#007 私が「ダッチワイフ」を浮き輪にして、海や川を泳いでいるドキュメンタリー動画を撮りたかった理由 | カミーユ綾香の「マイノリティ爆弾」


 

海南島よりこんにちは、カミーユ綾香です。海南島は中国のハワイと呼ばれているリゾート地で、常夏の島です。空も海も花も美しく、夏用ワンピースで街を歩きながら、生まれて初めてココナッツのジュースを飲みました。すごくまずかったです。なんてお洒落でまずいのだろうと、感動しました。

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「ダッチワイフ」を浮き輪にしたらクールかも。

 宿泊先のホテルにはプールがありました。夜、照明に照らされたプールの周りを歩いていると、大型の浮輪が積まれていました。それを見たときに、ふと、かつての記憶がよみがえったのです。かつて私が大事にしていた、ダッチワイフの記憶です。

 7年ほど前のある日、ダッチワイフの存在を知りました。で、ネットで検索してみたのですが、空気を入れて膨らますその姿が、なんとなく浮輪っぽいなと思ったのです。それで、これを浮輪代わりにして泳いだら、クールじゃないかと思いました。当時は泳げなかったので、まずは市民プールでダッチと泳ぐ練習をし、慣れたら沖縄の海をサーファーっぽくダッチと泳ぎ、最終的には、中国の吉林省の川をダッチと泳いで北朝鮮に接近してみようと考えました。

 この素晴らしい企画を実行するにあたって、ドキュメンタリー風の動画を作りたいと考えました。絶対感動する。そう確信した私は、早速ネットでダッチワイフを注文し、到着したものを膨らませ(かなり大変でした)、水着を購入しました。それから市民プールに電話して、レーン貸し切りの価格を聞き、と、ここまで来たときに問題が起こりました。

 動画の撮影協力者が見つからなかったのです。友人達は「関わりたくない」とか「捕まりたくない」とか言います。どうして!こんなに面白いのに。そこで気付いたのですが、協力を仰いだ友人達は、女性でした。当時の私はいかに悪ふざけをするかに命を賭していたのですが、多くの女性は悪ふざけを馬鹿にする傾向にあります。そうだこれは男友達に聞くしかない。彼らなら分かってくれる。そう思い、数人の男友達を呼び出し、事情を説明しました。が、しかし!彼らの様子もおかしいのです。歯切れが悪いし、そわそわしている。女友達ほど残酷な拒絶は言いませんが、ちょっと難しいようなことを言います。と、そのとき、男友達のうちの一人(香港人)が、こう言いました。「カミーユが水着でダッチワイフを歩いているのは、エロい」と。

 このとき、私は絶望しました。絶望し、ダッチとふたりで孤独な夜を数日過ごしました。まず、彼らはダッチを性的なものとして捉えていたのです。そして私を、女性として認識していたのです。しかしそれは違うのです。ダッチは面白い浮輪だし、私はただ悪ふざけをしたい一個人なのです。だってそうじゃないですか。例えばこれが私ではなくて、大学の後輩男子だったとします。後輩がいきなり電話してきて、「先輩、おれダッチワイフで川を泳ぎたいんですけど撮影してくれませんか?」とか言ってきたら、「お前マジ最高だな、手伝うぜ」ってなるじゃないですか。それが、たまたま私の肉体が女性だったせいで、こんな先入観を持たれるのです。

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男と女の二択という退屈で古い考え方は、やめよう。

 性別を超越して相手を見るって、大事だと思います。ダッチワイフと泳ぐなんていう狂った発想は、肉体の性別を凌駕した精神から生まれているものです。そういう私の精神を、無理やり女性という肉体の枠に入れ込まないで欲しい。少なくとも私は友情のもとに意志表示しているのだから、受け入れて欲しい。

 ていうか、シンプルに退屈なのです。男か女の二択なんて。人と繋がるときは、性別なんているカテゴライズは一旦ぶち壊して、まっさらな気持ちでどんな面白いことが出来るのか考えればいいんです。私のダッチと泳ぐという夢は頓挫しましたが、どこかの気合の入った誰が、性別を言及されることなく吉林省の川を泳いでくれることを願うのでありました。

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CAMILLE AYAKA (カミーユ綾香)

北九州市出身。在日韓国人と元残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。警固インターナショナルの代表としてアジア各国を飛び回りつつ、十数言語による語学スクールとインバウンド支援の多言語ウェブサイト制作会社を運営する一方、難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動中。「マイノリティの爆弾」を「マジョリティ社会」に投げつけるために5月から本メディアBe inspired!で連載開始。

Facebook:https://m.facebook.com/camille.ayaka
Instagram:@camilleayaka

 
All photos and text by Camille Ayaka
ーBe inspired!

 

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