現役小学生が歌って踊って訴える“セクハラ”被害

Text: Minori Okigaki

2016.9.21

Share
Tweet

かわいい子供を見ると、思わず甘やかしたり、かわいがりたくなる。自分の子供ならその気持ちはさらに高まるかもしれない。でも、あなたに抱っこをされているときの子供の気持ち、考えたことはあるだろうか。スウェーデンの現役小学生たちがその気持ちを歌にし、「セクハラ被害」を訴えている。

子供へのスキンシップが与える影響

幼少期の親子でのスキンシップは子供の健やかな成長にとても重要だと言われる。親子の絆を深めたり、将来周りの人と適切な人間関係を築けるようにするために、子供とのふれあいは欠かせない。弊誌でも以前、父親が娘にするヘアアレンジについての記事で、そのスキンシップが生む父娘の愛情について取り上げた。しかしこのスキンシップ、特に思春期の子供たちにとっては、いつでもポジティブな効果を生むというわけではないようだ。

いいことばかりでもない「スキンシップ」

今、世界的に「正しい身体との関わり方」が議論されつつある。子供の支援専門の国際NGO団体であるセーブ・ザ・チルドレンのスウェーデン支部(Rädda Barnen)では、ホームページ上で「スキンシップ」を大人と子供で考えるためのハンドブックを公開している。それには次のようなメッセージが書かれている。

・子供ににハグやキスをさせたり、親戚や友人の膝に乗るように促すのをやめましょう。そのかわり、子供に本当にそれをしたいか尋ねるようにしましょう。
・「もしだれかが体に何かしてほしいと頼んできて、それをあなたはしたくない時、あなたは断ることができるし、大人にも相談できる」と、子供に説明してあげましょう。
・「好きな人だったとしても、されて嫌なことにはいやだと言っていいんだ」と教えましょう。

小学生が作った“ある動画”

※動画が見られない方はこちら

昨年の春、スウェーデン北部の町ウメオにある小学校で、当時小学3年生だった子供たちがあるミュージックビデオを作った。タイトルは「さわらないで!(stopp min kropp)」。スウェーデンのポップミュージックの替え歌で、歌って踊りながら訴えているのは、「子供たち自身の身体の自由」だ。歌詞の一部はこうだ。

「子供でも触ってほしくない時がある。そんな時ははっきり言わなくちゃ!だって自分の身体だもん!」
「いやだって言ったら、その気持ちをちゃんと尊重して!」

ビデオの中には「キスはいらないよ、よろしく!」と頬に書いた女の子や、手に「やめて!」と書いた子どもたちの姿が映る。

「子供だからって甘く見ないで、自分たちの身体にももっと敬意を払ってほしい」。そんな子供たちの「リアルな主張」が形になったこのビデオ、スウェーデン国内で話題となり、facebook上では10万以上再生されている。

見直される「子供との関わり方」

いくら「触れ合いが大切」と言えども、触れてほしくない時やそっとしてほしい時があるし、触られたくない体の一部分もある。それは大人に限ったことではない。子供だって「セクハラの被害者」になりうるのだ。立場上はっきりと言えずにつらい思いをしている子供もいるだろう。そんな「子供の声なき声」に、大人が耳を傾けなければならない。子供を狙った性犯罪の発生件数は、日本でも世界でも上昇傾向にあるようだ。その中で、子供とどのように触れ合っていくべきかを考えるのは、とても重要だ。スウェーデンの子供たちが起こしたこの勇気ある行動を理解し、今度は大人が「大切な子供を守るため」に、立ち上がるべきではないだろうか。

via. Dagens Nyheter, Rädda Barnen, 警察白書, データえっせい

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

Share
Tweet
★ここを分記する

series

Creative Village