#005 「推定総額5億3千万円」を動かした若者集団。彼らが“環境のために銀行を替えること”を人々に訴える理由|「世界は気候変動で繋がっている」。若き環境アクティビストのリアルな声。by 350.org


「環境活動=まじめ=つまらない」。そんなイメージを吹き飛ばす環境NGOが日本に存在する。それが「国際環境NGO 350.org Japan 」だ。

年齢、職業、性別、人種もとにかく多様。下は6歳の子どもから上は70代のおばあちゃんまで。シングルマザーや障がいをもった人、外国人もメンバーにいる。そこで主体的に動いているのは主にミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた世代)の若者たち。

少しでも多くの人に、楽しみながら環境活動ができることを知ってもらいたい!そこで、Be inspired!では、以前本誌でも紹介した350.org Japanのフィールド・オーガナイザー イアンが活動に関わる人をインタビューする連載をお届けする。その名も『「世界は気候変動で繋がっている」。若き環境アクティビストのリアルな声。by 350.org』。

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350のフィールド・オーガナイザー イアン

 連載5回目の今回は、350のボランティアメンバーである、さおりと陸にインタビュー。

 2018年3月にみずほ銀行が環境に悪影響を及ぼす石炭事業に世界で一番お金を費やしていることがわかり、世界中から批判の嵐が起きている。

 そんな不名誉なNo.1を獲ってしまった日本に住む私たち一人ひとりが今こそ考えるべきこと。日常の生活のなかの小さな選択で地球に大きなインパクトをうむ「ダイベストメント」について、「気持ちがいい選択をしたい」「誰も傷つけない選択をしたい」と話す2人に改めてうかがった。

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陸、イアン、さおり

 3.11を機に環境や消費について考えるようになり、ファッション業界から転身してライターになったさおりは、SDGs*1やダイベストメントを広める活動をしている。東京生まれで、最近はゼロウェイストや東京の地産地消に興味があり、都市農園やコンポスト作りにも参加している。

 中央大学4年生の陸は、神奈川生まれ。大学の授業でダイベストメントを知り、その後オーストラリアのシドニーに留学。実際に市民が銀行に石炭事業から手を引くように働きかけている光景を目撃し、同様の活動に参加したいと日本に帰国後、350ボランティアを始める。

▶︎350 フィールド・オーガナイザー イアンのインタビュー記事
日本の銀行が環境破壊に加担する事実」を知らない日本人へ。25歳のアクティビストが提案する解決策とは』

(*1)SDGsとはSustainable Development Goalsの略。2015年に国連で採択された、持続可能な社会のための世界共通目標のこと。日本でも広まりつつある。

“小さなお金の流れ”から社会を変える。誰でもできる社会変革「ダイベストメント」

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イアン:今までこの連載ではさまざまなことを取り扱ってきたけど、今回は「原点回帰」という意味を込めて、改めて「ダイベストメント」に関する話をしたいと思います。今回初めて知る読者もいると思うので、まずダイベストメントって何?というところから教えてください!

陸:ダイベストメントは「投資=インベスト」の逆で「投資を撤退する」という意味の言葉。金融機関などの投資機関が、気候変動を悪化させる化石燃料や、エネルギー源として問題のある原発に投資や融資をしているんだけど、そこからお金を抜くという行為がダイベストメント。そうやって「お金の流れ」を変えることで気候変動を防止して、持続可能な未来を目指そうよっていうことを求める運動のことです。

さおり:大きな金融機関が「この日までにこの額のお金を撤退します」というのを宣言するときにも使うし、私たち個人や団体が、環境に悪いお金の使い方をする銀行から、いいことをしている銀行に口座を替える一連の流れを「ダイベストした」っていう風に、動詞として使うこともあるよね。

イアン:気候変動問題に「お金の流れ」の角度から取り組んでるわけっすね。ではダイベストメントの背景や成果についてちょっと教えてくださいな。

陸:もともとは、アメリカのペンシルベニア州にあるスワースモア大学の学生たちが、地元地域で問題になっていた採掘場建設プロジェクトを進める企業に大学が出資していることを知って、その企業からお金を抜いてください!と声を上げたことから始まったムーブメント。今では世界中で850団体がダイベストメントを宣言していて、それらの団体が運用している資産の総額は、およそ540兆円だと試算されているね。

イアン:最近だとニューヨーク州なんかがダイベストメントを表明してビッグニュースになってたよね。で、350はどういう角度からダイベストメントに取り組んでいるんですか?

