#001 性別や国籍を超え、日本の「マジョリティ社会」にあらゆる世界の「マイノリティ爆弾」を投下する挑戦者 | カミーユ綾香の「マイノリティ爆弾」


「仏に逢うたら仏を殺せ」。臨済宗の開祖、臨済義玄(りんざいぎげん)の言葉とされています。禅宗で長らく引き継がれてきた教えです。

真意はそれぞれが考えるものとして、“仏に逢ったら仏を殺してしまえ”とアドバイスするのは、革命的です。

彼のこの名言はロックであり、矛盾をゆうに超えて、善悪では測れない存在感です。「マイノリティ複合体」として、自分の存在を社会に投げるとき、時折思い出す言葉です。

多国籍地域出身のパンセクシュアルとして過ごした、青春時代。

 今回の記事からBe inspired!で連載を始めるカミーユ綾香です。カミーユと呼ばれることを好みます。
 
 出身はヤクザと生活保護者の存在感が濃厚で、スラム街という言葉がぴったりの福岡県・北九州市です。実家近くに大きな朝鮮学校があり、放課後はチョゴリの制服を着た友人と合流していました。元残留孤児の中国人も沢山住んでおり、既に多国籍の感覚は養われていました。

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 長じて初恋の時期なると、セクシュアリティの感覚も違ってきます。

 人を好きになるときには、シンプルに好きか嫌いかしかなく、相手が男性でも女性でも関係ありません。これは今でも変わらない感覚で、恋人の出生時の性別が男か女かというのは、血液型がA型かB型かくらいの差異でしかありません。いわゆる、パンセクシュアル(全性愛)です。

 多国籍地域出身のパンセクシュアルとして青春時代を過ごしたのち、医師と結婚します。入籍はせず、事実婚として住民票上でのみ夫婦(婚姻関係⦅仮⦆と記載)となりました。

 数年で別れ、世界を放浪しようと思い立ちました。

難病の闘病中に起業。リスクを選んで私が得たもの。

 ある日、放浪計画を立てているときに倒れ、病を発症しました。診断の結果、重症筋無力症という国指定の難病でした。

 根本的な治療法はなく、症状は重く、平たく言えば寝たきりの状態でした。お風呂に入れず、歯磨きが出来ず、うどんすら食べられません。医師からは、とにかく無理をせず、静養しながらストレスを避けて生活するようにご指示頂きました。

 それで、どうしようと考えた結果、起業することにしました。

 重症筋無力症というのはすぐに死ぬ病気ではありません。となると私は生きねばなりません。労働出来ない身体で生きるためには、経営か投資等の不労所得しかないと考えました。投資に回すような潤沢な資金も無かったので、起業することにしました。

 新規事業をおこすというのは、不安と孤独とストレスの大混沌です。その混沌の中に、難病患者が飛び込んでみたら、面白いことが起こるんじゃないかと思いました。

 「Take the risk or lose the chance(リスクを取るか、チャンスを逃すか)」なのでリスクを取りました。

 結果、面白いことが起こりました。

 寝たきり起業から数年経ましたが、会社運営はおかげさまで順調で、企業向けの多言語学レッスン、海外向けのウェブ制作、各国インフルエンサーの派遣事業などを行っております。

 病気に関しても起業以降、みるみる回復しており、今ではなんの薬も飲んでいません。ここまで回復するのは、全体の「たった3%」ほどだそうです。今はヨガ・ピラティスを週に10時間こなし、羊肉を毎日食べても平気な胃腸です。

使命は、マイノリティの爆弾をマジョリティ社会に投げつけること

 このように生活も落ち着き、文章を書く余裕も出て来ました。

 そうして社会に目をやると、巷ではマイノリティという言葉がもてはやされています。私自身が、セクシュアリティ、難病患者、起業家等のマイノリティ複合体です。

 発病以降は殺されずに生かされているという感覚が強いのですが、ではこの世において、マイノリティ複合体として生かされている自分のすべきことを考えると、おそらくそれは、マイノリティの爆弾をマジョリティ社会に投げつけることだと思うのです。

 私の爆弾が怖いなら避ければいいし、嫌いなら踏みつければいい。投げかけるのは疑問や訴えではなく、爆弾です。返答など期待していません。

 なぜならあらゆるマイノリティの問題は、法律や宗教や倫理ではなく、存在に関わることだからです。マジョリティがどういう反応をしようと、もはや関係ないのです。

 種田山頭火の句に【蜘蛛は網張る。私は私を肯定する。】とあります。

 マジョリティが否定しても、嫌がっても、マイノリティは存在しているのです。存在している以上、蜘蛛が網を張るように、私はマイノリティの存在を肯定するだけなのです。

 「仏に逢うたら仏を殺せ」

 爆弾のような威力を持つこの言葉は、称賛されたり非難されたりを繰り返しながら、数百年の間受け継がれてきました。

 様々なマイノリティ複合体である私自身も、飄々と生きながらえつつ、刺激的なマイノリティ爆弾をマジョリティ社会に落としてみようとするのであります。
 
 「マイノリティ爆弾の連載」、楽しんでもらえますように。

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CAMILLE AYAKA (カミーユ綾香)

北九州市出身。在日韓国人と元残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。警固インターナショナルの代表としてアジア各国を飛び回りつつ、十数言語による語学スクールとインバウンド支援の多言語ウェブサイト制作会社を運営する一方、難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動中。「マイノリティの爆弾」を「マジョリティ社会」に投げつけるために5月から本メディアBe inspired!で連載開始。

website:http://www.kego-international.com/

All photos by Dadacurtiss
Hair styling and Make-up by RIO
Text by Camille Ayaka
ーBe inspired!

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