#002「犬肉」を食べる人々を非難することは正義なのか?“偽善者アレルギー”の私が観る、犬肉祭とは。| カミーユ綾香の「マイノリティ爆弾」


京都からこんにちは。カミーユ綾香です。夏めく鴨川の水面を見つめながら、終わりゆく6月をぼんやり振り返っています。私の6月。今年の6月もやはり、「犬肉」について考えていました。梅雨や結婚のイメージが強い6月ですが、毎年私が思い出すのは、犬肉を美味しそうに食べる中国人と、それに激高して反対する欧米人の姿なのです。

前回の連載記事はこちらから。

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「1万匹の犬が食べられる話」を聞いてどう思うか?

 毎年6月に中国の広西チワン族自治区では、犬肉祭が開催されます。正式には「ライチ犬肉祭」といいます。祭の参加者は、犬肉とライチを食べます。伝統的な祭ですが、この際に毎年一万匹の犬が食用に殺されます。

 と、言う話を聞いてどう反応しますか。犬が可哀想と眉を顰めますか。それとも自分も食べてみたいと興味を覚えますか。それぞれの心がどう反応をするかは、それぞれの絶対的自由です。生理的な反応であるし、誰もコントロール出来ない。気を付けなければいけないのは、その後のアクションです。犬肉祭に反応した心の、その後です。

 例えば私は今、鴨川沿いのカフェで、偶然にもホットドッグを食べながらこの記事を書いています。犬肉祭の画像を漁っているのですが、グロテスクなので、ホットドッグに手を付けられません。食欲が失せた理由は、犬肉加工の血みどろな画像に胃が萎えたからです。恐らく死ぬまで犬肉を食べることはないと思います。が、犬肉祭自体には、心から賛成であるのです。私の心は犬肉に対して否定的な反応ですが、これは私個人の問題です。犬肉祭の存続は、チワン族の全体の伝統に関わる問題です。私個人の心が否定的な反応をしたからといって、この犬肉祭自体の廃止を訴えるのは、超絶に厚かましい行為だと思うのです。

 そういう考えを抱きながら、犬肉祭について、周囲に質問をしてみました。すると殆どが否定的な反応です。「犬が可哀想だから犬肉祭は駄目だ」とか、「中国人は野蛮だ」とかそういう答えです。こういう回答を聞き続けているうちに、図らずも私の持病が悪化してしまいました。私の持病というのは、偽善者アレルギーです。偽善者に会うと、身体が痒くなるのです。どうやら私の身体は、犬が可哀想だから犬肉祭を廃止しろというアイデアを、偽善的だと受け取ったようです。

 犬が可哀想、可哀想と何度も聞くうちに、のどが痒くなり、心身ともに虫唾が走ってしまいました。犬肉を調理している中国人をみても、食欲減退程度ですが、犬肉祭反対と叫んでいる偽善者を見ると、気持ち悪くて寒気がします。

なぜ「犬肉祭に反対する声」を偽善的だと捉えるのか?

 では、犬肉祭に反対する声を、どうして偽善的だと捉えるのか。理由は先述したように、自分の心の問題を取り上げて他者に強制しようとしているからです。自分の心の正義を盾に、他者になにかを強制しようとすることは、非情に偽善的です。

 正義と言うのは、核爆弾のようなものです。物凄く慎重に取り扱う必要のあるモノです。正義の定義なんて、人や時代によって変わります。歴史を紐解いてみると、戦争、差別、虐殺など、正義の取り扱いミスで人類は甚大な犠牲を払ってきました。個人の心の反応を外に持ち出し、ましてやそれを他者に押し付けようとする場合は、我々は本当に慎重になるべきです。

 と、いうことを考えながら、生肉で頭を飾ってみました。

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Head Art by Hiroaki Miyazaki
Photo by Masanao Noda
Makeup by Yurika

 この写真を見て、あなたの心はどう反応しますか。美しいと感じますか。猟奇的だと感じますか。気持ち悪いと感じますか。心がどういう反応をしても、それはあなたの自由です。その反応があなたの自由なように、生肉で頭を飾る行為も私の自由です。自分の正義を押し付けて私を非難したとしても、どうせ私からは何一つ奪えません。そういう酔狂な人もいるものだな、くらいに捉えて寛大な心で受け流してもらえればなと思うのであります。

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CAMILLE AYAKA (カミーユ綾香)

北九州市出身。在日韓国人と元残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。警固インターナショナルの代表としてアジア各国を飛び回りつつ、十数言語による語学スクールとインバウンド支援の多言語ウェブサイト制作会社を運営する一方、難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動中。「マイノリティの爆弾」を「マジョリティ社会」に投げつけるために5月から本メディアBe inspired!で連載開始。

All Photo by Masanao Noda
Head Art by Hiroaki Miyazaki
Makeup by Yurika
Text by Camille Ayaka
ーBe inspired!

 

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