人類が「陸のライフスタイル」をやめる時代



都会から田舎へ、田舎から限界集落へ、低地から中山間地域へ、そして国内から海外へ。
 
時代とともに、人々のライフスタイルは進化する。
 
ICTなどの情報革命や交通網のさらなる発達は、これまで以上に我々の生活圏を広げていくことだろう。
 
だが、次なる暮らしのスポットを「陸から沖合へ」という選択肢を持っている人は、まだまだ少数派ではないだろうか。
 

実はいま、世界の密かなトレンドとなりつつある、“水面の暮らし”。
 

人類は、ついに住み慣れた土地を手放し、沖へと生活の基盤を移すのか。
 
そんな近い将来に起こりうるムーブメントを、四半世紀も前から先取りし、自分たちのほしい未来を手に入れた人たちがいる。


 

 
浮遊する島!?現る

試行錯誤を繰り返しながらも、今なお進化を遂げる、湖に浮かぶ人工アイランド。
 
彼らはそれを「Freedom Cove(自由の隠れ場所)」と呼ぶ。
 
“浮遊する住居島”として、にわかに注目を集めている。
 
今から遡ること25年前の1991年の夏。
 
二人のカナダ人夫婦によって、この取り組みはスタートした。
 
キャサリン・キングとウェイン・アダムスが自分たちの新しい生活の拠点として選んだ先は、カナダ・バンクーバー島の太平洋側に位置するクラークワットサウンドの人里離れた湖畔。
 
「アーティストとして活動していきつつも、ほしい暮らしを手に入れるには、必要最低限のものを自分たちの手でつくることが最善の方法だった」と当時のようすをウェインは語る。
 
生粋のアーティストとして、常識にとらわれない自由な居住空間で表現活動を続ける二人。
 
今につながる暮らしへのエンジンは、クリエイティブへの変わらぬ“情熱”と、「なければ、つくる」というアーティストならではのシンプルな“哲学”だった。

 
 
オフグリッドとオフショア

(Photo by Michael Stolz)

(Photo by Michael Stolz)

ターコイズブルーとマゼンタ色に彩られたその空間には、二人のクラフトマンシップと自然の恵みを最大限に活かすための、こだわりと工夫が凝縮されている。
 
敷地内には、二階建ての母屋をはじめ、野菜や果物を育てるビニールハウスが4棟とフラワーガーデンが数面、アートギャラリーやダンスフロアー、灯台からカヌーの船着き場までが規則的に配置されている。
 
電力会社の送電網に頼らないオフグリッド(ソーラーパネル設置による電力自給など)はもちろん、飲料水などは近くを流れる滝や雨水を利用している。
 
水面が穏やかな日にはカヌーで、天候の悪い日には床に設けられた小窓から釣りを楽しむのはウェイン。
 
野菜や果物の収穫は、キャサリンの日課。
 
湖で獲れる活きた魚や採れたて野菜が食卓を飾る、ほぼ自給自足の生活。
 
錨は降ろしていないため、常に浮遊するオフショア(沖合)物件。
 
陸地との接点はといえば、数本のロープのみ。
 
一番近くの町には、カヌーを漕いで45分ほど。
 
「交通渋滞などを気にしなくてよい水上は、最高のハイウェイ(高速道路)だよ」とウェインは興奮気味に話す。
 
「今では、ここ以外の暮らしは考えられない」と笑顔で話すのは、キャサリン。

 
 
常識に縛られない暮らしの選択肢を

(Photo by Jim & Claire)

(Photo by Jim & Claire)

日本でも、都市部における人口増加や不動産価格の高騰は、依然として続く。
 
地方に目を転じれば、空き家問題はなかなか解消されない。
 
所有によって細分化された土地は、相続者が見つからず、放棄されたまま…。
 
「住」の問題は、地方も都市も根深い。
 
そうこうしているあいだにも、一部の生活者のあいだでは、自給自足やDIY、パーマカルチャーといった、持続可能な暮らしへのシフトチェンジが活発になってきた。
 
「住まいの選択先が陸から沖へと移行していく条件は十分に整った」と、住宅業界の専門家は話す。
 

オフショア物件の特徴は、暮らしの変化に応じて素早くかつ容易にその姿かたちを変えられる、柔軟性と適応力にある。
 
なによりも、25年におよぶ彼らの取り組みは、サステイナブルそのもの。
 
なにも、住み慣れた土地を捨てて、沖合へと生活の拠点を移すことを勧めているわけではない。
 
価値観やライフスタイルは人それぞれ。
 
それでも、限られた資源や土地を手に入れることに労力を費やすよりも、自分たちの身の丈にあったサイズの暮らしをつくることに意識の矛先を向けてみる。
 
常識にとらわれず、視野を広げてみれば、選択肢の幅も広がっていくはずだ。

 
 

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ーBe inspired!

Texted by Kenji Takeuchi

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