さおり:今は金融機関の中でも、銀行にフォーカスしたキャンペーンをやってる。銀行さんに対して化石燃料や原発に関わる事業からダイベストしてもらって、再エネに投資をしてもらうようお願いしているよ。それを実現するために署名を集めたり、化石燃料にも原発にもお金を出していない「地球にやさしい銀行」を選ぶことを市民のみなさんに提案したりしてる。

最近だと、銀行さんと面談して、もっと気候変動に配慮したお金の使い方をしてくださいっていうことを直接伝えてもいるよね。

陸 :昨年末から「レッツ、ダイベスト!」というキャンペーンを展開してて、個人と団体に「地球にやさしい銀行」を選ぶことも提案している。これだけの人が動いているんだ!ってわかるように、ダイベストした人の数と、実際に動いた想定金額をホームページに掲載してる。人々が気候変動防止のためにダイベストしていることを可視化することが、銀行に何よりも強いメッセージになる。この活動を広めるために、みんなでおもしろムービーを撮ったり、映画の上映会を行ったり、ごはんを囲んで学ぶイベントを開催したりしてる。あくまで活動は楽しく、というテーマで。

※動画が見られない方はこちら

イアン:そんな「レッツ、ダイベスト!」の成果を教えてください!

さおり:この半年間で141人、10団体(エシカル協会さん、まちだ自然エネルギー協議会さんなど)がダイベストメントを宣言してくださいました!動いた金額は、推定総額5億3千万円。その結果を記者会見で発表したし、キャンペーンとして目立ったおかげで、NHKの「渋5時」っていう番組にも取り上げられた。今回のキャンペーンを通して、確実に日本にもダイベストメントが広まってきてる手応えを感じたな。

イアン:初の全国放送嬉しかったよね!事務所でみんなでテレビにかぶりついたの覚えてる(笑)レッツ、ダイベスト!キャンペーンをしたことで、これまで相手にしてくれなかった銀行が初めて面談してくれたし。成果はデカかった。

見せたいのは、グレーな世界?グリーンな世界?未来世代からいろんなものを借りて生きている僕ら

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イアン:ここでちょいと脱線して2人について聞きたいんですが、2人が活動するモチベーションは何ですか?

さおり:一つは、未来の地球は、私たち次第で暗いSF映画に出てくるような緑のないグレーな世界にもなり得るし、自然と調和して緑がたくさんある世界にもなり得る。私は、後者の世界を思い描きたいし、次世代にそれを残したいなって思ってる。

もう一つは、途上国の人たちのこと。気候変動によって例えば海面上昇が起きたときに、一番その被害を受けるのは、一番温暖化に加担していない途上国の人たち。温暖化の影響に脆弱な彼らは、生活を追われてしまう。だから気候変動は、命の問題でもある。日本はというと、温暖化に大きく加担しているのに、そこまでは影響を受けない。このままじゃいけないと思って、この活動しているよ。

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陸:大学の持続的開発の授業のなかで、このまま成長を続けていくと地球はもたない、資源が足りないから地球が四つ分必要になるっていうのを知って衝撃を受けた。この話は当然地球規模の環境問題にも繋がっていて、「やばいな」って素直に思ったんだ。

それでもって、小さい頃から気候変動や地球温暖化はいつもニュースで流れていたから、自分たちが解決に導かなきゃって気持ちはある。でもそれと同時にこの問題は、今までの世代の積み重ねによってできたもので、正直なんで自分たちが解決しなければならないの?って思うこともある。自分たちも解決に向けてお金や時間を費やさなければいけない、搾取されている世代だって感じる。だから自分は、自分の子どもや孫に、「お父さんのせい、おじいちゃんのせいだ!」って指をさされたくないんだよね。

イアン:このままいくと、途上国の人々や未来の世代の暮らしの豊かさ、選択肢の幅、そして彼らの幸福を奪うことに繋がっちゃう。それをどうにかしたいっていう強い思いを感じました!

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イアン:それでは話を戻します。現在の活動の焦点を教えてください!

さおり:今350は「石炭と銀行」に焦点を置いて活動してる。

イアン:ほう。「石炭」について普段考えることもないと思うので、なんで「石炭」にフォーカスするのか教えてください。

陸:日本は石炭の使用を国内でも国外でも進めているけど、いくら高効率な火力発電技術でも、石炭は天然ガスや石油より二酸化炭素の排出が多い。つまり石炭は、もっとも気候変動を悪化させる燃料だってこと。さらには、採掘するときに環境破壊を引き起こしたり、燃やすことで大気汚染を引き起こすし。

さおり:2015年にパリ協定っていうのが世界で合意されて、それによって世界195ヶ国が気候変動を1.5度から2度未満に防止する、という約束を交わしたんだけど、その後に国連環境計画UNEP*2が調査報告書を出して。そのなかで1.5度から2度未満の目標を達成するには、新しい石炭火力発電所の建設は今後一切許されない、さらには既存の火力発電所も段階的に廃止していく必要がある、っていう勧告を出したんだよね。

陸:そんななか日本は、自国に石炭火力発電所を40基以上建設しようとしていて、これは先進国の中ではもっとも多い数。

(*2)国連環境計画UNEPとは、世界の気候変動サミットを統括している一番大きな環境の枠組み

イアン:つまり気候変動的には石炭は絶対アウト。だけど増やそうとしていると。じゃあ石炭と銀行の繋がりについては?

