「俺は痙攣性麻痺の自閉症」。異彩のロックンローラー、イアン・デューリーに学ぶ、パンクな生き方kakihatamayuが紐解く、社会派ミュージック・ヒストリー #2 イアン・デューリー/Spasticus Autisticus


 

Photo by Misa Kusakabe
Photo by Misa Kusakabe

こんにちは、mayuです。今回私が紹介したいのはロック界において異彩な存在を確立したイアン・デューリー。ロックでありながらFUNKやレゲエ、DUB的な顔を覗かせる彼の楽曲はロック好き以外にも支持が熱いはず。楽曲の素晴らしさは勿論のこと、彼は生き方そのものが最高にクールだ。高校時代に初めてかれのSEX&DRUGS&ROCK&ROLLを聴いた時のシビれが今でも忘れられない。是非彼の楽曲を聴きながら読んで頂きたい!

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 イギリスの文化として知られているパブで70年代頃に発生し盛えた音楽のムーブメント、パブロックの代表的アーティストとしても知られるロックンローラー、イアン・デューリー。彼は子供のころに患った小児麻痺の後遺症で左半身が不自由。少年時代は一般校と施設を行き来する生活の中でいじめや差別に直面しながらも、絵を描くことが好きだった彼はアート・スクールに入学。のちに美術教師となる。その後ロックンロール好きが高じ、美術教師をしながら友人らとキルバーン・&ザ・ハイローズ名義でバンド活動をスタートさせた。本格的にバンド活動を開始しデビューまで漕ぎ着いた彼だったが、バンド内の揉め事などが絶えず、その後ソロとしてイアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズを結成し再デビューする。ソロとしての成功を果たした彼は俳優としての道も切り開く。一旦は幕を閉じたように見えた音楽活動ではあったが、忌野清志郎がソロアルバム1弾目にブロックヘッズを起用。イアンデューリーの来日、そして音楽活動の再開に繋がった。2000年3月、胃癌により死去。

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 今回は彼の音楽性と共にあれこれ考えてみたい。

 イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズはパブ・ロックシーンを引っ張ったバンドとしても知られている。そもそもパブ・ロックとはもともとパブ文化のあるイギリスで70年代頃に発生し盛えた音楽のムーブメント、及びジャンルだ。イギリス人の大衆酒場、パブでお酒と共に楽しむ音楽なだけにR&R、R&Bをベースにしたようなシンプルでノリの良い曲調のバンドが多い。

 パブ・ロック・クラシックとしては他にも、ニック・ロウ率いるBrinsley Schwarz、Rockpileや、Dr. Feelgood 、The Piratesなどがある。個人的にはパブ・ロックの中でもイアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズはバンドとしての在り方、音楽性共に群を抜いてかっこいいと思っている。その理由として、まずイアン・デューリーという人間が最早パンクであること。そして彼の音楽がロックでありながらゴリゴリのFUNKであること。音楽性に関してはソロ名義の活動開始後、バンドに加入し彼と曲作りを共にしたチャズ・ジャンケルの存在が大きい。チャズ・ジャンケルはディスコを聴く人には説明不要かもしれないが、あの名曲“愛のコリーダ”を生んだ人物だ。チャズはディスコサウンドを手がける以前の初期はイアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズのキーボードや曲作りを手がけバンドの重要な役割を担っていた。

 そして今回紹介したいのが1981年発表のこの一曲。

“Spasticus Autisticus”

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以下歌詞抜粋

Hello to you out there in Normal Land
You may not comprehend my tale or understand
As I crawl past your window give me lucky looks
You can read my body but you’ll never read my books

“健常者”のみなさんこんにちは
あなたたちに俺のハナシは伝わらないんだろうが
俺が窓辺を通りかかったら俺にイイ顔向けてくる
俺の身体の事情がわかっても俺の本を読むことはないんだろうな

I’m spasticus, I’m spasticus
I’m spasticus autisticus
I’m spasticus, I’m spasticus
I’m spasticus autisticus
I’m spasticus, I’m spasticus
I’m spasticus autisticus

俺は痙攣性麻痺
俺は痙攣性麻痺
俺は痙攣性麻痺
俺は痙攣性麻痺
俺は痙攣性麻痺の自閉症

 
 見ての通り、パンチ効きまくりの内容だ。spastic(痙攣性麻痺)とautistic(自閉症)を意味する造語らしいが意味を知るとなんとも衝撃的。彼の楽曲の歌詞ではよく韻を踏んだ表現が多いのも特徴的だ。”Normal Land(普通の島)”という表現も、健常者の人に対する棘を感じなんとも皮肉的である。最高にパンクでキバッた曲だがお決まりの内容的な問題で当時は放送禁止となっていた。

 イアン・デューリーは時に自虐的なユーモアで観客を沸かせることもあった。彼はありのままの自分をステージに持ち込み、ありのままの自分を魅せることで勝負していたのだ。つまり彼の行動は現状を受け入れると同時にどうせ変わらない運命であればやりたい放題やっちまおうというニヒリズムの共存したパンク精神であると私はとらえたい。彼のパフォーマンスからは、同情を誘うというような概念は皆無、ハイセンスかつユーモラスな彼のステージ、音楽からは最早障害を抱えていることなど微塵にも感じさせない。それだけにとどまらずイアン・デューリーはのちに俳優としての成功も収めた。その後俳優業を重ねバンド活動を休止していた矢先の1986年、忌野清志郎がアルバム制作にあたりブロックヘッズを起用したことからイアン・デューリーの来日へと繋がった。残念ながら2000年に彼はこの世を去ったが、2012年にロンドンで開催されたパラリンピックでは当時は放送禁止だったはずのこの楽曲がパフォーマンスされた。

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 前文にも書いた通り当時放送禁止となっていたこの曲が、現代、それも2012年のパラリンピックで起用された。一体なぜだろうか、その理由はイアン・デューリーの生き様を振り返ればすぐに理解できた。彼のパフォーマンスを通した自己表現、音楽から俳優まで自分の可能性を自ら広げていく貪欲な生き方はエネルギーに満ち溢れ、今を生きる私たちに活力を与えてくれる。彼の生き方からは、自分の可能性は自分次第であること、物事は捉え方次第であることを学んだような気がする

 最後に今回取り上げた曲以外にもオススメの曲をいくつか紹介すると、Reasons To Be Cheerful ,Pt3 、Bed O’ Roses No.9、Wake Uo & Make Love With Meがわたしの定番ヘビロテソング。

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KAKIHATA MAYU

1995年生まれおとめ座のAB型、女子大生。
中学生の頃にアナログレコードに出逢い、高校2年の終わりにディスクユニオンに入社。昨年9月までは60s-70sロックのレコードをメインに扱うディスクユニオン新宿ロックレコードストアに勤務。それ以降、クラブミュージックを専門に扱う下北ユニオンのクラブミュージックショップへ移動。
今年4月まではマガジンハウスでデザイナーアシスタントとして活動。
インディペンデントマガジン、HIGH(er)magazineでは音楽コラムを担当。暇さえあればレコード屋を巡る。最近集めているのは70sSOUL/FUNK/RARE GROOVE/和モノが中心。

Instagram:@kakihatamayu

HIGH(er) Magazine

ディスクユニオン下北沢クラブミュージックショップ

 

Illustration and Text by Kakihatamayu
ーBe inspired!

 

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