#013 十数年ぶりに手に取った『エリートヤンキー三郎』に学ぶ、「諦める」という選択肢を持つ生き方|カミーユ綾香の「マイノリティ爆弾」


急な予定変更、楽しめますか。
こんにちは、カミーユです。今日はソウルにいるはずだった私ですが、予定変更して家でエリートヤンキー三郎を読んでいます。昨夜から体調を壊してしまい、今日のソウル行きをキャンセルしました。たっぷり朝寝したあと病院に行き、療養しながら漫画でも読もうと書店に立ち寄り『エリートヤンキー三郎』*1を手に取りました。

(*1)「週刊ヤングジャンプ』に掲載され、単行本化もされた漫画。ヤンキーとして悪名高い二人の兄を持つ主人公の三郎は、二人とは異なり内気でオタクな高校生だったが、彼が自分の気持ちとは裏腹にエリートヤンキーにのし上がっていくストーリー

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十数年ぶりに読んだ『エリートヤンキー三郎』

 レンタルではなく購入するのでどの本にするか慎重に選ぶべきなのですが、病院で処方されたPLというクスリをキメていたせいもありエリートヤンキー三郎を手にしました。実はエリートヤンキー三郎とは十代の頃に出会っています。当時同じスラム街(北九州)出身の友人が梅が枝餅売りのテキ屋と付き合っていたのですが、その子がテキ屋の彼氏の家に行くとエリートヤンキー三郎が陳列されてあり自分も読んでいるのだと教えてくれました。

 タイトルを聞いただけでなんとなく内容が分かると思いますが、それにしてもこのタイトルって奇天烈すぎると感動し、テキ屋に借りて読んだのであります。もし機会があれば読んでみてください。エリートヤンキー三郎。別に読まなくても人生に何の支障もありませんが、読むと人生にちょっとスパイスが足されます。今インスタをみたら、#エリートヤンキー三郎は123件ありました。ちなみに#ジョジョは106,670件です。ぼろ負け!頑張れエリートヤンキー三郎!

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 数週間前から、今日という日はソウルでソルビン食べたりカジノでルーレットやったりしていると想定していました。それなのにまさか自宅で十数年ぶりにエリートヤンキー三郎を読むことになろうとは。玄関脇に置かれた荷造り済みのスーツケースをぼんやり眺めながら、微熱の頭で考えます。予定通りに行かなくなったときの一番良い対処法は何なのだろうかと。今回私はソウルに行けなくてとても悲しかったです。

 直前のキャンセルなので諸々のお金は帰ってこないし、同行者には申し訳ないし。そのまま不貞腐れて寝込むところだったのですが、本屋でうっかりエリートヤンキー三郎と再会してしまったことにより、あまりのくだらなさに失笑したり、スラムの友人やテキ屋の売っていた梅が枝餅を思い出したりしました。もし今回ソウルに行っていたら、恐らく二度とエリートヤンキー三郎を交わらなかったでしょう。そう考えると、キャンセルになった悲しみが少し癒えるような気がするのです。

諦めることは、そんなに悪いことじゃない

 ビジュアライズ(visualize)することの大切さというものを昨今よく聞きます。確かに目標や理想を具体的に想像していくことによって、達成する確率は上がります。だけどそれが想像通りに行かなかったときには、反動で失望も大きいです。カジノで一千万円勝つ自分を強く想像していても、結局家でエリートヤンキー三郎を読むことになることだってあります。じゃあ、最初から希望を持つのを止めてみるとよいのでしょうか。いや、それだとやっぱりちょっと寂しい。

 となるとうまく行かなかった状況の中で切り替えて、修正して、楽しむのがベストなのでしょう。熱願冷諦(ねつがんれいたい)ということばがあります。猛烈に具体的に願うのは大事だし、心を冷静に保って現実的に対応することも大事。この諦めという言葉。私、そんなに悪くないことだと思います。自分の思い通りに行かない状況で、我慢したり放り投げたりするという固いオプションの他に、諦めや受け入れという柔らかいオプションを足してあげると良いです。すると心の負荷も少なくてすむ。グッと歯に力の入りそうなときには、エリートヤンキー三郎でも読んでみてください。肩の力もすうっと抜けて、より広い感情のオプションを見えてくるかもしれません。

CAMILLE AYAKA (カミーユ 綾香)

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北九州市出身。在日韓国人と元残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。
難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動する一方、ネオ晴耕雨読の生活を実践している。「マイノリティの爆弾」を「マジョリティ社会」に投げつけるために2017年5月から本メディアBe inspired!で連載中。

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All photos via Camille Ayaka
Text by Camille Ayaka
ーBe inspired!

 

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