陸:最近発表された海外のNGOの調べで、みずほ銀行が世界で1番、三菱東京UFJ銀行が世界で2番、三井住友銀行が世界で5番目に石炭に融資してることがわかって。つまり日本のメガバンクは、世界トップクラスの石炭推進派になっていて、気候変動防止に貢献するどころか、悪化させる側に立ってしまってる。

さおり:レインフォレストアクションネットワークっていう団体が、世界の主要銀行を対象に、森林伐採や化石燃料に対してどういう方針を持っているかというのを元に銀行を評価するレポートを発表したんだけど、その中で三菱東京UFJ銀行が最低ランクのF、みずほ銀行と三井住友銀行がDマイナスという評価を受けてしまった。なぜそんな評価なのかというと、ほとんど方針を持っていないから。

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Urgewald, Banktrack, 350.org

陸:同じ調査の対象になっているオランダのINGという銀行は、もう石炭へは出資しないことを表明していて、Bの評価を受けてる。世界がそういう流れのなかで、日本のメガバンクの後進的な姿勢が際立ってきてるのが現状だね。

さおり:今までずっと産業単位の話だったけど、プロジェクト単位での融資も日本の銀行は行ってて。例えば、今日本は東南アジアに石炭火力発電所をたくさん建設しようとしていて、そのほとんどのプロジェクトに日本のメガバンクが関わってる。こういったプロジェクトのなかには、人権侵害が報告されている例や、地域住民の暮らしへの被害が報告されているものもあるんだ。

陸:こういう風にあらゆる問題があるから、今はメガバンクに石炭への新たな融資をやめてください!って声を届けるための署名を集めてる。

誰かを傷つけるお金の使い方じゃなく、誰かを支える使い方に。「ダイベストメント」で自分と世界の繋がりを取り戻す

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イアン:まさに日本は「時代に逆行」している感じ。気候変動を防止することの重要性がグローバルに認知されているにも関わらず、そこを日本の銀行が無視しているのは残念だし、自分が銀行に預けたお金が環境を壊しているだとか、東南アジアの人を苦しめてるって知ると気持ちよくないよね。自分のお金とこういった問題の間に存在する繋がりについて二人はどう思う?

さおり:自分の知らないところで、自分のお金が人や動物が悲しむことや環境が壊されることに使われているのはイヤだなと思う。こういうことが起きてしまうのって、もちろん国や銀行の責任があるけど、多くの人が関心を持っていないからっていうのもあるよね。

今の時代は核家族も多いうえに、インターネットの発展でいろんなものが分断されている。自分と世界の繋がりが見えづらくなってしまっているから、近くの人が怪我をするとみんな心配するけど、海外の人が悲しんでいることにはそこまで意識や実感を持って行動する人がまだ少ない気がするな。

陸:日本は歴史的にも地理的にも、ヨーロッパの国々と比べると、比較的に孤立してここまで成長してきたように見えがちな気がする。でも実際、現代の日本で生活するのに外国の人、もの、情報は不可欠だし、その流れに対して日本人は鈍感な印象を受けるよね。これに対して大陸国であることや植民地の歴史があってかヨーロッパの国々は他者に対しての意識を強めているんじゃないかって思う。だから温暖化も日本では「自分と関わりがない」って心のどこかで感じている人も少なくないと思うし、銀行にお金を預けることが知らず知らずのうちに他の地域の誰かを苦しめているって認知度も低い。市民社会の力が日本はとてつもなく弱いから、気づいていても声を上げ難い環境にある。

でも、じゃあもう私たちお手上げってなったら民主主義は事実上崩壊でしょ?(笑)そのために350をはじめとしたいろんな団体がツールとしてあって、身近なことから世界規模の問題まで自分ごと化できるようにするための環境があるんじゃないかな。

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さおり:それでいうとダイベストメントって、自分が預金として預けたお金が、環境や社会にどういう影響を与えているかを考えるきっかけになるから、すごくいい活動だと思う。お金を通して社会を俯瞰して見られるというか。ダイベストメントに関わるようになって、一気に意識の範囲が広がったもの。

