている。

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Photography: The Gender Ads Project

また、男性誌に載っている78%がセックスや女性に対するや暴力に関連した広告。これによって男性は「女性はサディスティックな男性が好き」「女性は何をしても嫌がらない」「女性は男性に従事するものだ」といった攻撃的・支配的な男女の関係性がノーマルだと認識し、レイプなどの性犯罪を犯しやすくなる可能性があると言われている。レイプ、またはセックスを強要された女性被害者数は世界で1億2千万人、おおよそ10人に1人が被害を受けている。(参照元:umicef USA)

つまり、知らず知らずのうちに「女性は細く、顔が整っていなければならない」、「女性はか弱い生き物だ」といった“女性像”が老若男女問わず私たちの意識に根付き、そのイメージにとらわれた女性が身体的、精神的にダメージを受けているのだ。

広告業界にミラクルを起こすハッシュタグアクティビズム#womennotobjects

そんな広告によって作り上げられた「女性に対するのステレオタイプ」を刷新するために、ハッシュタグアクティビズム#womennotobjects(ウーマンノットオブジェクツ)」が世界中で始まっている。女性がセールスのための道具ように扱われていることに対する異議を訴えるムーブメントだ。

#womennotobjectsは、広告が作り上げた女性のルックス・ふるまいが多くの女性に精神的・身体的、そして社会的に害を与えている事実を発信している。

※動画が見られない方はこちら

これは2016年1月11日、広告会社Bardger and winters(バッジャーアンドウィンターズ)を立ち上げたMadonna Badger(マドンナ・バッジャー)は匿名でYoutubeにこの動画をアップロードしたことから始まった。動画内では女性たちが皮肉な口調でメディアの現状を批判していて、リアルな憤りが感じられる。

サイト上では、実際に広告に対する叫びが公開されいる。多くの女性が広告の生み出した現実にはありえないステレオタイプによって苦しみ、また子供たちは街で目にする裸の女性などの過激な広告に対して、「不愉快だ」「気持ちが悪い」と困惑した様子が動画から見てとれる。

このムーブメントは大きな反響を得ており、動画は約170か国で再生され、#womennotobjectsのハッシュタグは140万人以上に広まった。

過去にマドンナはCalvin Klein(カルバンクライン)の広告を手掛けるほどキャリアを積んでいたが、2011年クリスマスイブの朝、火災で3人の娘と両親を失ったことで、打ちのめされ働く気力がなくなり広告業界から退けていた。それから5年後、業界に戻ってきた彼女は、広告の誤った女性の描写を正すため#womennotobjectsの活動を始めたのだった。(参照元:CNN)彼女はカンヌでのスピーチの最後にこのように語りかけ、動画上映後は聴衆全員が立ち上がり拍手が送られた。

私たちがこうして存在しているのは奇跡です… 私たちが一丸となって力を合わせた時、変革は起こります。一緒に立ち上がれば、女性を道具のように扱う社会は止められるはずです。(引用元:Ad age

“女性の美しさ”に多様性を。

広告業界の取り組みをもう一つ紹介したい。

“beautifulwomen”(美しい女性)と画像検索すると、“顔立ちの良くブルーの目をしたロングヘアー”の女性の写真ばかり見つかる。はたしてヒットした写真の女性だけが“美しい女性”なのだろうか。

※動画が見られない方はこちら

広告代理店Mindshare(マインドシェア)の社員の1人はプロジェクトで使う女性のイメージ写真をネットで探していた。そのとき写真のストックサイトには、スーパーモデルにのような女性しか見当たらず、世界中で生活しているあらゆる女性の姿が映し出されていない現状に違和感を覚えた。

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Photography: Atlie Thor

そしてMindshare(マインドシェア)はDove(ダブ)とタッグを組み、女性自動車整備士や女性ラグビー選手といった社会で力強く生きていく女性の写真をネット上に1000枚以上アップロードした。後にこの活動はImage_Hack(イメージハック)と呼ばれ、広告上の女性に対する“美しさの定義”に多様性を加えた。(参照元:GOOD

広告が与えるポジティブなパワー

ハッシュタグアクティビズム#womennotobjectsやImage_Hackのムーブメントは広告を作る側が先駆者となり、広告が作り上げた女性に対するルックス・ふるまいの固定観念に縛られず、ありのままで生きる美しさを私たちに教えてくれる。

広告業界だけでなく、音楽業界からも女性に対する固定観念を変えるためのキャンペーンがブラジルで実施された。

※動画が見られない方はこちら

音楽認識アプリShazam(シャザム)が女性に対する暴力・レイプに関する歌詞を感知すると、その曲を聞く代わりに、関連した女性被害者の実際の体験が画面に表示されるSongs of Violence(ソングスオブバイオレンス)だ。期間中は100万人以上に届き、暴力・レイプを連想させる音楽はたった6%しかダウンロードされなかったのだ。(参照元:Fast Company

女性に対する固定観念はまだまだ根強い問題であるが、広告業界が少しずつ変わろうとしているのも事実。身近にある広告だからこそ、世界中にこのようなムーブメントを広げる最強のツールであり、一人ひとりが“女性像”について考えるきっかけになるのではないだろうか。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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