#003「妊婦マークがあるなら生理痛マークもあればいいのに」。26歳の私が電車で感じた「隠れ弱者」の気持ち。| 橋本 紅子の「常識」と「パンク」の狭間で、自由を生み出すヒント。


こんにちは。紅子です。今回は、最近自分が体験したことについて書きます。たぶん、同じようなこと思った人も多いんじゃないかな。多くの人が日常的に使う公共交通機関についてです。

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なるべく座らない、隅っこの席の存在

 電車やバスに乗り込むと、必ずそこには椅子や吊り革の色の異なる一角が存在する。

優先席付近では携帯電話の電源を切り、お年寄りやお体の不自由な方、妊娠中の方、乳幼児をお連れの方に席をお譲りください

 目で見て分かるマークのステッカーに加え、電車なら20分も乗っていれば2〜3回は耳にするアナウンス。どれも毎日当たり前にそこにある。私は特段怪我も病気もしていないし、乳幼児を連れているわけでも妊娠しているわけでもないので、眠さに耐えかねる朝の通勤時を除けば極力そこには座らない。スマホもいじりたいので尚更だ。そうやって「なるべく避けたい、自分とは距離のある場所」となっているのが優先席だった。

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見た目では分からない体調不良

 そんなわけで優先席から距離のある場所へ行き、運良く座れると私はすぐにスマホに目をやり下を向く。その間に、自分の前に立っていた誰かが降りていき、また誰かが乗ってくる。視界に入る下半身のシルエットや靴なんかで性別くらいは認識できるが、その人の顔や表情は見えないままだし、わざわざ見もしない。それが普段の自分だった。しかし、それは時にすごく残酷な不注意になるということに気がついた。

 私は生理痛が重い。寝込んで外出できないほどではないが、長時間立っていると冷や汗がぼたぼた垂れてきて、 痛みと酸欠で吐きそうになる。同じような人は周りにも多く、その日ばかりは仕事を休むか、どうにかこうにか耐えながら過ごしている人がほとんどだ。

 しかし、生理痛は見た目で分からない。今にもうずくまってしまうほど辛かった時、車内は満員で、つり革に全体重を委ねながら「マタニティマークがあるなら“生理痛マーク”もあればいいのに」と思ったほどだ。でも、女性の誰もが経験することにも関わらずまだまだ生理に対する認識は「恥ずかしい」とか「男性の前ではタブーな話題」で、オープンに話すどころか生理中・生理痛であることすら隠しがちである。そんな空気の中「生理痛マーク」なるものが作られたとしても、みんなが進んで着けられるほど普及するには時間がかかるだろう。

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生理痛マークがあるとしたらこんな感じ?
Illusted by Beniko Hashimoto

嫌がらせに怯えて隠したマタニティマーク

 似たような体験談として、悪阻(つわり)真っ最中の友人が四六時中吐き気やめまいと闘いながら移動しなければならなかった時、「マタニティマークをつけてると嫌がらせに遭うこともあるから気をつけなさいね」と母から言われたことを思い出し、一番辛い時期に怖くてマタニティマークを着けることが出来なかったそうだ。お腹も大きくなる前なので気付いてもらえず、移動が本当に大変だったと言っていた。

 だいたい何がどうして妊婦への嫌がらせなんてものが頻発するのかと思って調べてみると、「幸せアピールのようで配慮に欠けている」だとか「妊婦だから優先されて当たり前だと勘違いしている」だとか、配慮に欠けて勘違いしているのは一体どちらなのかと言いたくなるような意見が散見された。不妊に悩む人の嫉妬のようなものもあるそうなので難しいが、自分が誰から生まれたのかを考えてみてほしい。

 しかし、マタニティマークを着けている時は着けている時で、マークの存在自体を気付いてもらえないことも多いそうだ。スマホに夢中になっていた自分を始め、人は他人をそこまでよく見ていないことが多い。

 妊婦の場合、出産が近付くにつれてお腹も大きくなるのでまだ目に付くかも知れないが、これが持病や見えない場所の怪我の場合はどうだろうか。

 高齢者でもなく、杖をついているわけでもない若者が優先席に座っていて、お年寄りが立っているのに席を譲らなかったら、なんとなく気まずい空気が流れそうだから避けてしまうという人は意外と多いのではないだろうか。

 酷い貧血になって優先席に座っていたら、知らないおじいさんに怒られた友人もいる。もちろんそんなことを言う人ばかりではないが、少ないわけでもない。そういうわけで、優先席というのは必ずしも必要としている人が誰でも気軽に使える場所でもないようだ。

「マイノリティのための優先席」でも「マジョリティのための普通席」でもない

 だからこそ、それ以外の場所に座る私たちほど意識しておいた方が良い。誰もが例外なく、体調を崩したり、病気や怪我をするということを。そしてその人たちは一見わかりづらいからこそ、いつでもどこにでも居る可能性があるということを。

 確かな解決策は無いが、ほんの少しそれを頭の片隅で意識しているだけで、見落としがちなものに気がつける機会が増えるのではないだろうか。

おまけ

 最後に知っておきたい福祉マークを紹介したい。

1.マタニティマーク

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Photo by 厚生労働省

 妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするもの。その他 さらに、交通機関、職場、飲食店、その他の公共機関等が、その取組や呼びかけ文を付してポスターなどとして掲示し、妊産婦にやさしい環境づくりを推進するもの。

2.ヘルプマーク

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Photo by 東京都福祉保健局

 義足や人工関節を使用している人、内部障害や難病の人、または妊娠初期の人など、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている人々が、周囲に配慮を必要としていることを知らせることができるマーク。

3.ハート・プラスマーク

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Photo by 特定非営利活動法人ハート・プラスの会

 「身体内部に障害がある人」を表している。身体内部(心臓、呼吸機能、じん臓、膀胱・直腸、小腸、肝臓、免疫機能)に障害がある人は外見からは分かりにくいため、様々な誤解を受けることがある。電車などの優先席に座りたい、近辺での携帯電話使用を控えてほしい、障害者用駐車スペースに停めたい、といったことを希望していることがある。

4.耳マーク

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Photo by 一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会

 聞こえが不自由なことを表すと同時に、聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマークでもある。

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BENIKO HASHIMOTO(橋本 紅子)

神奈川県出身。音楽大学卒業後、アパレル販売をしながらシンガーソングライターとして活動を続ける。2015年5月に結成されたSEALDs(=自由と民主主義のための学生緊急行動)に参加しSNSやデモ活動を通して同世代に社会問題について問い掛けるようになる。

Instagram: https://www.instagram.com/benistagrammm/

 
Text by Beniko Hashimoto
ーBe inspired!

 

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