#012 エグザイルが好きな自分も、哲学が好きな自分も大事。私が「本当の自分を複数持つこと」を勧める理由|カミーユ綾香の「マイノリティ爆弾」


「トリケラトプス拳」なるものにはまっています。

『クラップラー刃牙』(クラップラーバキ 以下、刃牙)というカルト的な人気のある格闘漫画に出てくる技なのですが、これ頑張ったら習得出来るんじゃないかと思って、家で自主トレをしています。

そんなトリケラトプスな日々ですが、実は最近、私の生活スタイルが変わりました。世間の喧噪からちょっと距離を置き、自宅を整理し、野菜を育てたり書を読んだりヨガピラティスをしたりトリケラトプス拳をして過ごしています。今までよりもちょっと晴耕雨読寄りになったのですが、晴耕雨読とはいっても、最新の情報はネットから入るし、時々は都市へ出るし、中国や台湾の同族の元に居候しに行くので、いうなれば、“ネオ晴耕雨読・インターナショナル隠居生活”です。

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 そんなネオ晴耕雨読の日々ですが、先日、瞑想クラスに参加するために都市に出ました。瞑想で得た学びをトリケラトプス拳に生かせないかと考えながら地下鉄に乗っていると、ひとりだけ本を読んでいる青年に出会いました。その車両、殆どの人はスマホをいじっています。割合でいうと、スマホ90%、本5%、トリケラトプス5%でした。私と彼は車両世界のマイノリティなので、一方的に親しみを覚えて座っている彼の前に立って観察していました。見た目はなんというかエグザイルのような雰囲気でしたが、熱心に本を読み進めています。なにを読んでいるのか気になって、ちょっとかがんで表紙を見ていると、なんとそこには、トリケラトプス拳の登場する刃牙漫画のイラストがあったのです!

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 どういうことか説明しましょう。

 実は今、トリケラトプス拳が登場する刃牙のイラストを表紙にした哲学の本があります。その名も『史上最強の哲学入門』です。つまり、このエグザイルの青年は、トリケラトプス拳を鍛錬している私の目の前で、偶然にも刃牙作者イラストの哲学入門を読んでいたのであります。ということで私は、大興奮したのであります。それまで、瞑想後で副交感神経がたっぷりのリラックスモードの私でしたが、エグザイル青年が史上最強の哲学入門読んでいると分かった瞬間から交感神経バリバリでアドレナリンが出まくってしまいました。大興奮です。思い切って、「すみません、私、実はトリケラトプス拳やってるんですけど」と話しかけようと思いました。が、そうこうしているうちに地下鉄は駅に着き、その青年はその駅で降りて行きました。無念!

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 帰宅し、米を研ぎながら、この事件について考えていました。

 まず、史上最強の哲学入門を私が以前から愛読しているのは、読みやすい内容もあることながら、哲学書なのに表紙に格闘技漫画のイラストを持ってくるという、作者の飲茶先生のセンスが好きだからです。そしてそれを読んでいたエグザイル風の青年に惹かれたのも、老若男女が車内でスマホをいじっているなか、哲学書を読んでいる彼の姿勢が好きだからです。

 これはね、いわゆる「意外性がある」というものとはちょっと違います。意外性ではなくて、「多面性があること」が好きなのです。格闘漫画を愛する面もあり、哲学と真摯に向き合う面もあるこの本。エグザイル風ファッションを愛する面もあり、哲学書に没頭する面もある車両の青年。どれが本当でどれが嘘ということではなく、どれも本当でその本当の自分を色々と持つということです。

本当の自分を、わざわざ一つに絞らなくていい

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 先日、女子大生からインタビューを受ける機会がありまして、その子から、「大学生に伝えたいことはなんですか」と質問されました。そして私は、「どれも本当の多面性のある自分を持つこと」と伝えました。

 私の答えを聞き、20歳のその子は非常に驚いていました。彼女を取り巻く世界では、むしろ自分を一つに絞っていくことが推奨されているというのです。でもね、ひとつって、世界はそんなにシンプルじゃないし、人間はもっと複雑であっていいと思うのです。就職に悩む自分もいて、ロックを楽しむ自分もいて、起業に憧れる自分もいて、全て存在して大丈夫なのです。八方美人になるわけではなく、奇をてらって意外性を狙う訳ではなく、本当の自分を複数持つことは可能です。本当に好きだと思うことが複数あるのであれば、わざわざ絞ることをせずに、それらを愛する自分の感情を肯定してあげるといいと思います。そんなことを考えつつ、私は今日もトリケラトプス拳に励むのでありました。

CAMILLE AYAKA (カミーユ 綾香)

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北九州市出身。在日韓国人と元残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。
難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動する一方、ネオ晴耕雨読の生活を実践している。「マイノリティの爆弾」を「マジョリティ社会」に投げつけるために2017年5月から本メディアBe inspired!で連載中。

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All photos and Text by Camille Ayaka
ーBe inspired!

 

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