イアン:うちらがやっている活動は、社会にいいインパクトを与える選択肢があって、せっかくならそっちを選びませんか?と提案しているだけ。そしてその選択を通して、物事を変える力があなたにもあるっていうことを伝えたい。あとはボランティアと一緒にいろいろと実現することを通じて、環境活動に参加するハードルを下げたいな。

自分らしく、でいい。それぞれの環境意識を表現できる場所

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イアン:そしたら今後の活動について、まずは陸から紹介お願いします。

陸:今年の6月末にある銀行の株主総会に向けて、メガバンク3社に石炭への新しい融資の中止を求める1万人の署名を集めます!署名をたくさん集めることで、この問題がメディアにも取り上げられて、銀行の気候変動に対する姿勢を変えていければと思ってる。

イアン:気候変動は一つの国ではなく、地球全体の問題であるからこそ国際署名なんだね。

さおり:署名を集めるために音楽イベントやビーガンポットラック(ビーガン料理の持ち寄りパーティー)を開く予定なので、そこで楽しく署名を集めるつもり。あとはもちろんネットでも展開しているから、そこでいつでも署名できるよ。

陸:あと来月5月10 &11日に350の共同創設者で、世界的に有名な環境活動家のビル・マッキベンさんの来日イベントもやる予定。初来日で次いつ来るかわからないんで、これはみんなに来て欲しい。自分も参加します!

さおり:いろんな人に350の活動に関わってもらいたいな。いろんな業種の人や年齢の人がいて、学び合う文化もあるから楽しいよ。気軽に参加できて、大丈夫だよって暖かく迎えてくれるし。「そんなことも知らないの?」って感じがないのがありがたいな。

イアン:イシューファーストではなくって、まず人を大事にしているからね。毎日気候変動の話をしていても、うー!って窮屈になっちゃうし、同じ時間を共有して楽しい人と一緒に一歩ずつ進んでいく感じを大事にしたい。

さおり:それにビーガン率も高くて、ちゃんと環境問題を自分ごとにして行動している人が多いよね。あとは、ボランティアの人たちの持っている環境に対する意識を、その人それぞれに表現させてくれるフィールドを持ってる。そういう場所があるのが、本当に好きなところ。

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イアン:それでは、最後に今後に向けて一言ください!!

さおり:ダイベストメントは一つのきっかけ。誰かと喧嘩をしたいわけでも、誰かを責めたいわけでもない。いろんなセクターの人と楽しく環境活動をやりたいし、みんなで一緒に平和を実現していきたいな。

陸:気になったらプラスチックでもビーガンでも、なんでもいいからまずは調べてみてほしいな。NGOの職員にならないといけないじゃなくて、もっと身近なところ、「ストローいらないです」って言ってみるとか、小さなところに落とし込む。全員が毎日一つでもゴミを拾えば、世界はすごくきれいになるって言われて「あぁ、たしかに」ってなる感覚。 

そういうのって、ハードル高くないところからはじめていくと、どんどん面白くなっていく。一人が小さいことをやるだけでも、日本の1億2653万人がやれば大きな力になるって信じてほしい。自分も信じているからダイベストメントや、ビーガンや、プラスチックを使わないように生活をしてる。信じることが一番大事かなって思います。

「環境問題」と聞くと、なんだかスケールが大きくて自分一人の力ではどうしようもないことのように思えるかもしれない。でも実際は「日常生活のなかの小さな選択」が大きなインパクトを生むことができる。

その可能性を信じて活動しているのが、350のメンバーだ。同時に350は彼らにとって自分らしくいられる居場所でもある。これを読んでいるアナタも、350に参加して「自分らしく地球に優しい生き方」を見つけてみてはどうだろうか?

▶︎これまでの350の連載はこちら

#004 幸せって友達よりも稼ぐことだっけ?“沈みゆく島”ツバルに行って「幸せの方程式」を知った日本の若者たち

#003『「何を食べものと決めるかは社会ではなく自分」。ビーガンに風当たりの強い日本で、私が肉を食べない理由』

#002『「 “遊びながらやる感覚” で環境活動にも参加したい」。映像で環境NGOをポップにするクリエーター』

#001『「環境活動に正解はない」。若きアクティビスト3人が語る、真面目なだけじゃない“地球の救い方”』

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「“晒すこと”がものづくりには必要」。 ある男が訴える、“消費者に建前を言わない”という付加価値の存在

「政府の対応を待っていたら、みんな死んじゃう」。“ときに危険を伴う呼吸の二面性”を芸術で発信する女性

All photos by Noemi Minami
Text by 350.org Japan
Location provided by BROWN RICE by NEALS’YARD REMEDIES
ーBe inspired!

 

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